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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 平成30年7月豪雨災害(倉敷市真備町)における快適トイレについて

 

はじめに

国土交通省では平成28(2016)年10月より,直轄工事において設置する仮設トイレについて,洋式で水洗機能(簡易水洗含む)を有し,臭気対策がなされた構造になっている「快適トイレ」を標準とし,建設現場における職場環境の改善に取り組んでいる。
 
快適トイレの導入にあたっては,建設現場の環境改善が第一の目的であったが,災害時の避難所のトイレ環境が改善できないのかという声があがっていたこともあり,建設現場の仮設トイレが改善され,そうした仮設トイレが市場に出回れば,避難所の仮設トイレ環境も変わるのではないかということも期待していた。
 
快適トイレの本格導入から3年が経過したが,導入当初は,トイレメーカーやレンタル会社の供給が追い付かず,建設業者が設置を希望したとしても,製品不足により設置が困難な現場が数多く生じていた。今では国土交通省発注工事では標準的に快適トイレが設置されており,仮設トイレメーカーにおいても様々な種類の快適トイレが製造・販売されている。
 
本稿では災害時の復旧現場および避難所における仮設トイレの現状について,平成30年7月豪雨災害により甚大な被害を受けた倉敷市真備町の事例を報告する。
 
 

1. 平成30年7月豪雨災害について

平成30(2018)年7月5日から7日にかけて梅雨前線が本州に停滞し,この前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み,前線の活動が活発に続いたため,高梁川流域でも断続的に非常に激しい雨が降り,多いところでは降り始めから累加雨量が400mmを超過した。この降雨により高梁川および小田川の設置した複数の水位観測所で観測史上最高水位を記録した。
 
小田川およびその支川である末政川,高馬川,真谷川において,本川と支川の水位が高くなる時間が重なって,支川の洪水が流れにくくなる,いわゆる「バックウォーター現象」に伴う越水等により8箇所で堤防決壊が生じた。
 
この災害により,倉敷市真備町では約1,200haが浸水し,死者51名(災害関連死除く),全壊棟数約4,600棟に上るなど甚大な被害が生じた(写真−1、図−1)。
 

写真−1 倉敷市真備町の浸水状況(平成30年7月8日撮影)


 

図−1 倉敷市真備町の浸水エリア



 

2. 小田川の緊急排水および緊急復旧工事と仮設トイレについて

2-1 緊急排水および緊急復旧工事について

倉敷市真備町で大規模な浸水被害が生じたことから,7月7日5時に倉敷市長から緊急排水支援の要請があり,国土交通省では排水ポンプ車 23台,照明車 11台を派遣し,捜索活動機関(自衛隊・警察・消防)と調整を行いながら,8日13時10分より排水作業を開始し,発災から4日後の11日までに宅地・生活道路の浸水が概ね解消された。
 
また,決壊した箇所のうち,決壊幅100mと最も規模が大きかった小田川左岸3k400付近では,7日22時から緊急復旧工事に着手し,決壊の拡大を防ぐため決壊点下流側堤防に,欠口工として袋詰玉石を翌8日朝までに施工した。その後,決壊箇所からの氾濫水の河川への流出が少なくなった9日以降,本格的に24時間体制で荒締切盛土を施工し(写真−2),引き続き堤内地側に応急復旧堤防である鋼矢板二重締切堤防を施工し,発災から2週間後の21日に完了した(写真−3)。他の2箇所についても発災から2週間以内に緊急復旧を終えることができた。
 

写真−2 荒締切盛土夜間施工状況(平成30年7月13日撮影)


 

写真−3 完成した応急復旧堤防(平成30年7月21日撮影)



2-2 工事現場における仮設トイレについて

これらの工事を実施するにあたって設置した仮設トイレは,快適トイレとして備える目隠し版等の付属品は設置していないが,快適トイレに求める標準仕様を満たしたトイレを設置した。被災直後で,地域の方々や多くのボランティアが工事現場周辺でも活動されていたが,近隣にトイレがなかったことから,多数の方が工事現場に設置したトイレを利用され,感謝の言葉をいただいた。家のトイレや公衆トイレが利用できない中,建設現場のトイレを地域のトイレとして活用することができた。
 
 
 

3. 倉敷市真備町避難所における仮設トイレについて

避難所における仮設トイレは,政府がプッシュ型支援で洋式・新品(簡易水洗式)150棟,和式・中古品(簡易水洗式)50棟を調達し,倉敷市が災害協定を締結している岡山県建設業協会倉敷支部に依頼し,設置した(写真−4)。調達にあたっては経済産業省から日本トイレ協会および日本トイレ研究所傘下企業に対し,物資調達可能量調査を依頼し,その結果を踏まえて個別に調達を依頼している。
 
避難所の生活環境については,平成30年7月豪雨災害対応検証報告書(倉敷市,平成31年4月)において課題と改善策が示されているが,トイレ環境については触れられていないことから,大きな課題は顕在化しなかったと考える。一方で,避難をした方々に話を聞くと,トイレの設置は迅速に行われたし,数も足りていたが,男女別に設置されておらず,設置にあたっての工夫が必要だと感じた。という声も聞かれた。また,車椅子利用者等が利用できるトイレに課題があったとの指摘もあった。
 
今後は,設置者のみならず,避難所運営にあたる行政職員も含めて,設置場所などのソフト面も含めて質の高い仮設トイレの活用がさらに求められていると考える。
 

写真−4 倉敷市真備町の小学校に設置された仮設トイレ



さいごに

大手仮設トイレレンタル業者の倉敷営業所に確認したところ,現在保有する仮設トイレのうち,1割程度が快適トイレで,9割程度が従来型の和式トイレであり,快適トイレは国土交通省発注工事を中心に活用され,それ以外は和式トイレを中心に活用されているとのことであった。
 
国直轄工事で使用する仮設トイレが全体の1割程度ではないかと言われており,国直轄工事の取組みのみで導入できる快適トイレはそろそろ飽和状態に達してきた可能性がある。
 
平成30年7月豪雨での仮設トイレの設置状況をみると,快適トイレの仕様を満たしたトイレも数多く設置されてきており,当初の目的は一定程度果たせたのではないかと感じる。ただし,普及している多くの快適トイレは最低限の仕様を満足したものであり,設置箇所の面積に余裕がある工事現場においては,より広いトイレなど,さらに快適さを追求したトイレが広まることを期待したい。
 
災害時の活用にあたっては,車椅子対応など様々なトイレが被災直後から数多く活用できることが望ましいため,平常時から建設業界も含め,様々な業界で,誰もが利用しやすい仮設トイレをさらに普及させる必要がある。また,ハード面は改善傾向にあるが,設置の仕方などソフト面において今後改善すべき点は沢山ある。避難所における仮設トイレの設置に関するマニュアルや好事例集等が整備され,災害時のトイレ環境がより快適になることを期待している。
 
 
 

国土交通省 中国地方整備局 高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所 所長 桝谷 有吾

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年12月号



 
 

 

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