建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 火薬類を用いた岩石破砕工法の現状と今後の課題について

 

はじめに

岩石およびコンクリートなどの構造材料を最も効率的に破壊するためには,最適な破砕工法を選択する必要がある。特に,岩石などの自然物を破砕する場合は,岩石の強度などの物性と亀裂・節理などの性状を的確に判断することが重要となる。岩石を効率的に破砕する工法の一つに発破工法がある。発破工法は,火薬類の化学反応で発生する衝撃圧と膨張ガスで岩石を破砕する工法であるが,火薬類の爆発現象で発生する衝撃圧は,火薬類の燃焼速度の二乗に比例することが知られている。このため,高速度で燃焼する爆薬ほど高い圧力が発生する。通常の爆薬の燃焼速度は,2,000m/s〜8,000m/sに達し,燃焼速度は音速を超えるため,爆轟反応となる。産業用爆薬は,5,000m/s程度であり,さらに高速で燃焼する高性能爆薬は,産業用には適用していない。現在,産業用として広く利用されているエマルション爆薬で約5GPa程度になる。これだけの超高圧では,全ての岩石を破砕することが可能であるが,非常に短時間(数μ秒程度)の作用であり,破砕される領域は,爆薬近傍に限定される。爆薬近傍の外側では,衝撃圧が急激に減衰し,弾性的な破砕状態となると推定され,応力で伝搬と岩石の状態で亀裂が発生し,破壊が進展すると考えられている。特に,岩石の破砕では,岩石の引張強度が大きな影響を与えていると考えられている。また,発生した衝撃圧の後には,爆轟生成ガスによる圧力が作用して破砕現象を助長する。このため,岩石強度の高い硬岩には,爆轟圧の高い爆薬が破砕に適し,岩石強度の低い軟岩には,爆轟生成ガスの多い爆薬が適しているといわれている。また,高性能爆薬は,製造工程から高価格な爆薬となり,鉱山・土木分野で岩石破砕に使用される事例は少ない。産業用として主に使用されているANFO爆薬とエマルション爆薬は,硝酸アンモニウムを主原料とする爆薬で比較的安価に製造することが可能である。実際にANFO爆薬が爆轟している状況を高速度カメラで撮影した画像を写真−1に示す。この写真は,ANFO爆薬の爆轟状態を観察するために透明なPMMA管の中にANFO爆薬を充填して高速度カメラで撮影しており,右端からエマルション爆薬をブースターとして起爆している。写真からANFO爆薬の反応帯を形成し,これが発光し移動する様子と爆轟背面には爆轟生成ガスの膨張が観察できた。残念ながら,ニトログリセリンを主成分とするダイナマイトは,2016年3月で国内での生産は中止された。ここでは,現在の岩石発破工法の現状と今後の課題について簡単に説明する。
 
写真−1 ANFO爆薬の爆轟状況


  • (1)t=20μsec

  • (2)t=70μsec

  • (3)t=110μsec



 
 

1. 火薬類による岩石破砕工法の近年の動向について

現在,火薬類を用いて岩石を破砕する発破工法は,土木・鉱山分野において広く利用されている。これは,発破工法に多くの利点があるためであるが,周辺環境への問題や使用制限などの問題もあり,現在では発破工法以外にも実用化されている手法も増えてきた。
 
発破工法には,トンネル掘進に代表される地下での発破と大規模鉱山での明かり発破に大別できる。ここでは,近年の岩石破砕技術の動向について述べる。
 
 

1-1 発破工法の利点と問題点について

発破作業は,岩盤に穿孔して爆薬を内部で爆発させて岩石を破砕する作業が主であり,大型の掘削重機や破砕重機を必要としない。また,比較的短期間で対象物を破砕することが可能であり,最も効率な岩石破砕工法の一つである。さらに,岩石破砕時に発生するCO2排出量をLCA的手法で比較すると機械掘削工法と比較しても低いレベルである。特に,硬岩を破砕する場合は,その差が顕著になる。トンネル掘削において,硬岩に対し発破工法で掘削する場合が,最も環境にやさしい方法となる。また,保安面からも火薬類自体は非常に安全であり,使用方法などに間違いがなければ爆発事故は起こらない。現在,ダイナマイトの生産は中止され,より取り扱いが安全なエマルション爆薬が主流となっている。しかしながら,岩石の破砕に火薬類の高速燃焼(爆轟)を利用するため高圧の衝撃圧および膨張ガスが発生し,これが原因となり振動・騒音が問題となることもある。また,瞬時に岩石が破砕されるため,破砕物の一部が高速の飛散物となり,飛石災害の原因ともなる。特に,火薬類消費中事故の7割以上は飛石によるため飛石発生を防止することで事故の軽減となる。さらに,火薬類は,火薬類取締法の適用を受けているため厳しい使用制限があり,一般的には簡単に使用できないないのも現状である。火薬類には,簡単に岩石を破砕することが可能であるなど,優れた利点があるものの,広く利用されるためには,さらなる技術開発が必要である。現在,構造物破砕工法としては,グラム単位の少量爆薬を用いるミニブラスティン工法が注目されており,実用化されている。この工法の,使用火薬類はグラム単位の少量であり,適用除外などの何らかの規制緩和が必要であると思われる。
 
 

1-2 岩石発破工法の現状

発破による岩石の破砕工法には,主に土木現場で用いられるトンネル掘進工法と大規模鉱山などで使用されるベンチ発破工法がある。トンネル発破工法は,山岳に道路・鉄道などのトンネルを掘進する工法で,1回の発破作業で2.5mから10m程度を掘進でき,主に地下で実施される。トンネル発破の状況を写真−2に示す。写真は,発破前の装薬作業と発破後の切羽の状況である。これを繰り返して掘進する。多くの山岳トンネルでは発破工法が使用されているが,これは岩石強度が高く,機械による掘削が困難なためであるが,近年,機械工法の進歩によって,山岳トンネルにおいてもトンネルボーリングマシーンの導入が進んでいる。硬い岩石でも高性能な掘削機械では,掘進は可能であるものの,岩石を破砕するために必要なエネルギーが膨大で,省エネルギーの点からも問題がある。また,機械工法と発破工法の両社の利点を利用したハイブリッド型のトンネル掘進工法の開発も進んでいる。例えば,TBM導坑先進工法は,機械工法と発破工法の利点を生かした工法の一つである。今後は,発破工法と機械工法の利点を生かした工法の開発が期待される。また,発破工法の機械化も進んでおり,既に,自動穿孔,自動装てんは実用化レベルまで達している。
 
写真−2 トンネル発破の状況


  • (1)発破前の装薬作業

  • (2)発破後の状況



 
トンネル掘削現場で使用される火薬類には主にエマルション爆薬等の産業爆薬が使用されていたが,ANFO爆薬が導入されている実例もある。ANFO爆薬は,安価であり経費削減が期待できるが,発生する生成ガスに有毒成分が含まれ,トンネル内のセメントと反応して有害なアンモニアガスを発生させるため,通気を十分に確保するなど使用する場合は,十分な注意が必要である。またアンモニアガスの発生を抑制する耐アンモニア用のANFO爆薬も開発された。
 
ベンチ発破工法は,岩石を階段状に採掘する工法であり,国内の多くの砕石場や石灰石鉱山等の露天掘採掘で採用されている工法である。ベンチ発破工法の利点は,平地での作業が可能であり,落石等の心配がなく,単純な作業である点である。また,各種の大型機械が導入できるため,効率化が可能である。また明かり発破であるため,岩石の破壊状況等を確認できるなどの多くの利点がある。ベンチ発破工法は,大規模な採掘には適しているが,小規模発破工法への適用は困難である。現在,ベンチ発破工法で使用される火薬類は,主にANFO爆薬である。これは安価なため採掘コストの削減に貢献している。また,ANFO爆薬を現場で製造するサイトミキシングも実用化されいる。しかし,ANFO爆薬は非理想状態の爆薬であり,一定量の爆薬量がないと十分な爆轟反応を示せず,その性能を十分に発揮できない。また,電気雷管1本では起爆することができず,エマルション爆薬等のブースターが必要となる。このため,大規模な採掘法で,大薬量を使用することから適用箇所が限定され,振動・騒音・飛石等の問題が発生することがある。現在,ベンチ発破現場が民家や市街地に接近する場合における振動・騒音・飛石等の制御技術の開発が望まれている。ベンチ発破の状況を写真−3に示す。この写真は,ベンチ発破で発破破砕の状況を常速度ビデオで撮影したもので,明かり発破であり,発破による破壊状況を目視することが可能である。写真−4には,発破による岩石の破砕状況を示す。
 

写真−3 ベンチ発破の状況


  • (1)起爆前

  • (2)起爆後約1秒後



  • (3) 起爆後約1.5秒後

  • (4) 起爆後約2.0秒後



 

写真−4 破砕終了後のベンチ発破の状況




 
発破振動・騒音を軽減する様々な手法が,トンネル掘進現場でも検討されている。その一つが,従来の電気雷管に電子回路を組み込んだ電子雷管を使用する発破方法である。これは,起爆秒時をミリ秒単位で制御することで,波動の干渉を利用して振動・騒音を抑制することが可能になる。また,トンネル開口部には,防音扉が設置されていることが多い。
 
その他には,火薬類取締法では火薬類に指定されていない化学物質である非火薬型の破砕剤を使用する工法や高電圧による放電エネルギーを岩盤破砕へ適用する放電破砕技術が実用化されている。前者には,ガンサイザー,ロックラック等があり,構造物の解体現場や都市部では広く利用されている。しかし,これらは法律的には火薬類ではないが,激しい燃焼反応(テルミット反応等)を示すことが知られている。この化学反応は,爆轟現象ではないため,高い衝撃圧で岩石を破砕するものではなく,発生する高熱と生成ガスの圧力で岩石を破砕する。このため,岩石内で十分な圧力を発生させ,岩石の破砕現象が開始される時間まで圧力を保持する爆破孔内での圧力保持が重要となり,岩石破砕では適用できる岩石が限定される。放電破砕技術は,コンデンサーに蓄えた電力エネルギーを一気に放出する時の爆発現象を利用する破砕工法である。放電爆発が局所であることから岩石内では,化学物質の反応を利用して膨張ガスの圧力発生が重要になる。本工法は,コンデンサー等の重量物が問題となっていたが,近年は開発企業の努力で,放電破砕装置の大幅な軽量化が進み,軽トラック1台で運搬可能となったことから,その適用範囲が土木工事現場では広くなっている。また,近年の熊本地震においては,災害現場で人命救助用の岩石破砕法として放電破砕技術が用いられたのは記憶に新しいところである。
 
 

2. 岩石破砕技術の今後の課題について

岩石を破砕する目的は,主に二つに分かれる。一つは,岩石等の障害物の除去であり,これはトンネルを岩盤内に作成する場合に,障害物である岩石を除去することで,空間を設けるものである。また,地上部でも不要な岩盤を除去することもある。もう一つは,鉱山での鉱石の採掘,採石場での骨材の採掘等である。前者は,対象物を破砕し除去することが目的であり,破砕物の利用はないが,後者は,破砕物自体に価値があり,採掘後の利用のため,破砕される大きさなども重要になる。トンネル掘削の場合は,掘削した空間を長期利用することが前提であり,岩石掘削による周辺地山への影響を最小限にする必要がある。最近ではスムースブラスティング工法等の制御発破工法が開発されるなど,火薬類を用いた発破工法が岩石を最も効率的に破砕する工法の一つであることは明らかである。しかし,国内の土木工事では発破工法は広く利用されていないのも現実である。これは,発破工法に関する問題が十分に解決されていないことにもよる。破砕対象の破壊特性を十分に解明し,制御することが重要である。また,発破作業に伴う災害事故や火薬類に関する不安,法律的な制限を受けるなどの問題もある。現在,岩石破砕技術では,火薬類を使用しない破砕工法の実用化も進んでいるが,局所的な使用に限られており,大規模破砕技術としては,依然として発破工法は有望である。自然物である岩石破砕でもAI技術の導入と装填作業等の自動化が進むことで安全性の確保と効率化が進むことが期待できるが,実用化にあたっては法令の規制緩和を含めて解決すべき課題が多いと思われる。
 
 

おわりに

2015年11月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)では,低炭素社会の実現に向けたCO2削減目標を定めた。日本政府も目標値を掲げて低炭素社会の実現に向けて取り組みを進めている。また,SDGs(Sustainable Development Goals)では,持続成長可能な社会の実現に向けた国際的な目標が示されている。このような世界的な状況の中で,岩石を破砕する作業は重要であり,より低炭素で地球環境にやさしい破砕法を開発することが求められており,火薬類を用いた発破工法は有力な工法の一つと考えられる。
 
 
 

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 研究部門長 緒方 雄二

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年11月号



 

 

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