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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 2023首都高速大規模更新事業の概要・進捗状況について
首都高速道路は、首都圏の幅広いエリアを約327kmのネットワークで結び、暮らしや社会経済活動を支えるインフラとして、1日約100万台のお客さまに利用いただいている。
道路構造物の点検・補修に日夜取り組んでいるところだが、既に開通から50年以上経過した路線が全体の3割以上になるなど、進行する高齢化や過酷な使用等により、構造物に多数の損傷が発生し、その中には重大な損傷も発見されている状況にある。
 
このような状況下において、より効果的・効率的に維持管理するため、道路構造物を造り替える大規模更新と、集中的に損傷を補修する大規模修繕の検討が進められ、2014年度より大規模更新・大規模修繕事業を開始しているところである。
 
本稿では、5カ所の大規模更新事業(図-1)のうち、高速大師橋更新事業と、東品川桟橋・鮫洲埋立部、さらには、竹橋・江戸橋JCT付近更新区間のうち日本橋周辺のまちづくりと一体となって整備される日本橋区間地下化事業の概要と進捗状況について、昨年に引き続き報告する。

【図- 1 大規模更新実施箇所】
【図- 1 大規模更新実施箇所】

 
 

1. 高速大師橋更新事業

(1) 事業概要等

本事業の事業概要および構造概要等については、本誌2020年12月号掲載の寄稿文をご参照いただきたい(注1)
 

(2) 施工概要

本事業では、仮設のう回路を設けず、高速本線を約2週間通行止めにし、橋梁全体を横取り一括架設にて架け替える計画とした(図- 2)。
 
Step1として、河川内の既設橋の上・下流側および陸上部に新設橋脚を設置する。
なお、陸上部の橋脚は、一時的に仮設橋脚で既設橋の上部工を仮受けし、既設橋脚の撤去および新設橋脚の構築を行い、橋梁の横取り一括架設の前に造り替えを完了させる。
また、橋梁を横取りするための橋桁移動設備(以下「ベント設備」という)を既設橋の下流側に設置する。
 
Step2では、既設橋の下流側に設置したベント設備上で新設橋を組み立てる。
新設橋の組み立てに際しては、川崎側間を1,300t、中央径間を1,900tの大ブロックに分け、東京湾内に設けた地組ヤードでそれぞれ長さ82mと132mに組み立てた後、6,000t積級台船に載せ、東京湾・多摩川を水上運搬し、ベント設備上へ台船リフトアップ架設する。
東京側間については、川底が浅く、台船が近づけられないことから、橋上からトラベラークレーン架設により新設橋の組み立てを行う。
組み立て新設橋桁は、延長約300m、重さ約4,000tあり、東京タワーと同等の長さ・重さである。
 
Step3では、約2週間の高速本線の通行止めを実施した上で、横取り一括架設、開通に必要な附属施設物の施工や各種検査等を行った後に、交通開放し、供用する。
 
最後に、Step4で、既設橋およびベント設備の解体・撤去等を行う。

【図- 2 全体施工ステップ】
【図- 2 全体施工ステップ】

 

(3) 工事進捗状況

2023年5月27日(土)午前5時~6月10日(土)午前5時の2週間にわたって、高速1号羽田線の一部区間の終日通行止めを行い、架け替え工事を実施した。
 
通行している橋を撤去し、同じ場所に新しい道路橋を架けるためには通常であれば工事期間は年単位となるが、首都圏全体の交通影響を鑑み、通行止め期間をできる限り短縮させるため、以下の工夫を行った。
1つ目はスライドによる一括架設を採用したこと、2つ目は事前に可能な限り橋を完成させ(附属施設物(舗装(基層))や高欄、照明柱等をベント上で施工)、通行止め中の工事を最小限にしたこと、3つ目は雨天でも工事可能な環境を整備し、確実に工程管理を行うことである。
 
これらの工夫により、2週間という短期間での道路橋の架け替えを実現させた。
 
通行止め期間中の工事ステップを紹介する(図-3)。
まず、既設橋の撤去準備として、更新範囲端部 の高欄や舗装、橋桁の一部を撤去した。
そして、河川内に設置したベント設備上で既設橋をスライドし、新設橋をスライド架設した(写真- 1)。
そして、端部の橋桁を架設し、橋桁の位置調整を行ったのち、橋脚を現場溶接接合した(延長約8.4km)。
溶接は雨天でも工事ができるよう橋脚を防雨設備で覆い、溶接作業を行った。
 
さらに、スライド後にしかできない舗装・区画線、端部の高欄等の工事および各種検査・点検ののち、予定通り通行止めを解除し、生まれ変わった高速大師橋が開通した(写真- 2)。
 
通行止め中は、通行止め区間を通る1日約8万台の交通が一般道を含めたほかの道路へ分散することになり、多大な影響が及ぶことが懸念されたため、並行する首都高湾岸線へのう回に加え、この期間は首都高のご利用を避けていただくなど、特設サイト、テレビCM、リーフレット配布、横断幕や看板の設置、空港利用者向け広報およびSNS等を用いて、お客さまへの丁寧な情報発信を行った。
 
なお、通行止め期間中の横取り一括架設工法による架け替え動画をYouTubeで配信しているので、ぜひご覧いただきたい(YouTubeで「首都高リニューアルプロジェクト」を検索)。
引き続き、既設橋の解体・撤去等など、安全かつ着実に工事を進めていきたい。

【図- 3 通行止め期間中の工事ステップ】
【図- 3 通行止め期間中の工事ステップ】
【写真- 1 既設橋撤去状況(高速道路が寸断されている状況)】
【写真- 1 既設橋撤去状況(高速道路が寸断されている状況)】
【写真- 2 新設橋供用後の状況】
【写真- 2 新設橋供用後の状況】

 
 

2. 東品川桟橋・鮫洲埋立部 更新事業

(1) 事業概要等

本事業の概要、施工ステップ等の詳細については、本誌2018年12月号掲載の寄稿文を参照いただきたい(注2)
 

(2) 施工概要

更新に際しては、首都高速道路および周辺の一般道路への影響を考慮し、交通を確保するため、う回路を設置し交通を切り替えながら、本線を半断面ずつ造り替える計画として、2016年2月より工事着手している。
2017年9月に上り線のう回路への切り替えが完了し、2020年6月に下り線の交通を将来上り線となる更新線へ暫定的に切り替えた。
 
現在、将来下り線となる更新線の工事を進めている。
本施工では、上記した暫定供用中の、将来上り線となる更新線と東京モノレールに挟まれたスペースにおいて、安全に配慮しながら施工を進めている。
また、工事用車両のアクセス箇所が少なく、細長い施工ヤードでの施工となるため、資機材の搬入方法や施工方法に工夫をしながら施工を進めている。
 

2023年8月時点において、東品川区間では橋脚の設置や上部工を実施しており、鮫洲区間では、プレキャストセグメントの設置が完了し、調整コンクリートの施工等、橋面工を実施している(写真- 3、4)。

【写真- 3 東品川桟橋部 桁架設施工状況】
【写真- 3 東品川桟橋部 桁架設施工状況】
【写真- 4 鮫洲埋立部 施工状況】
【写真- 4 鮫洲埋立部 施工状況】

 
 

3. 竹橋・江戸橋JCT付近(日本橋区間地下化事業)

(1) 事業概要等

本事業の概要については、本誌2021年12月号掲載の寄稿文をご参照いただきたい(注3)
日本橋区間地下化事業は、現在、本体施工に向けた準備工事である「地下埋設物移設」と「出入口撤去工事」から着手し、工事を進めているところである(図- 4)。
その後、2035年度の地下ルート開通、そして2040年度の完成(高架橋撤去)を目標に、進める予定である。
※上のイメージは江戸橋出入口の範囲のみ示したものであり、詳細は今後の検討、協議等により変更となる可能性があります

(撤去前)
(撤去前)
(撤去後)
(撤去後)

※ 上のイメージは江戸橋出入口の範囲のみ示したものであり,詳細は今後の検討,協議等により変更となる可能性があります
【図- 4 出入口撤去前後のイメージ(江戸橋出入口)】
 

(2) 出入口撤去工事の進捗状況

出入口撤去工事は、地下ルートを整備するに当たり、今後日本橋川内で工事が必要となることから、日本橋川の流れを現状より悪化させないようにするため、呉服橋出入口と江戸橋出入口を先行して撤去するものである。
出入口部を撤去し、日本橋川内の橋脚本数を減らすことで、日本橋川の水位を下げて、治水上の影響を低減し、今後の河川内の工事を可能とする(図- 5)。

【図- 5 出入口撤去工事の概要】
【図- 5 出入口撤去工事の概要】

 
本工事で撤去するのは、呉服橋と江戸橋の入路、出路とその本線分合流部に当たる橋梁の床版と桁、およびそれらを支える橋脚であり、今回の工事で全7本の橋脚を撤去する。
また、橋脚の撤去に伴い必要となる既設構造物の補強も実施する。
橋桁の撤去は数種類の工法で実施している。
その1つの工法は、橋桁を切断し河川上の台船に降下後、台船上で桁の分割を行う。
その後、橋梁上へ吊り上げ、車両で搬出することにより撤去を実施する(図-6)。

【図- 6 出入口撤去工事における橋桁撤去手順】
【図- 6 出入口撤去工事における橋桁撤去手順】

この出入口を撤去するに当たり、2021年4月に呉服橋・江戸橋出入口撤去工事に着手し、同年5月10日(月)午前0時に高速都心環状線の呉服橋出入口、江戸橋出入口を廃止した。
 
現在、出入口撤去が進められ、一部の橋梁において床版および桁の撤去が実施済みである(写真-5)。
出入口撤去工事は2023年度末まで実施する。
今後は、出入口撤去工事の完了後、地下トンネル工事等の本体工事に着手する予定である。

呉服橋出入口部 橋桁撤去状況
呉服橋出入口部 橋桁撤去状況
江戸橋入口部 橋桁撤去状況
江戸橋入口部 橋桁撤去状況

 

今回報告のとおり、首都高速道路の大規模更新事業については着々と事業を進めているところである。
なお、大規模更新事業の工事現場状況等の紹介動画を定期的に配信しているので、そちらもご参照いただきたい(「首都高 リニューアル 動画」でWeb検索)(注4)
また、今回報告した事業以外に、池尻・三軒茶屋出入口付近については地下躯体補強工事に着手しており、銀座・京橋出入口付近は周辺まちづくりとの連携を含めた更新計画を検討している。
引き続き、お客様および沿道の方々へのご理解、ご協力を得ながら事業を進めてまいります。

 
(注)1.http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/34608
   2.http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/24678
   3.http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/38739
   4.https://www.youtube.com/playlist?list=PLUtNIHSs5G9cALoSuVKE3yNIccr_wCYJu
 
 
 

首都高速道路株式会社 更新・建設局

 
 

【出典】


積算資料2023年11月号

積算資料2023年11月号

最終更新日:2024-03-25

 

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