- 2023-09-11
- 積算資料
1.はじめに
下水道事業における標準歩掛は、各地方公共団体に参考送付されている国土交通省土木工事積算基準(以下、「土木工事積算基準」という)を基本としている。
合わせて、下水道事業特有の現場環境や施工条件等で行われる工種については、国土交通省 下水道部(以下、「下水道部」という)が中心となり、下水道用設計標準歩掛表(以下、「白本」という)により補足している。
白本は、第1巻 管路、第2巻 ポンプ場・処理場、第3巻 設計委託で構成され、老朽化施設の増加や情報通信技術の活用による生産性向上等の社会環境の変化、施工技術の向上・省力化等の現場における施工実態に対応するため、適宜改定を行っている(写真- 1)。
下水道事業の最も特徴的な工種として、管路掘削が挙げられる。
土木工事積算基準に掘削に関する標準歩掛は掲載されているが、家屋や地下埋設物などと近接する道路上の施工では、使用機械、作業効率等が異なることから、管路掘削の標準歩掛を策定し、白本に掲載している。
本稿では、白本に掲載されている標準歩掛の新規制定・改定までの流れとともに、令和5年度の主な改定内容を紹介する。
写真- 1 下水道用設計標準歩掛表
2.下水道用設計標準歩掛表
(1)標準歩掛の検討体制
地方公共団体における下水道事業の円滑な事業運営の一助として、白本を作成・発刊している。
白本の作成・発刊に当たっては、地方公共団体 の要望・提案を反映するため、下水道事業積算施工基準適正化会議(以下、「適正化会議」という)などを活用している(図- 1)。
適正化会議では、新工法等に対応した標準歩掛の新規制定や、適用範囲の拡大に関する要望、積算基準に関する考え方などについて、議論・意見交換を行っている。
近年では、耐震化、耐水化及び改築更新に関する議題・要望が多くなっている。
地方公共団体からの要望・提案のほか、建設業における働き方改革や生産性向上に関する取組等の社会環境の変化を踏まえ、標準歩掛の新規制定・改定が必要と判断された場合には、下水道用歩掛検討委員会(以下、「歩掛検討委員会」という)に検討を指示している。
歩掛検討委員会には、専門の歩掛等検討小委員会(以下、「小委員会」という)を設けており、小委員会において、標準歩掛に関する具体的な検討を行っている。
小委員会は、委員である政令指定都市、事務局である下水道部・下水道協会などにより構成され、委員には多忙な通常業務の中、多大な協力をいただいている。
小委員会における検討の結果、標準歩掛の新規制定や改定が必要と判断された場合には、歩掛検討委員会での審議を経て、最終的に下水道部から各地方公共団体に対して改定内容等について参考送付・情報提供している。
(2)検討内容・方法
白本には、施工合理化調査の結果に基づき定められた労務、材料、機械などの規格や所要量などが記載されており、設計積算の参考図書として、下水道工事の積算担当者に広く活用されている。
施工合理化調査は、標準歩掛の新規制定や改定 の要望を受けた工種や、前回の調査や改定から一定期間経過した工種などを対象に実施している。
標準歩掛の新規制定・改定に向けた具体的な作業・検討内容は、以下のとおりである。
① 検討する標準歩掛を想定し、調査すべき労務・材料・機械などに関する調査票を作成
② 作成した調査票は、施工合理化調査として、下水道部から地方公共団体に記入依頼
③ 施工合理化調査の結果を作業内容別などに集計し、統計的解析を実施
④ 解析結果とともに、現場の施工実態を勘案した上で、規格や所要量、適用範囲などを設定
前記の施工合理化調査以外にも、下水道機械・電気設備工事においては、共通仮設費や現場管理費等の実態を確認するための諸経費実態調査を実施し、その調査結果をもとに諸経費の改定検討も合わせて行っている。
図- 1 設計積算基準の適正化に関する全体構造図
3.令和5年度の主な改定内容
(1) 第1巻 管路
第1巻 管路においては、以下の工種について、前回の改定から一定期間経過したことから、施工合理化調査を実施し標準歩掛を改定した。
○マンホール工(外副管、内副管)
マンホールに取り付けられる副管は、マンホールの流入管きょと流出管きょに大きな段差が生じる場合に、マンホール内での点検や清掃作業を容易にするとともに、流水によるマンホールの底部、側壁等の摩耗を防ぐために、設置するものである。
副管には、マンホール設置箇所の施工条件等に応じて、マンホールの外側に設置する外副管と、内側に設置する内副管の2種類がある(写真- 2、3)。
白本における外副管取付工及び内副管取付工の適用範囲は共通となっており、管材は硬質塩化ビニル管、内径は100〜300mm、段差は4.0m未満である。
令和3年度に行った施工合理化調査の解析結果と現行の施工歩掛を比較すると、作業効率の向上が見受けられたため、施工歩掛の改定を行った
(図- 2、3)。
図- 2 外副管取付工の標準歩掛の改定
図- 3 内副管取付工の標準歩掛の改定
(2)第2巻 ポンプ場・処理場
第2巻 ポンプ場・処理場の機械・電気設備工事においては、令和元年に公共工事の品質確保の促進に関する法律が改正され、労災補償に必要な保険契約等の予定価格への反映が発注者の責務となったことを踏まえ、諸経費実態調査を実施し、以下の諸経費を改定した。
○現場管理費
現場管理費は、工事の施工に当たり、工事を管理するために必要な費用で、労務管理費や法定福利費、福利厚生費、保険料等が該当する。
そのためには、施工合理化調査や諸経費動向調令和3年度に実施した諸経費実態調査の解析結果を踏まえ、下水道機械・電気設備工事の現場管理費率の改定を行った(図- 4)。
図- 4 下水道機械・電気設備工事の現場管理費の改定
(3)その他
前記(1)、(2)以外にも、原動機燃料消費量の一部改定に伴う機械運転単価表の見直しや社会環境の変化を踏まえた表現の是正などを行っている。
詳細な改定内容については、下水道部のホームページ(新旧対照表を掲載)や、今後発刊される白本において確認していただきたい(https:// www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizu kokudo_sewerage_tk_000466.html)。
4.おわりに
積算基準・標準歩掛は適正な予定価格を算出するための手段であることから、客観性・公平性・経済性の観点などにおいて、現場の施工実態を反映するとともに、建設業を取り巻く社会環境の変化に的確に対応したものでなければならない。
査などの調査票に高い精度で記入いただくことが重要になってくることから、地方公共団体の皆さまにおかれましては、多忙な日常業務の中、引き続き各種調査にご協力いただきたい。
また、設計積算を行う際には、現場状況と用いる標準歩掛の適用条件・範囲などを十分確認の上、適正な設計積算に努めていただきたい。
特に、改築工事の設計に当たっては、現場条件に制約が多く新設工事と比較して標準歩掛に馴染まない現場も多いことから、適用に当たっては事前に調査や検討を行っていただきたい。
また、施工後に、当初設計時に想定していた現場状況に差異が生じた際は、設計変更を行うなどして柔軟に対応する必要がある。
下水道部としては、今後も地方公共団体と意見交換や情報共有を図りながら、不調・不落の防止や工事品質の確保などの観点を踏まえつつ、工事費積算の適正化と積算業務の効率化に努めていきたい。
最後に、施工合理化調査等に協力いただいた皆さま、標準歩掛の改定に向け協力いただいた各種委員の皆さまに感謝申し上げる。
【出典】
積算資料2023年5月号

最終更新日:2024-03-25
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