- 2023-07-24
- 積算資料
1.はじめに
2019年4月に建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)の運用が開始されてから、間もなく4年が経過しようとしています。
この間、技能者登録数は100万人(2022年10月末現在)を突破し、事業者登録数(一人親方を除く)も14万社(2022年12月末現在)に達するなど、CCUSの登録促進が図られてきています。
また、経営事項審査において元請事業者によるCCUSの現場利用に対する加点措置が導入され、加えて公共工事発注者においては、工事発注時に、CCUSの登録や就業履歴の蓄積を行った元請事業者を評価するインセンティブ措置の導入が進められるなど、取り組みを深化させています。
ここでは、これらのCCUSの現場での利用促進に向けた国土交通省・公共工事発注者における取り組みをはじめ、CCUSの現場利用を支援するための主な取り組みをご紹介いたします。
2.経営事項審査におけるCCUSの現場利用に対する加点措置
公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経営事項審査を受ける必要がありますが、2022年8月に建設業法施行規則等が改正され、CCUSの現場利用が経営事項審査の評価(加点)対象に追加されました。
2023年8月14日以降を審査基準日とする申請から評価(加点)の対象となります。
加点を受けるための要件は、審査基準日前1年以内に発注者から直接請け負った建設工事のうち、建設業法施行令に定める「軽微な工事」などを除いた工事が対象工事となり、当該審査対象工事の全て(民間工事を含む)において以下の①~③を実施した場合に15点、当該審査対象工事のうち全ての公共工事において①~③を実施した場合に10点加点されることになります。
15点または10点と大きな評点の加点となりますので、CCUSの現場利用の促進に大きく寄与するものと期待されています。
①CCUS上で「現場契約情報」を登録すること
②建設工事に従事する者が当該現場において就業履歴を蓄積できる体制を整備していること
③経営事項審査申請時に様式6号に掲げる誓約書を提出すること
3.公共工事におけるインセンティブ措置の導入拡大
CCUSの活用により、公共工事に従事する技能者が、その能力や経験に応じた適切な処遇を受けられる労働環境の整備に資することが期待されます。
このため、国土交通省の直轄工事では2020年度からCCUSモデル工事が実施・拡大されていますが、2022年5月の公共工事入札契約適正化指針の改正等を受けて、都道府県や指定都市、独立行政法人、特殊会社が発注する公共工事においても、CCUSモデル工事等の導入が広がっています。
- 国土交通省の直轄工事
2020年度よりCCUSモデル工事を試行し、事業者登録率・技能者登録率・就業履歴蓄積率を確認の上、達成状況により工事成績評点で加点。
Aランク、Bランクの工事に加えて、Cランク工事においても35都道府県で実施(予定を含む)。 - 地方公共団体
39道府県においてCCUSの登録を総合評価で加点する企業評価の導入等を表明し、他のすべての都県も導入の検討を表明。 - 独立行政法人・特殊会社
UR都市機構、水資源機構、NEXCO東日本・西日本、鉄道・運輸機構においてモデル工事を実施。
4.就業履歴の蓄積環境の整備に向けた取り組み
公共工事におけるインセンティブ措置等の導入により、CCUSの現場利用が進み、CCUSに蓄積される就業履歴数も年々着実に増加し、2022年度は4000万件に達する見込みとなっています(表-1)。
就業履歴数の内訳をみてみます。
2022年度(~12月まで)の就業履歴数を年換算して、当該就業履歴を蓄積した元請事業者の規模別、本店所在地別にみると、東京都・大阪府に所在する元請事業者、元請完工高500億円以上の大手事業者のシェアがそれぞれ90%以上を占めるものの、地方に所在する事業者、元請完工高500億円未満の事業者による就業履歴の割合も着実に伸長していることがうかがえます(図-1)。
【図- 1 就業履歴の内訳】
また、本運用が始まった2019年度以降にCCUSに登録された現場数(登録現場数)の推移をみてみると、元請完工高500億円未満の事業者による登録現場数も着実に増え、2022年度(~12月まで)は全体の50%弱を占めるまで増加しています。
さらに、その元請完工高500億円未満の事業者による登録現場数について、元請完工高別に細分化してみると、元請完工高10億円未満の小規模事業者が登録したものも数多く含まれており、中小規模事業者においても、現場利用、就業履歴の蓄積が進展していることが分かります(図-2、3)。
こういった中小規模事業者による就業履歴の蓄積を促進するため、国土交通省では、安価なカードリーダー(3,000~4,000円程度)でも就業履歴の蓄積が可能となるアプリの改修を令和4年度の2次補正予算で予算措置を講じたところです(図-4)。
また、CCUSで就業履歴のために一般的に利用されているアプリケーションである建レコのカードリーダーにロギング機能(カードリーダー本体に就業履歴を一時保管する機能)を実装させるため、建レコの改修が進められています。
このロギング機能が実装されると、現場ではカードリーダーの設置だけで済むことから、現場利用に係るコスト軽減に資するとともに、戸建住宅の建設現場など小規模現場や道路舗装工事などパソコン等の設置になじまない現場での就業履歴の蓄積に効果を発揮することが期待されます。
2023年夏頃から、対応するカードリーダーにおいて順次ロギング機能の供用を開始する予定です(図-5)。
5.おわりに
運用開始から約4年が経過し、CCUSの登録や現場利用が進んできた一方で、さらにCCUSの拡大・定着を図っていくためには、地方・中小規模事業者を中心とした技能者・事業者登録の促進、現場利用の促進を図っていく必要があります。
建設業振興基金では、これからもユーザーサポートの充実をはじめ、CCUSが建設業共通のインフラとして定着するよう、力を尽くしてまいりますので、引き続き皆さまのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
【出典】
積算資料公表価格版2023年4月号

最終更新日:2024-03-25
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