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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価

 
国土交通省は令和6年度の公共工事設計労務単価を決定した。
全国・全職種の単純平均値は前年度比で5.9%上昇し、過去10年で最大の伸び率となった。
物価上昇率(消費者物価指数)の令和5年平均3.2%を上回っている。
必要な法定福利費相当額の反映を目的に単価算出手法を大幅に変更した平成25年度以降、引き上げになるのは12年連続。
全国・全職種の金額は加重平均値で2万3,600円に上り、設計労務単価の公表を始めた平成9年度以降の最高値を6年連続で更新した。
国交省は例年と同様、直轄工事で3月から前倒しで適用している。

 

時間外労働の上限規制対応に必要な費用を考慮

国や地方自治体などが公共工事の予定価格積算に用いる公共工事設計労務単価は、毎年10月実施の工事を対象としている公共事業労務費調査で把握した労働市場の実勢価格に、建設業を取り巻く状況変化への対応に必要な経費などを反映した上で、47都道府県別51職種別に算出している。
今回は、調査で十分な有効標本数を確保できなかった建築ブロック工を除く50職種で設定した。
 
労働市場の実勢価格をベースとしつつ、令和6年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されることを踏まえて、規制対応に必要な費用も過去2カ年以上に考慮し、設計労務単価を設定した。
その結果、全国・全職種の単純平均で2年続いて5%以上の高い伸び率となった。
現行の単価算出手法に見直される前の平成24年度と比べると、12年間で75.3%伸びている。

 
 

8 ブロック全てで 5%以上の高い伸び率

ブロック別の全職種平均金額(単純平均)は全8地域で上昇した。
最も高い伸び率を示したのは北陸の7.7%。
これに近畿(6.5%)、中国(6.3%)、四国(6.0%)、九州・沖縄(6.1%)を加えた計5ブロックが、全国・全職種平均の伸び率5.9%を上回っている。
8ブロック全てで5%以上の伸び率となっている。
 
 表-1 地域ブロックごとの平均単価と増減率

地 域 令和5年3月 令和6年3月
単価(円) 前年度比(%) 単価(円) 前年度比(%)
北海道・東北 28,739 +4.8 30,234 +5.2
関東 28,682 +6.6 30,222 +5.4
北陸 28,318 +5.5 30,501 +7.7
中部 28,832 +4.9 30,468 +5.7
近畿 26,569 +6.6 28,295 +6.5
中国 24,721 +4.4 26,271 +6.3
四国 25,716 +4.0 27,259 +6.0
九州・沖縄 26,222 +3.1 27,821 +6.1

※単純平均
 

 
公共工事に広く従事し現場労働者の8割以上を占める主要12職種は、全国の単純平均値で6.2%上昇し、加重平均値で金額が2万2,100円になった。
主要12職種で6%を超える伸び率は平成28年度以来8年ぶりで、5%超えは2年連続。
職種別の伸び率は、「交通誘導警備員B」が7.7%で最も高く、その後を「運転手(一般)」の7.2%、「鉄筋工」と「型わく工」の6.6%が続いた。
最も低い「大工」で4.9%の上昇となっており、主要12職種は全体的に前年度より伸び率が高い。
 
国交省の北海道開発局、8地方整備局、内閣府の沖縄総合事務局が設置されている10都道府県の主要12職種平均単価を見ると、沖縄県の特殊作業員と鉄筋工、大阪府の大工、愛知県の交通誘導警備員A、愛知県と大阪府の交通誘導警備員Bで伸び率が2桁になった。
 
 表-2 令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価・主要12職種

都道府県名 特殊作業員 普通作業員 軽作業員 とび工 鉄筋工 運転手(特殊)
北海道 23,600 +3.5 20,000 +4.7 17,500 +7.4 27,700 +6.1 27,300 +3.8 24,900 +6.4
宮城県 27,600 +3.4 22,100 +5.2 18,500 +7.6 31,500 +6.1 35,500 +3.8 32,600 +6.5
東京都 28,300 +6.0 25,400 +6.3 17,600 +4.8 31,200 +4.3 30,900 +6.6 28,900 +4.3
新潟県 26,100 +4.8 21,900 +5.8 19,700 +5.3 27,200 +7.5 28,600 +5.9 25,600 +4.5
愛知県 27,700 +9.1 23,500 +6.3 18,100 +5.8 30,200 +8.6 28,800 +3.6 27,900 +6.5
大阪府 25,700 +5.3 21,800 +3.8 15,200 +7.8 28,000 +5.7 27,000 +5.5 25,600 +7.1
広島県 23,600 +7.8 20,500 +4.6 15,400 +7.7 24,700 +2.9 24,300 +9.0 23,700 +7.2
香川県 24,200 +4.3 22,600 +7.1 15,800 +8.2 25,400 +8.1 24,800 +3.8 23,300 +6.9
福岡県 25,600 +8.9 21,900 +5.3 14,900 +4.2 27,000 +7.1 26,200 +8.7 24,800 +6.9
沖縄県 25,300 +10.0 21,400 +7.0 16,000 +6.0 31,900 +8.5 29,200 +10.2 28,600 +7.9

 

都道府県名 運転手(一般) 型わく工 大工 左官 交通誘導警備員A 交通誘導警備員B
北海道 20,700 +7.8 26,400 +4.8 28,100 +2.9 28,300 +6.0 16,900 +4.3 14,000 +4.5
宮城県 28,500 +7.5 38,400 +4.6 33,000 +2.5 34,600 +5.8 18,200 +4.0 15,200 +4.8
東京都 23,600 +5.4 30,000 +9.1 28,800 +4.3 30,800 +4.4 19,000 +6.1 16,600 +7.1
新潟県 23,300 +7.9 26,700 +6.4 27,800 +6.1 27,600 +7.8 17,600 +5.4 15,700 +9.8
愛知県 25,300 +5.9 30,500 +4.1 31,700 +3.6 27,600 +4.5 19,700 +11.9 16,200 +11.7
大阪府 22,300 +8.8 30,000 +8.3 26,400 +10.0 27,100 +6.3 16,200 +8.0 14,000 +10.2
広島県 20,800 +8.3 24,600 +4.2 23,800 +3.0 22,400 +3.2 17,200 +4.9 14,700 +8.9
香川県 21,700 +4.3 25,800 +7.1 25,000 +3.3 15,600 +4.7 14,000 +4.5
福岡県 22,400 +8.7 25,800 +6.2 25,600 +4.5 26,000 +4.0 15,700 +6.1 14,100 +6.0
沖縄県 26,400 +9.5 29,800 +7.6 28,500 +4.8 14,600 +7.4 12,400 +6.9

※円/1日8時間当たり、令和5年3月比(%)。「―」は標本数の関係で未集計。
 
 

単価引き上げを技能者の賃上げに

設計労務単価が引き上げになった最大の要因は労働市場の実勢価格上昇だ。
国交省は、斉藤鉄夫国土交通相と建設業4団体トップが令和5年3月の意見交換会で申し合わせた令和5年技能者賃上げ目標「おおむね5%」の達成に向けて、官民が一丸となって取り組んだことが実勢価格上昇につながったとみる。
実際、全国・全職種の単純平均5.9%上昇は技能者賃上げ目標より高い伸び率だった。
目標を設計労務単価の伸び率が超えるのは3年連続。
加えて、デフレからの完全脱却に向け、政府全体で物価上昇に負けない賃上げを推進したことに伴う社会の賃上げ機運の高まりが追い風になったとしている。
 
斉藤国交相は、設計労務単価を発表した2月の会見で、令和6年4月から建設業に適用される時間外労働の上限規制を踏まえて単価設定したことを説明し、「今回の引き上げを受け、建設業界に対し、時間外労働規制の導入に向けた準備を着実に進めるよう強く促す」と強調した。
設計労務単価を持続的に引き上げていくためには技能者の賃上げにつなげることが重要と説き、「今回の単価引き上げが各社の賃上げに結び付き、次なる単価引き上げにつながる『好循環』を実現できるよう、賃上げを強く働き掛けていく」と述べた。
 
(編注)
各都道府県の令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価については、本誌929~940頁をご参照ください。
 

 
 

株式会社 日刊建設通信新聞社
 編集局 柿元 瞬

 
 
 
【出典】


積算資料2024年4月号

最終更新日:2024-07-08

 

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