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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 地下街における安全対策の取組〜地下街防災推進事業と地下街の取組事例〜

 

はじめに

一般的に鉄道駅等と接続している地下空間が「地下街」であると認識している方は少なくないと考えられるが,国土交通省では地下街を「公共の用に供される地下歩道(地下駅の改札口外の通路,コンコース等を含む)と当該地下歩道に面して設けられる店舗,事務所その他これらに類する施設とが一体となった地下施設(地下駐車場が併設されている場合には,当該地下駐車場を含む。)であって,公共の用に供されている道路又は駅前広場の区域に係るもの」と定義している。
 
一方,公共用地内の公共地下歩道に面して,民有地内に店舗等を設ける形態があるが,そのような地下街類似の形態はいわゆる「準地下街」とし,店舗や通路等の両方が民有地の地下にあるものは「地下商店」とそれぞれ定義している(図−1)。
 

図−1 地下街の定義




 

1. 地下街の役割

図−2 都道府県別地下街箇所数:79箇所


地下街は全国に79箇所存在し(図−2)その多くは,来街者(地下通路の通行者)が行き交う周辺ビルとの接続により,ターミナル駅周辺の地下歩行者ネットワークの一部として,
 
 ①安全,快適(連続歩行可能,耐候性)な歩行者ネットワーク
 ②にぎわいと回遊性の高いネットワーク
 ③地上道路交通の錯綜軽減,地上都市景観の向上等に寄与
 ④地下街沿道の都市開発促進,接続建物の価値向上
 ⑤地震,台風時等の一時避難機能(帰宅困難者)

の5つの役割を担っている。また,来街者数が1日あたり10万人以上となる地下街も多数存在している等,民間が所有・管理する都市の公共的な施設として欠かせないものとなっている(図−3)。
 

図−3 1日の来街者数と接続箇所数(H31.3国土交通省都市局調べ(データのある地下街のみ対象))




 

2. 地下街の老朽化

多くの地下街は高度経済成長期に道路や駅前広場等の基盤整備にあわせて,公共用通路等と店舗との一体的な空間として整備されており,開設から30年以上経過している地下街が全体の約8割以上を占めている(図−4)。特にターミナル駅周辺の地下街等では現在でも多くの来街者がいる一方で,整備から数十年が経過した施設は老朽化が進み,大規模災害発生時における来街者の安全確保への早急な対応が求められる。
 

図−4 地下街の開設経過年別(H31.3 国土交通省都市局調べ)




 

3. 地下街防災推進事業の経緯と近年の動向

3-1 地下街の安心避難対策ガイドライン(平成26年4月25日公表)

国土交通省では,大規模地震時の公共用通路等公共的施設を対象として,地下街が有する交通施設としての都市機能を継続的に確保していくために必要な耐震診断・補強の方法や非構造部材の点検要領,さまざまな状況を想定した避難計画検討の方法等について,技術的な助言として「地下街の安心避難対策ガイドライン」(以下,ガイドライン)を策定した。
 

3-2 ガイドラインの位置付け

地下街は,全国の拠点駅の周辺等において,都市内の重要な地下歩行者ネットワークとして,公共的な空間を形成している。
 
また,大規模地震発生時には,避難の際に,地上への出入口や階段等に殺到することによる混乱,転倒・負傷等の事態が生じることが懸念され,今後予見されている大規模地震等への対応を早期に進めることも必要となっている。
 
ガイドラインは,大規模地震時の公共用通路等を対象として,地下街が有する交通施設としての都市機能を継続的に確保していくために必要な耐震対策等地下施設の設備・更新にあたっての必要な考え方を,技術的な助言としてとりまとめている。
 

3-3 安心避難対策が求められる背景

●現行法における地下街の関係規定
地下街における安全,衛生,管理等については,「地下街に関する基本方針について」(昭和49年6月28日策定)の中で規定されていたが,平成13年に基本方針が廃止され,現在は,建築基準法,消防法,道路法等の各法が地下街について個別に適用されている状況である。
 
 

●大規模地震における地下街の被害(首都直下および南海巨大トラフ地震での被害想定(被害の様相))
平成24年8月および平成25年3月に南海トラフ巨大地震の被害想定が,また平成25年12月には首都直下地震の被害想定が公表された。
 
これらの被害想定では,これまで言われてきた
「構造物の被害」や「利用者等の混乱,パニック」に加え,「揺れによる非構造部材の落下」や「非構造部材の被害による人的被害」が挙げられている(図−5)。
 

図−5 首都直下地震の被害想定(抜粋)


出典:首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)/中央防
災会議,首都直下地震対策検討ワーキンググループ

3-4 地下街防災推進事業の創設

前述の背景から,国土交通省では,平成26年度より地下街防災推進事業を創設し,「地下街の安心避難対策ガイドライン」を基に,地下街管理者に対して,天井板等の安全点検や,周辺の鉄道駅等との連携のもと,地下街の防災対策のための計画の策定を支援するとともに,計画に基づく避難通路や地下街施設の改修等を支援することで,地下街の防災対策の充実を図っているところである(図−6
 

図−6 地下街防災推進事業の概要




 

4. 地下街防災推進事業の変遷

平成26年度に創設された本事業は,その時々の要請に応じて対応してきた。平成27年度から大規模ターミナル等で連担する地下街管理会社,関連する地下通路管理者,地方公共団体等で構成される協議会を補助対象とし,平成28年度からは,地下街の公共的通路について,浸水被害を軽減し災害発生後の早期復旧を可能とするため,給排気設備,排煙設備等地上開口部を持つ設備の浸水防止対策や,非常用発電機の高所への整備等の支援も行っている。加えて,令和2年度からは,通路等公共的空間の防災性向上に資する施設の整備と併せて実施する漏水対策を補助対象として追加することとなっている。
 
こうした取組により,地下街の防災対策を推進し,安全を確保することで,災害に強い都市の形成を目指している。
 
 

5. 全国地下街における安全な避難等に関する緊急対策

政府では,国民の生命を守り,電力や空港,鉄道等,国民経済・生活を支える重要インフラが,あらゆる災害に際してその機能を発揮できるよう, 全国で132項目の点検を実施し,平成30年11月27日に開催した「重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議」において, 点検結果と対応方策をとりまとめ,公表した。
 
全国の地下街についても点検を行い,「利用者等の安全な避難に支障が生じる恐れのある箇所」,「帰宅困難者受入施設として適切な機能を発揮できない恐れのある箇所」,「複数の地下街等で構成される地域において連携して実施すべき防災対策(避難誘導対策等)が不十分である箇所」の約10ヵ所について,避難誘導看板や止水板の設置,耐震改修,非常用発電設備,備蓄倉庫の整備等の緊急対策を3か年(2018〜2020年度)で集中的に実施している。
 
 

6. 地下街防災推進事業 制度の解説と地下街の取組事例(令和元年7月公表)

6-1 概要

地下街防災推進事業の更なる活用を目的として制度内容の解説および地下街の取組事例や今後の取組アイディアを事例集としてとりまとめ,公表した。
 
なお,紹介している取組事例は,地下街防災推進事業の補助を受けているもの,受けていないもの(地下街の単費による事業等)の双方が含まれている。本事例集では,防災性の向上に資する地下街独自の取組を共有し,他の地下街の参考とすることを一つの目的として,発展的な取組事例やまだ実現に至っていない取組アイディアについても取り上げた。
 
今後,継続的に精査し,更新することを予定しており,各地下街に対して新たな取組事例の情報提供を依頼している。
 
 

6-2 地下街の取組事例

近年,地下街において取り組まれている事例をいくつか紹介する。
 

●高輝度蓄光材による避難誘導補助設備
高輝度蓄光材(JIS規格 JC級(高輝度)もしくは JIS規格 JD級(最上級)を満たすもので脱塩ビ製品であること)は,避難の際に避難誘導を補助する機能があり,地下街防災推進事業において,設備の整備に要する費用を補助対象としている。地下街の電気が消えて非常照明だけになった場合でも,階段や電気・機械室等に高輝度蓄光材を使用することで避難誘導を補助できるようになっている(写真−1)。
 

写真−1 階段に新たに設置された高輝度蓄光材(川崎アゼリア地下街)



●避難検討結果の可視化
避難検討の目的は,不特定多数が利用する地下街で災害発生時を想定した避難計算を行い,著しく避難に時間のかかる階段がないか,大きな滞留が生じないか等を確認して必要に応じて改善方法を検討することである。避難者の動き一つ一つを現した可視化の方法は,平面図による2次元表現と立面図による3次元表現がある。地下街を利用する多くの来街者が,災害時には一番近い地上出入口を目指して避難を開始するため,特定の階段箇所周辺に殺到する。その状況を2次元や3次元モデルを利用して可視化することで,避難状況が分かりやすくなる(図−7,8)。
 
 
図−7 避難検討結果の可視化2次元モデル(左:避難開始前 右:避難開始2分後)(神戸地下街)

 
図−8 避難検討結果の可視化3次元モデル(左:地下街全体 右:階段付近に着目)(エスカ地下街)


 

●災害時の情報発信設備
今後多くの国や地域から観光客等が訪れることが予測され,地下街も例外ではないことから,避難や災害情報伝達の方法(スピーカーや館内放送)を多言語対応化する必要がある。例えば,災害発生時に防災センターにて多言語放送に切り替えることのできる放送装置を設置している事例がある(写真−2)。
 
 
写真−2 非常放送の多言語対応(ユニモール地下街)


 

7. 地下街防災対策の今後の取組

今後30年以内に70%の確率で起こると言われている首都直下地震や気候変動に伴う集中豪雨等,日本においては,いつ,どこで災害が発生してもおかしくない状況である。地下街防災推進事業については,防災上対策の緊急性が高い地下街への重点化について検討する等,不断の見直しを行いながら,より高次の安全確保を図りたいと考えている。
 
 

おわりに

現在,全国の各地下街においては,地震や火災,津波,洪水等への対策等が進められているが,地下街に対する新たな社会的期待から,災害時の帰宅困難者対策や避難誘導対策等に関して,周辺施設との連携強化が課題となる。
 
時代の要請に応え,地下街を「活性化」するため,周辺施設との連携強化を図り,防災対策強化と常時のにぎわい形成を両立して推し進めることを目的に,ガイドラインや事例集を活用し,全国の地下街等において計画的に,また着実に取組が進められることを期待する。

 
 

国土交通省 都市局 街路交通施設課

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年3月号


 

 

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