建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 道路情報板支柱の冠雪による危険な落雪防止対策の検討

 

はじめに

道路情報板や道路標識は,お客様へ交通情報や気象情報,路面情報を提供する重要な交通施設である。道路情報板や道路標識は,視認性を確保するために走行車線の上部や道路を横断して設置されている。このような状況の中で積雪寒冷地では,冬期間,降雪が伴うと,情報板や道路標識,支柱の上部へ雪が堆雪する。ある程度以上の降雪があると,情報板や支柱の上部に積もった雪が雪庇となって垂れ下がり(冠雪,図−1),これらが落雪すると,事故や交通の妨げの原因となるため,除去しなければならない。冠雪が大きくなると,除去作業は,高所作業車による作業となり,車線規制を必要とするため,多大な労力と時間を要している(図−2)。このため道路情報板や道路標識,支柱の冠雪による危険な着雪・落雪防止対策は必要不可欠な状況である。
 
これまで道路情報板や道路標識の着雪・落雪防止対策は,屋根型や傾斜板を設置したもの,カバー型でもコラム型やシート型等が考案されてきた1),2)。これらは,設備の新設時であれば十分な対策を検討することができる。しかし,既設の支柱に対策を実施する場合,支柱の耐力や基礎の地耐力を考慮すると,風荷重のかからないもの,自重の軽いものでなければ,対策品を設置することが困難となる場合がある。近年,温暖化の影響なのか,新設時に道路情報板や道路標識,支柱への着雪・落雪の問題が無かった箇所がクローズアップされるようになってきた。
 
一方,竹内3)によると,冠雪は,格子フェンス4)により冠雪の成長や落下を抑制することが可能であり,橋梁の冠雪防止実験では,種々の対策の中で格子フェンスだけが冠雪の落下を防止することができ,格子フェンス設置以降,落雪事故は皆無となったことが報告されている。格子フェンスは風荷重がかかる面積が小さく,重量も軽い。著者らはこれまで,竹内3)が開発した格子フェンスを応用し,道路情報板支柱の冠雪による危険な落雪を防止する形状の開発を行ってきた5),6)。
 
本研究では,道路情報板支柱の冠雪による危険な落雪を防止するため,これまで検討した格子形状(格子高さ,格子頂角,格子間隔など)の格子フェンスを深川JCT(ジャンクション)上り線の道路情報板の支柱に試験設置し,無対策箇所との比較から格子フェンスの道路情報板支柱の冠雪による危険な落雪を防止する効果を検証する。
 

図−1 道路情報板に発生した冠雪

図−2 道路標識に発生した冠雪の除去作業



 

1. これまでの道路情報板支柱の冠雪による危険な落雪防止対策

これまで,市販製品(超撥水シート,融雪ナノマット,雪割り)3タイプを試験設置し,道路情報板支柱の冠雪による危険な落雪防止対策を検討してきた(表−1)。超撥水シートは,支柱上部に雪が堆雪し効果が無かったが,これは試験設置した箇所が-20℃程度の低温になること,支柱の径が19cmあることが影響していると考えられる。融雪ナノマットは,着雪を防止することができたものの,危険な氷柱が発生し効果が得られなかった。雪割りは,白色と茶色の2種類で試験した。雪割りの上部に堆雪した雪は,白色より茶色の方が落下しやすい。しかし,どちらも着雪した雪は大きな塊となって落下してしまい,危険防止の効果が得られなかった。既存の市販製品では,道路情報板支柱への危険な落雪を防止するには不十分であることが分かった。
 

表−1 これまでの道路情報板支柱の冠雪による落雪防止対策




 

2. 格子フェンスの冠雪抑制効果

降雪があると支柱の上部に雪が着雪する(図−3(a))。降雪が続くと支柱上部の着雪は大きくなり冠雪が発生すると巻き垂れとなり(図−3(b)),大きな塊となって落雪する。
 
一方,格子フェンスを設置した状態では,冠雪を抑制し,格子外での小さな落雪を容認し,格子内に溜まった雪は日射により消雪させることができる(図−3(c))。格子内外の雪は一時的には繋がり,格子内の雪は圧密が進行する。しかし,格子外の雪は,格子により内外に分けられ,格子外の雪の深さでの圧密となるため圧密の進行は小さい。このような雪の落雪は大きな塊となって落雪しない限り交通の障害になることは小さい。
 
著者ら5),6)は,格子フェンスの格子間隔には最適な大きさがあると考え,格子間隔を変化させ着雪・落雪対策の効果検証を行ってきた。これまでの研究で得られた最適な格子間隔は,□100×100mmである。
 

図−3 格子フェンスの冠雪による危険な落雪防止効果




 

3. 実験方法

3.1 検証期間

格子フェンスを道路情報板支柱に設置し,危険な落雪を防止する効果に関する検証は,2018年11月16日から2019年3月31日の期間に行った。

3.2 検証箇所

検証箇所は,深川JCT上り線の道路情報板の支柱で行った。

3.3 落雪対策

格子フェンスの形状は,格子高さが支柱センターから350mm,格子の頂角が60°,格子間隔が□100mm×100mm,長さが4.0mである。格子フェンスの形状を図−4に,道路情報板支柱への設置状況を図−5に示す。
 

図−4 格子フェンスの形状

図−5 格子フェンスの道路情報板支柱への設置状況


3.4 検証機器

検証に用いた機器は,タイムラプスカメラである。メーカーはBrinno,型式はMAC200DNダレカ,カメラの解像度は92万画素,解像度は1280×720の720Pである。
 
 
 

4. 実験結果

検証期間中,図−6に示すような無対策箇所から大きな雪の塊が落雪した事例が7回発生した。一方,格子フェンス設置箇所からは,大きな雪の塊となって落雪した事例は無かった。無対策箇所から危険な落雪があったときの気象条件を整理した。累計降雪量は,深川JCTに設置してある積雪深計の値を使用した。また,気温は,オキリカップ川の気象観測局のデータを用いた。累計降雪量に着目すると,支柱の上部に200mm程度の累計降雪があると落雪した。気温に着目すると,降雪量が200mm程度で,気温が高くなったときに落雪した。格子フェンスは,このような状況においても危険な落雪を防止することができた。格子フェンスは,想定していたように300mm程度までの累計降雪量に対し,危険な落雪を防止する効果があることを確認した。
 
一方,降り始めから落雪までの期間の累計降雪量が890mmと,想定していた300mm を超えた事例が一度だけあり,その事例に着目すると,支柱上部の降雪が多くなり過ぎたため(図−7),支柱上部の着雪は,無対策箇所からの落雪後すぐに除去作業を行った。その結果,格子フェンス上部からの落雪はなかったものの,格子フェンス上部の積雪量は多かったため,今後,格子フェンスが許容する気象条件を検討する必要がある。
 
以上より,格子フェンスの設置により,道路情報板支柱の冠雪による危険な落雪を防止でき,除去作業の頻度を減少させることが可能と考えられる。
 

図−6 無対策箇所からの落雪

図−7 支柱上部の多量降雪



 

おわりに

本研究では,道路情報板の支柱の上に着雪した雪が大きな塊となって落雪しないように,格子フェンスを設置した。支柱上部の格子フェンス内に雪を堆雪するスペースを確保し,支柱上部に着雪した雪の付着力を格子フェンスがある程度の大きさで分離させ,落雪の塊を小さくすることができた。考案した格子フェンスは,道路情報板支柱の冠雪による大きな雪の塊の落雪を防止することが可能である。
 
今回対策を行ったのは,道路情報板の支柱のみであるが,道路標識の支柱についても同様の形状のため,冠雪による危険な落雪を防止する効果が得られると考えられる。一方,道路情報板の上部や梁については検討がなされていない。
 
今後は道路情報板の上部,梁,支柱を含めた道路情報板全体について,大きな雪の塊の落雪を防止する対策を考案する必要がある。また,格子フェンスが許容する気象条件を検討し,冠雪による危険な落雪を防止するメカニズムを明らかにする必要がある。
 
 
【参考・引用文献】
1) 雪氷チーム,2008:道路案内標識の着雪・落雪対策について,寒地土木研究所月報,658,45-48.
 
2) 雪氷チーム,2012:道路案内標識の雪氷雪対策に関する研究,国立研究開発法人土木研究所 平成24年度 土木研究所成果報告書,No.21,1-11.
 
3) 竹内政夫,2008:三角格子フェンスによる冠雪から成長する雪庇発生抑止と落雪防止,北海道の雪氷,27,29-32.
 
4) 竹内政夫,岳本秀人,植野英睦,淺野豊,2005:橋梁の落雪防止のための格子フェンス,日本雪工学会全国大論文報告集,22,19-20.
 
5) 竹内政夫,佐々木勝男,大廣智則,2017:道路施設からの落雪危険防止について,北海道の雪氷,36,81-84.
 
6) 細川和彦,佐々木勝男,竹内政夫,大廣智則,2018:道路施設からの落雪危険防止について,北海道の雪氷,37,123-124.

 
 
 

株式会社ネクスコ・エンジニアリング北海道 企画統括部 技術開発室 主任研究員  大廣 智則

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年8月号


 

 

 

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