- 2023-01-05
- 積算資料
1. はじめに
公共建築工事標準仕様書(以下「標準仕様書」という。),公共建築改修工事標準仕様書(以下「改修標準仕様書」という。),公共建築木造工事標準仕様書(以下「木造標準仕様書」という。)及び公共建築設備工事標準図(以下「設備標準図」という。)については,各府省庁が官庁営繕事業を実施するための「統一基準」として位置づけられており,標準仕様書,改修標準仕様書及び設備標準図の改定周期は3年とされています。
今般,標準仕様書,改修標準仕様書,木造標準仕様書及び設備標準図(以下「標準仕様書等」という。)は,統一基準として改定されました。
官庁営繕部では,統一基準の改定を踏まえ,令和4年3月に標準仕様書等を官庁営繕部の技術基準として制定しました。
令和4年版として制定した技術基準は,次のとおりです。
・公共建築工事標準仕様書(建築工事編,電気設備工事編,機械設備工事編)
・公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編,電気設備工事編,機械設備工事編)
・公共建築木造工事標準仕様書
・公共建築設備工事標準図(電気設備工事編,機械設備工事編)
また,統一基準ではありませんが,建築物解体工事共通仕様書(以下「解体工事共通仕様書」という。)も併せて制定し,いずれも国土交通省大臣官房官庁営繕部のホームページで公表しました。
これら技術基準の制定概要等について,次に記載します。
2. 標準仕様書等について
2-1.目的
標準仕様書等は,公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書により発注される公共建築工事において使用する建築材料,設備機材及び工法(以下「材料・機材・工法」という。)について標準的な仕様を取りまとめたものであり,当該工事の設計図書に適用する旨を記載することで請負契約における契約図書となります。
標準仕様書等を適用することで,建築物の品質及び性能の確保,設計図書作成の効率化並びに施工の合理化が図られます。
2-2.適用範囲等
標準仕様書等は,主に一般的な事務庁舎を対象とした公共建築工事への適用を想定して作成しています。
また,全国で実施される公共建築工事において建築物に必要な品質及び性能を確保するため,標準仕様書等に規定する材料・機材・工法については,主に次の内容を考慮しています。
・規格が統一化又は標準化されていること。
・信頼性及び耐久性を有し,安全性及び環境保全性が確保されていること。
・地域的に偏在したものではなく,全国的な市場性があること。
・特許等に関連するもの又は特定の企業等に限定されるものではないこと。
・適切な実績があること。
なお,使用にあたっては,発注者及び設計者は,対象とする建築物の用途や規模に応じて,適切な材料・機材・工法を選定し,設計図書に特記する必要があります。
また,標準仕様書等に掲載している材料・機材・工法以外のものを採用する場合には,設計図書等にその仕様などを特記する必要があります。
3. 標準仕様書等の制定方針
(1) 国としての施策への配慮
・生産性向上への配慮
施工合理化技術など,生産性向上に有効な工法等の対応に配慮
・地球環境への配慮
環境負荷低減及びエネルギー使用量の削減に資する材料・機材・工法について積極的に規定し,地球環境に配慮
・安全・安心の確保
構造体・建築非構造部材・建築設備の材料・機材・工法について施工中及び運用時の安全性の確保及び健康への影響配慮等,安全・安心の確保
(2) 関係法令,各種基準及び規格類との整合
・法令改正等に対応 関係法令や告示等の改正に対応
・JIS規格等の改正等に対応 JIS規格,JASS等の制定及び改正による見直し
(3) 標準的な材料・機材・工法による施工品質の確保
・全国的な市場性や施工実態等を把握し,規定する材料・機材・工法に反映
関係省庁,関係団体等から幅広く情報・意見を頂き,施工実態の反映に努め,標準仕様書等に規定する材料・機材・工法に適宜反映して施工品質を確保
4. 標準仕様書等の制定概要
標準仕様書等は,平成31年版から主に次のような変更等を行いました。
また,改修標準仕様書及び木造標準仕様書は,標準仕様書の各工事の記載と整合を図りました。
4-1.国としての施策への対応
【共通】
・工事関係図書等の更なる電子化の推進及び紙と電子データの二重提出の廃止徹底のため,完成図や保全に関する資料といった完成時の提出図書について,紙媒体での提出に係る規定を削除した。
【建築・建築改修】
・鉄筋工事について,生産性向上に資するため,機械式継手,定着に関する工法や試験等を追加した。
・鋼製建具の表面板の鋼板の組立てについて,生産性向上に資するため,溶接に加え,接着による工法を追加した。
・防水改修について,生産性向上に資するため,既存部の劣化の状況により防水改修における立上り部の防水層を非撤去とする工法の選択が可能となるよう改めた。
【電気設備・電気設備標準図】
・ケーブルについて,銅に比べ軽量であり,現場施工の省力化が可能なアルミ導体を用いたEM-アルミCEケーブルを追加した。
・ケーブル相互の接続について,ボックスを使用せずに接続できるケーブル接続材を追加した。
【機械設備・機械設備改修】
・消火配管に用いる鋼管の接合について,あらかじめ工場加工にてシール剤が塗布された継手を用いる場合は,ねじ接合剤の塗布を省略可能とすることを追加した。
・ステンレス鋼管について,SAS371(建築設備用ステンレス配管プレハブ加工管部材)の規定による工場加工管を追加した。
【建築・建築改修】
・樹脂製建具について,JISA4702(ドアセット)及びJISA4706(サッシ)の改定を踏まえ,高断熱仕様を選択できるようJISに基づく断熱性の上位等級を追加した。
また,日射熱取得性能の特記を求めることを追加した。
【電気設備・電気設備標準図】
・電力,通信に用いる電線及びケーブルについて,環境への影響を踏まえ,EM電線及びケーブルを主体とし,ビニル電線及びケーブルを削除した。
・標準的に使用するLED照明器具について,更なる高効率化を図った。
【機械設備】
・コンパクト形空気調和機等について,トップランナーモーターの適用拡大による高効率化を図った。
・エレベーターについて,運転時に発生する回生電力を備蓄して,エレベーターの電源として利用するシステムを追加した。
【建築・建築改修】
・ALCパネル及び押出成形セメント板の取付けについて,非構造部材の耐震性能の特記事項を求めることを追加した。
・新たに設置される重量シャッターの安全装置として,急降下停止装置が装備されるよう,JISA4705(重量シャッター構成部材)改正を踏まえ,規定を改めた。
【電気設備・電気設備標準図】
・屋外灯について,停電時の避難活動を支援する屋外用LED非常灯(電池内蔵形)を追加した。
・ケーブルについて,水トリー耐性に優れたEM-高圧架橋ポリエチレンケーブル(3層押出型)を追加した。
・燃料油の漏油検知について,燃料油配管から配管用ピット等に漏れた燃料油を検知する漏油検知装置を追加した。
・サイバーセキュリティ対策に用いる統合脅威管理(UTM)について,システムを守る機能として標準的に搭載されるアンチウィルス等の基本機能を追加した。
【機械設備標準図】
・液化石油ガス容器の転倒防止について,液石法施行規則及び同規則の機能性基準の運用の改正に伴い,浸水のおそれがある場合に液化石油ガス容器の流出防止措置を講ずる旨を追加した。
4-2.関係法令,各種基準及び規格類との整合
【建築】
・屋根ふき材に対する強風対策に係る告示の改正を踏まえ,瓦の緊結方法などを特記する規定に改めた。
・「高齢者,障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(国土交通省住宅局建築指導課)」の令和3年3月改正を踏まえ,自動ドアの開閉装置に係る「多機能トイレ」の表記について,「車椅子使用者用便房」に改めた。
【建築改修・解体】
・大気汚染防止法及び石綿障害予防規則の改正を踏まえ,改修工事等における石綿含有建材の有無の事前調査を,新たに1章各章共通事項に追加した。
また,石綿含有仕上塗材の除去工法を追加した。
【木造】
・公共建築物等木材利用促進法の改正等により,木造化促進対象の範囲が耐火建築物等にも拡大されたことを踏まえ,構造接合部の処理のみの規定から,耐火構造,準耐火構造,防火構造,防火区画等の各部位における防耐火処理等についての規定に改めた。
【機械設備標準図】
・「高齢者,障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」の改正を踏まえ,洗面器及び鏡の取付け高さの規定を改めた。
【建築・建築改修】
・左官工事に用いる既調合モルタルについて,JASS15の改定を踏まえ,建築用下地調整塗材としてJISA6916(建築用下地調整塗材)を標準とするよう規定を改めた。
・既調合しっくい材料のJISA6919(内装上塗用既調合しっくい)が新たに制定されたことを踏まえ,せっこうボード下地等への既調合しっくい塗り工法を追加した。
【電気設備】
・受変電設備の高圧スイッチギヤについて,国際規格に対応したJISC62271-200(定格電圧1kVを超え52kV以下の金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ)が新たに制定されたことを踏まえ,規格に対応した仕様を追加した。
・太陽光発電装置に用いる直流用のサージ防護デバイス(SPD)について,JISC5381-31(低圧サージ防護デバイス-第31部:太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの要求性能及び試験方法)が新たに制定されたことを踏まえ,規格に対応した仕様を追加した。
【機械設備】
・JISB9908-1(換気用エアフィルタユニット・換気用電気集じん器の性能試験方法-第1部:粒子状物質捕集率に基づく仕様,要件及び分類)の改正を踏まえ,空気清浄装置の仕様を改めた。
・JIST7101(医療ガス設備)等の改正を踏まえ,医療ガス設備の規定を改めた。
4-3.標準的な建築材料・設備機材,工法による施工品質の確保
【建築・建築改修】
・鉄筋の継手における,ガス圧接による圧接部の外観試験について,近年の施工実態等を踏まえ,超音波探傷試験と同様,技能資格者が行う規定に改めた。
・複層仕上塗材の耐候性や上塗り材の種類について,近年の施工実態等を踏まえ,特記事項に改めた。
・フローリングについて,新営の仕様からは現場塗装に係る規定を削除し,工場塗装品を標準として改めた。
・煙突ライニングの工法について,近年の施工実態等を踏まえ,コンクリート打込みに限定しない規定に改めた。
・その他,タイル工事の改良積み上げ張り等について,近年の施工実態等を踏まえ削除した。
【木造】
・製材等及び合板等の防腐・防蟻処理について,近年の施工実態等を踏まえ,薬剤の加圧注入工法及び加圧注入以外の工法における(公財)日本住宅・木材技術センターの優良木質建材等認証制度に基づくAQ認証材を追加した。
【電気設備・電気設備改修・電気設備標準図】
・自家発電装置の試験について,発電機及び原動機を組合せて一体の装置として製品化している近年の実情を踏まえ,個々の試験から一体の試験を主とした構成に改めた。
・テレビ受信機器について,近年の技術の普及を踏まえ,4K・8K放送に対応した3GHz帯機器を主体とした構成に改めた。
・監視カメラについて,近年の技術の普及を踏まえ,暗い場所での監視を可能とする最低被写体照度に改めた。
・その他,平形保護層配線等について,近年の施工実態等を踏まえ削除した。
【機械設備】
・給水用タンク内部の腐食抑制のため,容量制御を行う場合に気相部へ用いる材質及び防護材の規定を追加した。
・空調用熱源屋外機のコイルの材質について,近年の施工実態等を踏まえ,アルミニウムを追加した。
・チリングユニット及び空気熱源ヒートポンプユニットについて,近年の施工実態等を踏まえ,組込みのポンプを追加した。
・遠心冷凍機の主軸について,近年の施工実態等を踏まえ,磁気軸受けを追加した。
・空気調和機について,近年の施工実態等を踏まえ,デシカント形空気調和機及び潜熱,顕熱分離形のコンパクト形空気調和機を追加した。
・その他,温風暖房機等について,近年の施工実態等を踏まえ削除した。
5. おわりに
標準仕様書等の目的・概要,適用範囲等及び解体工事共通仕様書の目的・概要,適用方法について,国土交通省大臣官房官庁営繕部のホームページ(※)に掲載していますので,使用にあたっては,留意事項も含めて確認をお願い致します。
(※)https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000017.html#3-5
【出典】
積算資料2022年7月号

最終更新日:2023-01-05
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