- 2023-07-10
- 積算資料
国土交通省は令和5年度の公共工事設計労務単価を決定した。
全国・全職種の単純平均値は前年度比5.2%上昇と、高い伸びを示した。
11年連続の引き上げとなる。
5%以上の伸びは平成26年度以来9年ぶり。
全国・全職種の平均金額は加重平均値で2万2,227円に上り、公共工事設計労務単価の公表を始めた平成9年度以降の最高値を5年連続で更新した。
国交省は、3月から前倒しで直轄工事に適用している。
直接支給手当を新たに反映
国や地方自治体などが公共工事の予定価格積算に用いる公共工事設計労務単価は、技能労働者に対して支払われた賃金の実態を公共事業労務費調査で把握し、必要な経費などを反映した上で、47都道府県別・51職種別に算出している。
今回は、調査で十分な有効標本数を確保できなかった建築ブロック工を除く50職種で設定した。
必要な法定福利費相当額、義務化分の年次有給休暇取得に要する費用、時間外労働時間の短縮に必要な費用は引き続き反映。
新規の取り組みとして、建設キャリアアップシステムの能力評価を反映した手当など、元請企業が技能労働者に直接支給している手当を反映した。
ただ、下請企業を経由しないで技能労働者に手当を直接支給している
元請企業は一部に限られるため、公共工事設計労務単価の変動に与える影響は小さいと、国交省は説明する。
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて前年度を下回った単価を据え置く特別措置の適用と、東日本大震災の被災地で入札不調の発生状況に応じた単価の採用は、今回から取りやめた。
総じて高い伸び率
ブロック別の全職種平均金額(単純平均)は全8地域で上昇した。
最も高い伸び率を示したのは、関東と近畿の6.6%。
これに北陸(5.5%)を加えた計3地域が、全国・全職種平均の伸び率5.2%を上回っている。
伸び率が最も低い九州・沖縄でも3.1%だった。
公共工事で広く一般的に従事されている主要12職種の全国平均は、単純平均値で5.0%増、金額は加重平均値で2万822円となった。
主要12職種平均の5.0%上昇も近年見られなかった高い伸び率で、5%を超えるのは平成28年度以来7年ぶり。
職種別の伸び率は、「交通誘導警備員A」が7.1%で最も高く、「軽作業員」と「交通誘導警備員B」が6.3%で続いた。
最も低いのは「鉄筋工」の3.6%だったが、令和4年度主要12職種の全国平均伸び率3.0%を上回っており、令和5年度は総じて伸び率が高い。
表-1 地域ブロックごとの平均単価と伸び率
官民一体の取り組み成果
国交省は、労務単価の大幅引き上げに至った要因について、官民一体で賃上げの機運醸成を進めてきたことを第一に挙げる。
加えて、「安定的な公共事業予算の確保」「適正価格での公共工事の発注とダンピング対策」「適正な請負代金での下請契約の締結促進」など、国交省と建設業界が連携して進めてきた各種取り組みが複合的に結び付いた成果との認識を示す。
実際、全国・全職種平均の伸び率5.2%は、国交省と日本建設業連合会など建設業4団体が令和4年2月に申し合わせた、「おおむね3%の技能労働者の賃上げを目指す」とする目標水準を上回った。
官民が申し合わせた目標水準を労務単価の伸び率が超えるのは2年連続となる。
建設現場を支える技能労働者の確保・育成に向けては、処遇改善が不可欠だ。
国交省は、技能労働者の賃上げを継続的に行い、それが公共工事設計労務単価などの上昇を通じて適正利潤の確保につながり、さらなる賃上げへと結び付く「好循環」の持続が重要と指摘する。
好循環の維持可能な環境を整備するためには、公共工事・民間工事を問わず、令和5年度労務単価の水準を踏まえた適正な請負代金で契約し技能労働者の賃金水準を改善する必要があるとし、発注者、元請企業、下請企業に適切な対応を求めている。
(編注)
各都道府県の令和5年3月から適用する公共工事設計労務単価については、本誌929~940頁をご参照ください。
表-2 令和5 年3 月から適用する公共工事設計労務単価・主要12 職種
【出典】
積算資料公表価格版2023年4月号

最終更新日:2024-03-25
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