- 2024-09-10
- 積算資料
はじめに
首都高速道路は、1962年の京橋〜芝浦間4.5kmの開通を皮切りに、1964年10月の東京オリンピック開催までに羽田空港と国立競技場および選手村を結ぶ約33kmが開通し、当時の大会運営に大きく寄与した。
現在の首都高速道路ネットワークは320kmに達しており、2015年の首都高速中央環状線(以下、中央環状線)の全線開通により、首都高速都心環状線(以下、都心環状線)を中心とした9本の放射線を2つの環状線で結ぶネットワーク構成が完成し、大きな転換点を迎えた。
首都圏の経済活動を支える幹線道路ネットワークであるとともに、東名高速道路(以下、東名高速)、中央自動車道、東北自動車道および常磐自動車道などの全国ネットワークの結節点としての役割を担い、安全、安心、快適にご利用いただくための取り組みが重要となっている。
このような中で、プロジェクト部門で進めているのは、広域的なネットワーク整備や、中央環状線などのネットワーク効果をより高めるための連結路(ジャンクショ(JCT))・出入口の新設、構造物の長期的な安全性を確保するための大規模更新といった、現在ある道路をさらに使いやすく安全にご利用いただくための建設・改築・更新プロジェクトである。
本稿では、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催も見据え、より快適な首都高速道路を目指して整備を進めている5事業を紹介する(図-1)。
1. 横浜北西線
横浜北西線(以下、北西線)は、東名高速(横浜青葉JCT)と首都高速神奈川7号横浜北線(以下、横浜北線)および第三京浜道路(横浜港北JCT)とを接続する路線である。
完成後は横浜北線と一体となり、横浜市北西部、東名高速と横浜都心部、羽田空港、東京湾アクアラインなどが直結してネットワークが強化され、国際競争力の強化が期待される。
東名高速と横浜港の所要時間が約40〜60分から約20分に短縮され、東名高速から横浜港へのアクセスも大幅に向上するなど、横浜港の発展および経済活性化への貢献が期待される(図-2)。
北西線は、延長約7.1kmのうち約4.1kmがトンネル構造で、横浜市と当社が1本ずつシールドトンネルを施工するなど横浜市と共同で整備を進めている。
シールド区間の延長は約3.9kmで、2本のシールドマシンの掘進期間は約18カ月(平均月進216m)であり、約5.5kmの横浜北線の約41カ月(平均月進134m)に比べ短期間で掘進を終えることができた(写真-1)。
現在は、トンネル内の設備工事や立坑部の内部構築、高架区間の舗装や照明などの設備工事を進めており、2020年3月に開通予定である(写真-2、3)。
2. 馬場出入口
馬場出入口は、2017年3月に開通した横浜北線のほぼ中間に位置するフル方向サービスの出入口で、完成により本出入口周辺から横浜都心・東京方面へのアクセスが向上する。
なお、馬場出入口は都市高速道路で初めてのETC専用出入口としての運用に向けて、関係機関と手続き・協議中である。
また、本出入口の整備は、接続する都市計画道路の大田神奈川線の拡幅事業を当社が横浜市から受託し、関連街路事業として一体的な整備を進めている(写真-4)。
3. 小松川JCT(2019年12月1日開通)
中央環状線と首都高速7号小松川線(以下、小松川線)を結ぶジャンクションを新設する事業であり、連結路の整備と合わせて、中央環状線(埼玉方面)の利用が可能となるよう、既設の小松川入口(小松川線上り・都心方面)の隣に、中環小松川入口(中央環状線内回り・埼玉方面)を新設する。
また、既設の小松川出口を、小松川線の進行方向右側から左側に付替える。
これらの整備に伴い、小松川線沿道の附属街路第3号線、第4号線の拡幅も実施している。
完成すると混雑した都心部を通過することなく埼玉方面と千葉方面へ移動できるようになる。
また、都心環状線や東京外かく環状道路(以下、外環道)で事故などの突発事象が発生した際の代替ルートとして中央環状線が利用可能になる(図-3)。
さらに、一般道路から小松川線への転換により 周辺の一般道路の混雑緩和に寄与することも期待される。
小松川JCTは2019年12月1日の開通を予定している(写真-5)。
4. 渋谷入口(下り)(2019年12月19日開通)
首都高速3号渋谷線の渋谷駅東口付近に、郊外方向(東名高速方向)の渋谷入口(下り)を新設する(写真-6)。
これにより、渋谷駅周辺から首都高速湾岸線(以下、湾岸線)方面や埼玉方面へ向かう場合、都心環状線と中央環状線の2ルートから選択可能になり、渋谷から羽田空港までの所要時間は33分から27分へ6分短縮すると期待される。
また、これまで渋谷・六本木エリアから郊外方向へ向かう場合、渋谷駅周辺の主要渋滞区間を通って池尻入口を利用していた交通が本入口の利用により高速へのアクセス性が向上し、渋谷駅周辺の一般道路の混雑緩和に寄与することも期待される(図-4)。
5. 東品川桟橋・鮫洲埋立更新事業
首都高速1号羽田線(以下、羽田線)の東品川桟橋・鮫洲埋立部は、損傷の発生状況や長期的な安全性を確保する観点から大規模更新事業として造り替えをした箇所である。
海上部に建設された東品川桟橋は、橋桁と海水面との間が狭隘で、点検・補修が非常に困難であり、激しい腐食環境によりコンクリートはく離や鉄筋腐食などが多数発生している。
また、鮫洲埋立部は、現在では仮設構造として使用される鋼矢板を用いた埋立構造だが、過去には路面のひび割れや陥没などの重大な損傷が発生した。
そのため、本事業の着手前は鋼矢板の変状を抑制するための補修・補強を行ってきた(写真-7、8)。
本事業は、2016年2月から現場工事に着手し、交通影響を軽減するため、既存道路の直近にう回路を設置し、交通流を確保しながら施工を実施しており、東京2020オリンピック・パラリンピックまでに更新上り線を造り替え、暫定下り線として運用することを目指している。
これにより大会開催時には、羽田線の上り線がう回路を、下り線が更新後の将来上り線になる部分を通行させ、損傷の著しい既存の古い構造物は使用せずに、より安全・安心な道路を提供可能にしている。
また、本工事に伴い2016年6月から長期通行止めとなっていた湾岸線(東行)からの大井JCT(羽田線(上り)方向)は、この東品川桟橋・鮫洲埋立部の切り替えに先立ち、9月29日に通行止め解除となった。
なお、この再供用に合わせて湾岸線(東行)から中央環状線(外回り)への連結路を2車線化するなど、中央環状線をより使いやすくする改良を実施した(図-5)。
おわりに
近年の首都高速道路の建設・改築プロジェクトは、2015年の中央環状線の全線開通以降においても、中央環状線のう回・分散効果を最大限に発揮させるためのボトルネック対策、JCTの車線増設や新設などの中央環状線の機能強化を図る事業を継続してきた。
ボトルネック対策として、2018年2月に堀切小菅JCT間改良、同年3月に板橋熊野町JCT間改良がそれぞれ完成し、本稿にて紹介した小松川JCT、渋谷入口(下り)が開通することにより、2006年から進めてきた中央環状線機能強化事業がひとまず完了することとなる。
【出典】
積算資料2019年12月号
最終更新日:2024-09-10
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