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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 官民連携手法による歴史的建造物の再生について〜MIRAIZA OSAKA-JO(ミライザ大阪城)〜

 

はじめに

大阪市の中心部にある大阪城公園は,その大部分が我が国を代表する近世城郭として国の特別史跡に指定されており,都心にあって水と緑豊かな歴史公園として市民に親しまれている。また,本丸地区内にある大阪城天守閣は国内外から270万人を超える(平成29年度実績)入館者を有しており,大阪城公園は大阪を代表する観光名所でもある(図−1)。
 
その大阪城公園の本丸地区内にあり,大阪城天守閣の近くに位置する「MIRAIZA OSAKA-JO(ミライザ大阪城)」について紹介する。
 



図−1 大阪城天守閣と本丸地区現況平面図
 
 

1. MIRAIZA OSAKA-JOの沿革

MIRAIZA OSAKA-JOは,昭和6年(1931)に建設された旧第四師団司令部庁舎を便益施設としてリニューアルしたものである。
 
明治元年(1868)から第二次大戦が終結する昭和20年(1945)まで,大阪城一帯は陸軍の重要な軍事拠点であったが,旧第四師団司令部庁舎の建設は大阪市における昭和天皇即位の大礼記念事業として行われたもので,大阪市が大阪城天守閣の建設を含む大阪城公園を開設する条件として陸軍に建設を求められたものである。
 
建物自体は終戦まで軍の施設として使われた後,戦後は警察関係の庁舎として使用され,昭和35年(1960)から平成13年(2001)3月まで大阪市立博物館として40年間使われた(写真−1〜3)。平成13年に大阪歴史博物館にその用途を移して閉館した後は,その活用について検討されることはあったものの具体化することはなく,近代建築としての公開や映画等の撮影など,限定された利用があるのみで,16年間活用できていない状態であった。
 
その最大の要因は,建築物を再利用するには耐震改修や設備更新など多額の改修費が必要となることであった。
 






写真−1 旧第四師団司令部庁舎(昭和6年竣工時)外観と内部の様子(一階広間,廊下,貴賓室)(写真−1,2は清水建設(株)提供)
 
 

写真−2 自動車庫写真(後ろに建設中の大阪城天守閣が写る)




 

写真−3 改修前の庁舎




 

2. 大阪城公園パークマネジメント事業(PMO事業)の導入

大阪城公園の管理は平成26年(2014年)度までは公園内のいくつかの施設を除き大阪市が直接維持管理を行ってきたが,平成27年(2015)4月から公募で選定された民間事業者が大阪城公園全体を一体的に管理運営する「大阪城公園パークマネジメント事業(PMO事業)」を導入した。これは,「民が主役,行政はサポート役」との考え方のもと,世界が憧れる都市魅力を創造し,世界中から人,モノ,投資などを呼び込み「強い大阪」を実現することを目的として,平成24年(2012)12月に策定した「大阪都市魅力創造戦略」に基づき,民間事業者の柔軟かつ優れたアイディアや活力の導入により,大阪城公園の持続的な魅力向上を図るものである。
 
具体的には,民間事業者は,指定管理者として大阪城公園の管理運営を行うとともに,観光拠点である大阪城公園にふさわしいサービスの提供のために新たな施設の整備や既存の未利用施設の活用など魅力向上事業を自らの投資により実施する。その既存未利用施設の1つとして,旧第四師団司令部庁舎も活用することを必須条件とした。
 
なお,民間事業者が行う管理運営などの経費は大阪市からの指定管理代行料によらず,大阪城天守閣などの有料施設の使用料収入や事業収入で賄なっており,自立経営となっている。
 
民間業者の投資を引き出すため工夫した点としては,事業展開にかかるかなりの裁量を与え,事業期間も投資の回収期間を考慮して20年という長期の設定とすることで民間事業者へインセンティブを与えたことである(図−2)。
 

図−2 大阪城パークマネージメント事業の仕組み(2035年3月まで)




 
このPMO事業導入により,課題であった多額の費用の調達が可能となり,旧第四師団司令部庁舎の保存・活用事業が一気に動きだすこととなった。
 
 

3. 活用にあたっての方針と制約

活用に当たっては,耐震補強を行うとともに,意匠については可能な限り建物本来の姿を残すことを基本方針とし,建築史・文化財の専門家の意見を聴きながら,保存や改修の方法を決定していった。用途は,飲食・物販などの観光客も視野に入れた便益施設として活用することを前提に民間事業者に提案を求め,本市との協議を重ねて最終的なテナントや改修内容が決定された。
 
なお,本建物は,現在のところ建造物としては未指定であるが,大阪城の変遷を映す近代建築物として特別史跡を構成する重要な要素として位置付けられており,現状を変更するには文化財保護法に基づく文化庁の許可が必要であった。特に外観については原則保存で,慎重に検討しなければならなかった。
 
旧第四師団司令部庁舎の設計監理は第四師団経理部で,大阪市には竣工図面がなく,ようやく探すことができたのは,当時の施工業者が保管していた竣工写真のみであった(写真−4)。加えて,本丸地区は特別史跡の範囲内であるため,原則掘削ができない。そうした状況のなか,活用に向けた工事を実施することとなった。
 



写真−4 第四師団司令部庁舎の新築記念写真(清水建設(株)提供)
 

4. 建物の耐震改修について

耐震改修の方針としては,外観を変更できないこと,およびできる限り荷重をかけないために外壁内側において鉄骨ブレースを入れることを基本とした(写真−5)。既存柱の出寸法不足によりアンカー工法の基準本数を確保できなかったが,アンカーと接着を併用した接合方法(ハイブリッド工法)を採用した。また,文化財的価値を損なわないよう配慮した点として,軸耐力が不足する柱に対してはSRF工法を採用し,施工する柱本数を減らすとともに面取りを実施することなく,できるだけ現状のまま躯体を保存することに努めた(写真−6)。その他,在来工法による耐震壁の新設(写真−7)と柱際へのスリットも実施した。
 
写真−5 鉄骨ブレースの導入状況(左:改修前,右:改修後)



 
 
写真−6 SRF工法による改修状況(左:改修前,右:改修後)



 
 
写真−7 耐震壁の新設状況(左:改修前,右:改修後)



 
 

5. 内外装改修

戦火を免れたこの建物の建築様式は近世式古城風とされ,外壁にはスクラッチタイルや紫雲石,内装には当時の装飾が多く現在に残っており,それらの保存を原則として改修工事を行った。まず昭和6年の竣工当時の姿をいまに伝える外壁については,腰周りの石貼りの部分は洗浄を行ったのみである。浮きや割れが見られるスクラッチタイル貼りの部分は,全面的に洗浄を行うとともに,樹脂を注入して剥離防止を図り,欠落部分については新たにタイルを製作し貼り替えを行った。タイル製作にあたっては当時のスクラッチタイルのテクスチャーや色を復元するため試作を繰り返した。タイルの洗浄についても,種々の洗浄方法を現地にて実施し,有識者とともに検討した結果,薬品などは使用せず水のみによる高圧洗浄を実施することとした。最上部の人工石洗い出し塗りの部分は,剥落を防止したうえで美装した。砂壁状塗り,砂壁状塗り+塗装,骨材吹きで試行的に施工し,もっとも馴染みがよかった砂壁状の薄塗りを採用した。ただし,正面中央部エントランス上の外壁については,意匠上もっとも重要であることを鑑み,例外的に新たに全面吹き付けを行っている。
 
外装の中で最も大きな改変は窓の取り換えである。竣工時はスチール製の上げ下げ窓であったが,腐食が著しく開閉ができないものも多数あり再利用が困難であったため,違和感が出ないようスリム枠のアルミサッシに全数を取り換えた。ただし,オリジナルの形を残すため,建物北壁二階に一箇所だけ建設当時の窓枠を残している(写真−8)。
 

写真−8 
残置したオリジナルの窓
(2階真ん中の窓)




 
内装については戦後の用途変更によって改装が行われていたが,貴賓室,中央階段,および廊下のアーチなど,竣工時の姿を留めていた部分は変更を加えず美装化するのみとし,竣工時の姿を今に伝えている(写真−9〜11)。また,廊下のアーチの意匠を竣工当時に近い見え方となるよう設備配管や配線は廊下を縦断しないようルートを決めている。現在,建物竣工時の写真が残る個所には当時の写真を掲示しており,現状と対比できるようにしている。
 
 
写真−9 改修後の建物全景と夜の姿(外観)は竣工時の姿を損なわないよう洗浄等に留めている



 
写真−10 美装化した中央階段(左:改修前,右:改修後)



 
写真−11 美装化した廊下(左:改修前,右:改修後)



 
 
照明については,竣工時の照明は残存していなかったが,博物館時代の照明と思われる千成瓢箪をあしらった照明など特徴的なものは再利用したほか,竣工時の写真を参考に建物にマッチしたデザインとした。
 
 

6. 利用状況

現在の建物利用状況としては,一階に土産物などの物販店,軽食を提供する飲食店,観光にかかる幅広い情報提供を目指した総合案内所や大阪城の歴史と見所を紹介する無料の展示室などが入り,2・3階はレストランやパーティー会場となっている。
 
また,これまで利用実績がなかった屋上についても,防水を更新するとともにエレベーターを着床させ,季節限定のテラスダイニングとして営業している(写真−12)。屋上からは,大阪市内を一望できるうえ,大阪城天守閣を間近に見ながら食事ができると利用者から好評を得ている。
 
地階は侍体験施設(殺陣道体験)やイリュージョンミュージアムなどの体験施設が入っているほか,バックヤードに使用している。
 
写真−12 テラスダイニングとして活用する屋上(左:改修前,右:改修後)



 

おわりに

旧第四師団司令部庁舎を活用するには耐震改修や設備更新のための多額の事業費やテナント誘致などのノウハウが必要であり,本市が単独で行うには課題が多かった。今回,活用が実現したのは,大阪城公園全体を管理・運営する民間事業者に本事業も実施させることで民間事業者の投資を呼び込むとともに,民間事業者のノウハウを活用したことによるものである。これには,民間事業者との協議・調整が必要で,ときには関係者合意を得ることに難航することもあったものの,まさに官民連携手法による効果が発揮できたと言えるのではないだろうか。
 
「MIRAIZA OSAKA-JO」が建つ大阪城公園は各時代の文化財が重層的に累積して存在する特別史跡である。本建物は軍事拠点であった時代の大阪城の姿を留める建築物であるというだけでなく,大阪城公園の開設という大阪市の都市計画の歴史を示す文化財でもある。長期間にわたって,その時代の要請に応えつづけ,今また国内外からの多くの利用者を受け入れるとともに,建物の歴史にも興味をもって利用されている姿を見ると,本建物がまさに再利用されていると感じられる(写真−13)。
 

写真−13
無料展示室の様子(内外の観光客が多数見学に訪れる)




 



大阪市では,大阪城本丸地区において「豊臣石垣公開プロジェクト」にも取り組んでいる。現在見られる徳川大阪城の地下に埋められている豊臣石垣を公開する施設を整備する事業で,まさに大阪城に積み重なる歴史を体感できる事業だ。
詳細は… https://www.toyotomi-ishigaki.com/


 
 

大阪市 経済戦略局 観光部 観光課 集客拠点担当 課長代理 阪本 恵子

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年11月号



 

 

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