- 2025-10-09
- 積算資料
1.はじめに
北海道新幹線(新青森・札幌間)は、東北新幹線終点の新青森駅を起点として、青函トンネルを通過し、札幌市に至る延長約360kmの路線である。
このうち、新青森・新函館北斗間(延長約149km)は、平成28年3月に開業した。
本稿では、現在、工事が進行中の新函館北斗・札幌間の概要および進捗状況について報告する。
2.新函館北斗・札幌間の概要
新函館北斗・札幌間は、平成24年6月に工事実施計画(その1)の認可を受け土木工事に着手し、令和5年3月に工事実施計画(その2)の認可を受け設備工事にも着手している。
図表- 1に示すとおり、新函館北斗駅を起点として、途中に新八雲(仮称)駅、長万部駅、倶知安駅および新小樽(仮称)駅を経由し、札幌駅に至る延長約211.9kmの路線である。
また、函館新幹線総合車両所の一部増強と札幌車両基地の建設を行っている。
本区間の概要は図表- 2に示すとおり。
構造物種別ごとの延長は、路盤が約7.4km(3%)、橋りょうが約5.3km(3%)、高架橋が約30.3km(14%)、トンネルが約168.9km(80%)となっており、トンネル区間の割合が非常に大きくなっている。
3.新函館北斗・札幌間の工事概要
新函館北斗・札幌間の主なトンネルおよび橋りょうについては、図表- 3に示すとおり。
本区間はトンネルが80%を占めており、これまでの整備新幹線に比べ長大トンネルが多く、作業ヤードの設置箇所が限られることから、トンネル1工区当たりの平均延長は約4.2kmとなっている。
なお、延長5.0km以上の工区も多く、最長は、シールドトンネル工区の約8.4kmとなっている。
このように工区延長を長くして、作業坑の数を減らすことで建設コストの軽減を図っている。
平成26年8月に村山トンネル(計画変更により、現在、渡島トンネルと一体化)の掘削を開始して以来、順次、トンネル工事を進めている。
令和5年4月に幌内トンネルの掘削を開始し、これにより全17トンネルが工事着手済みとなった。
令和7年5月1日現在のトンネルの本坑掘削延長は、全168.9kmのうち約142.9km(85%)に達しており、また、全40工区のうち22工区で掘削を完了している。
トンネルは地質や地理的条件等を考慮して、NATM、シールド工法、SENS、開削工法によるいずれかの工法で掘削工事を進めると同時に、インバートコンクリート、覆工コンクリートおよび路盤鉄筋コンクリートの打設工事を進めている(写真- 1、2)。
なお、新函館北斗・札幌間では、トンネル掘削により発生する土(以下、発生土)は全体で約2,000万m³になる。
このうち約3分の1は、自然由来の重金属等を含む発生土が見込まれている。
土壌汚染対策法に規定されている基準を超える土に対し、学識経験者を交えた「北海道新幹線、新函館北斗・札幌間、自然由来重金属等掘削土対策検討委員会」を設置して発生土受入地における適正な対応方法を検討し、関係機関と調整のうえ地元説明会等を実施して、発生土受入地へ搬入している。
明かり工事については、令和7年5月1日現在で、全20工区を契約しており、そのうち札幌車両基地高架橋工区は、JR線に隣接する非常に狭隘なエリアであることから、整備新幹線で初めてECI方式※(技術協力・施工タイプ)を採用している。
また、令和4年7月に市渡高架橋工区が本体工事に着手して以降、その他の明かり工事についても順次施工を開始している(写真- 3)。
設備工事については、工事実施計画(その2)の認可を受け、現在は軌道工事の一部に着手している。
令和6年10月には函館港に25mレールが陸揚げされた。
また、令和7年4月には、福岡県北九州市の黒崎駅から貨物列車による150mレールの2,100km輸送も開始された(写真- 4)。
なお、建築、電気、機械の工事についても、着手に向け工事計画を進めている。
4.おわりに
北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の建設工事は、認可後10年以上が経ち、地元の皆様方のご理解をいただきながら安全第一に工事を進めている。
札幌延伸事業に向けた機運醸成のため、ソフト・ハードの両面から情報発信にも努めており、令和元年8月に開設したYouTubeチャンネルでは北海道新幹線(新青森・札幌間)の工事の進捗状況における紹介をはじめ、令和5年1月には北海道新幹線専門のSNSアカウントを開設した。
また、道南地区における拠点として同年4月には新函館北斗駅から徒歩5分の場所に「つながれーる道南広報展示スペース」を開設し、多くの方々に訪れていただいている。
令和7年4月8日には、野田追トンネルの見学会を開催し、地元である八雲町の方々とトンネルが貫通する瞬間の喜びを分かち合った。
これで新函館北斗・札幌間にある全17本のトンネルのうち、10本目が貫通したことになる(写真- 5)。
万歳三唱の中、北海道新幹線は東北・北海道の地域経済の活性化等に大きく寄与するものとして、皆様の期待は非常に大きなものであると感じている。
鉄道・運輸機構では、引き続き、安全、品質、工期および工費に留意して札幌までの建設工事を推進してまいります。
地元の皆様および関係各位のご支援、ご協力に感謝しますとともに、今後とも、引き続き一層の御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
※ ECI(Early Contractor Involvement)方式
難易度の高い工事に対して、設計段階から施工者(建設会社)の高度な技術力を取り入れることで、効率的な設計・施工計画を実現する契約方式。
【出典】
積算資料2025年7月号

最終更新日:2025-10-08
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