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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 共同住宅における水洗トイレのレジリエンスを考える

1.住まい方の変化

私たちの住まい方は社会の変化に伴って変わっていきます。
住宅事情に関して「平成30 年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」によると、共同住宅は昭和63 年に1,141 万戸、平成30年に2,334 万戸となり、この30 年間で2 倍以上増加しています。
 
東京における共同住宅が占める割合は71.0%となり、全国で最も高くなっています。
また「15階建以上」の住宅数は、東京都が25 万戸と最も多く、大阪府20 万戸、兵庫県7 万戸、神奈川県 6 万戸、福岡県と愛知県が各5 万戸と続きます。
なお、東京都都市整備局の「建築統計年報(平成22 年、令和2 年)」によると、高さ45m を超える高層建築物数は3,558 棟で区部に集中しており、 10 年前と比較すると143.4%となり、6 階以上の共同住宅居住者数は約3 割増加しました。
 
現在、コロナ禍であることも踏まえ、災害時は避難所への集合避難から自宅や車中、親戚・知人宅などに分散して避難することが求められています。
建物の耐震化は進んでいるため建物が安全であればそこで避難生活を送ることが考えられますが、ここで必要になるのがトイレ機能です。
建物が被災していなくても、トイレが使用できなければそこで生活することはできません。
 
そこで本稿では、令和4 年5 月に東京都防災会議が発表した「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」を参考に、災害時におけるトイレ対策の現状と課題について整理します。
なかでも共同住宅に着目し、水洗トイレのレジリエンスを高めることの重要性について提案します。
 

図-1 住宅の建て方別住宅数の推移

図-1 住宅の建て方別住宅数の推移
出典:「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」総務省統計局


 

 
 

2.トイレ問題がもたらす健康被害

これまで大きな災害が発生した際には、必ずと言っていいほど深刻なトイレ問題が起きています。災害により水洗トイレが使えなくなったとしても、生きている限り排せつは待ったなしです。
ほとんど報道されていませんが、被災地の避難所や施設等のトイレは大小便で満杯になり、非常に不衛生な状態になりました。
 
日本トイレ研究所(以下、当研究所)は、2022年9 月1 日にウェブサイトで「アーカイブ 災害時のトイレ事情」(https://www.toilet.or.jp/toilet- guide/example/)を公開しました。
これまでの災害時におけるトイレの写真やトイレ問題の概要を確認できるようにしています。
災害時のトイレ問題を教訓として次の備えに活かすことが目的です。
 
トイレはすべての人が利用し、しかもトイレを使うときは、ドアノブや鍵、洗浄ボタン、トイレットペーパーホルダーなど、同じ部分に手を触れます。
また、床が汚れていれば、その汚れを履物であちこちに運ぶことになります。
そのため不衛生なトイレ環境は、集団感染のリスクとなることが危惧されます。
 
水洗トイレが使えなくなることによる主な健康被害には、もう1 つあります。
災害時、行政は災害用トイレを手配しますが、すぐには配備されませんし、配備することがゴールではありません。
子どもから高齢者まで、安心して使える環境を整えることが必要です。
しかし、被災者の方々に話を聞いてみると、くさい、暗い、怖い、汚い、トイレまで遠い、寒い(暑い)、混雑している、段差がある、しゃがめない等、さまざまな困りごとがあることが分かります。
どれか一つでも該当すると、できるだけトイレに行かなくて済むように水分摂取を控えてしまいます。
新潟県中越地震の際、小千谷市では33.3%もの人が「トイレが心配で、水を飲むのを控えた」と回答しました(平成 16 年新潟県中越地震に関する住民アンケート調査 調査結果)。
そうすることで脱水症状になり、エコノミークラス症候群等で死に至ることもあります。
「循環器内科医のための災害時医療ハンドブック」では「トイレの我慢」を深部静脈血栓症の危険因子として指摘しています。
 
快適で安心できるトイレ環境を確保することは贅沢ではありません。
トイレ問題は命と尊厳にかかわる問題として取り組むべきです。
 

写真-1 災害時のトイレ事情

写真-1 災害時のトイレ事情
提供:日本トイレ研究所、右下は株式会社総合サービス提供

 

表-1 東日本大震災の宮城県内避難所のDVT(深部静脈血栓症)

表-1 東日本大震災の宮城県内避難所のDVT(深部静脈血栓症)
(宮城県立循環器・呼吸器病センター循環器内科 柴田宗一氏ほか)


出典:「循環器内科医のための災害時医療ハンドブック」日本心臓病学会編集
URL:http://www.jcc.gr.jp/info-gakkai/dinfo/kmedstaff.html
 
 

3.首都直下地震のライフラインの被害想定

水洗トイレを使用するには、電気、水道、下水道・浄化槽のすべての施設・設備が機能する必要があります。私たちが目にしている部分は便器ですが、それはほんの一部です。水洗トイレはシステムであると理解すべきです。
 
以下に東京都防災会議が取りまとめた「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」をもとに、首都直下地震による都内のライフラインの被害想定を整理します。
 

3-1 電力

停電率は平均11.9%で、延焼による停電を除いた配電設備被害による復旧完了は約4 日後になると想定されています。
ただし、留意点として以下が指摘されています。
 
「拠点的な施設・機能(発電所、変電所および基幹送電網等)の被災は、定量評価結果には含まれていないため、被災状況により、被害が大幅に増加し、復旧期間が長期化する可能性がある点に留意する必要がある。」
 

3-2 水道

断水率は都心南部直下地震で最大となり、平均26.4%(区部31.4%)で、1 週間後でも16.8%です。
復旧が概ね完了するのは、約17 日後になると想定されています。
停電と同様に、留意点として以下が指摘されています。
 
「水道管路以外の施設(浄水施設等)の被災や、受水槽や給水管など利用者の給水設備の被災等は、定量評価結果には含まれていないため、被災状況により、被害が大幅に増加し、復旧期間が長期化する可能性がある点に留意する必要がある。」
 

3-3 下水道

下水道における管きょ被害率は平均4.3%で、復旧完了は約21 日後と想定されています。
停電や断水と同様に、留意点として以下が指摘されています。
 
「管きょ以外の施設(水再生センターやポンプ所等)の被災は、定量評価結果には含まれていないため、被災状況により、被害が大幅に増加し、復旧期間が長期化する可能性がある点に留意する必要がある。」

このように首都直下地震での復旧見通しの想定は、電力約4 日後、水道約17 日後、下水道約21日後となっていますが、阪神・淡路大震災では、仮復旧までに電力約1 週間、水道約1 カ月、下水道約3 カ月を要しました。
東京都が定量評価できないことを留意点として挙げていることを踏まえると、長期化することも大いに考えられます。
 

表-2 阪神・淡路大震災でのライフラインの被害と復旧

表-2 阪神・淡路大震災でのライフラインの被害と復旧
出典:「阪神・淡路大震災の復旧・復興の状況について」令和4年2月 兵庫県


 
 

4.首都直下地震におけるトイレ問題

少子高齢社会と言われて久しいですが、東京都においても高齢者人口は増加しており、令和4 年での高齢化率は23.5%で、市町村部では26.0%になります。
また、共同住宅居住者数(6 階以上)は約200 万人で、このうち高齢者が約35 万人で増加傾向にあります。
 
災害時は停電するため、エレベーターも停止すると考えられます。
もちろん、エレベーター内への閉じ込めも課題ですが、エレベーターが動かないため避難所にも行けず、身動きが取れない時のトイレの備えが不可欠であると考えます。
 
東京都による首都直下地震の被害想定では、時間軸による被害様相を明らかにすることを試みています。
そこで、トイレ問題に関する主なポイントを解説します。
 

4-1 建物内でのトイレ問題

停電・断水地域において、建物被害がなくても水洗トイレの使用が出来なくなることが挙げられています。
液状化により排水できなくなる可能性もあります。
公園や避難所等に仮設トイレが設置されることを期待したいところですが、建物の倒壊や道路事情等によりかなりの時間を要すると考えられます。
東日本大震災の被災自治体を対象に実施した調査では、避難所に3 日以内に仮設トイレが行き渡ったと回答した市町村は34%でした。
 
高層住宅の中高層階では、エレベーターの停止 などにより地上との往復が困難となるため、その場で対応できる携帯トイレが必須と考えられます。
ただし、水や食料も含めて家庭内備蓄が枯渇すれば、避難所に行くことになるため、かなりの混乱が予想されます。
そう考えると避難所のトイレは、避難所で避難生活を送る人だけでなく、地域で在宅避難や車中避難等をしている人が使用することも想定する必要があります。
このような場合、屋外のマンホールトイレや仮設トイレが重要な役割を果たすことになります。
この時に屋外のトイレ整備が不十分だと、多くの人が建物内のトイレを使用することになり、数や動線などの混乱が生じます。
 
また、忘れがちなのは清掃・管理体制の構築です。
屋外のトイレは公衆トイレ的に使用されるため、避難者自身で対応することは困難だと考えます。
専門企業や団体との連携が不可欠です。
もちろん、し尿収集の手配も重要ですが、バキュームカーが不足するため全国組織との応援体制についても事前の協議が必要です。
 
東京都下水道局は震災時のトイレ利用について、下水道の使用制限が実施されている地域に対しては、トイレの使用を控えることを住民にお願いします。
これは下水道管だけでなく、下水処理施設やポンプ施設なども震災の被害を受ける可能性があり、その場合、下水道の使用を自粛することが必要になるからです。
使用制限がない場合でも、オフィスビルやマンションなどでは、排水管などが破損していると下水が詰まって汚水が逆流したり、破損したところから噴出したり、下階に汚水が逆流するなどのトラブルが発生する可能性がありますので、確認・対応方法を検討することが必要です。
 

4-2 帰宅困難者のトイレ問題

停電・断水すれば、公共施設やコンビニエンスストア等のトイレも利用できません。
2011 年の東日本大震災の時、都内は停電を免れた地域が多かったので、帰宅困難者はコンビニエンスストアでトイレを借りることができた記憶が残っていると思います。
しかし、あの時は運よく使えたと思うべきです。
首都直下地震では使用できなくなると考えます。
 
もし、使用できたとしても長蛇の列ができます。
また、SNS 等で情報が共有されれば混乱が増幅されます。
帰宅困難者支援ステーションや防災拠点となる施設では、断水を想定したトイレ対応の備えが不可欠です。
ただし、多くの人は携帯トイレの使用方法等を知らないため、現場での運用や周知をどのように行うのか、検討が必要です。
被災地の避難所や病院では、使用方法を図示したポスター等の掲出やスタッフの常駐などにより対応しました。
 
道路や公共交通機関の復旧が長期化する地域では、勤務先、通学先や一時滞在施設での滞在期間が長くなります。
期間が延びることで飲料水や災害用トイレなどが枯渇します。
このような場合、物資の調達とともに使用済みの携帯トイレやおむつ等のごみを衛生的に管理することが必要になります。
 
 

5.災害時トイレ対策の現状

国によるトイレ対策は、以下のとおり指針等が定められています。
 

  • 2015 年「大規模災害発生時における災害廃棄物対策行動指針」(環境省)
  • 2016 年「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(内閣府(防災担当))
  • 2016 年「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」(国土交通省)
  • 2020 年「農業集落排水施設風水害対応の手引き」(農林水産省)

 
内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」では、「市町村においては、本ガイドラインを参考に災害時のトイレの確保・管理計画を作成し、その計画を実効性のあるものとするため、地域防災計画等に反映させることが求められる。」という記述がありますが、残念ながら市町村における計画作成は思うように進んでいません。
 
共同通信社の調査によると、道府県庁所在地の市と政令指定都市計51 市に対して、大規模災害時のトイレの充足見込みを質問したところ、「不足の恐れ」と回答したのは39%でした。「分からない」の10%を含めると約半数が足りるとは言えない状況です(図- 2)。
 
さらに、農林水産省が集排施設を管理する市町村を対象に実施した「農業集落排水の風水害対応に関するアンケート調査」では、指定避難所のトイレ整備の基本的情報として、「避難所におけるトイレの必要数に応じた備えができていない」(66.9%)、「災害時のトイレの確保・管理計画を作成していない」(68.7%)、「対策は十分でないと感じている」(73.4%)という結果が得られました。
 
行政が災害時のトイレ対策を徹底することは必要ですが、それだけでは大災害に対応することはできません。
個人や企業・団体による備えが不可欠です。
それぞれの施設等における災害時のトイレ対策の具体的な考え方や防災トイレ計画づくりを学ぶ場として、当研究所は毎年5 月と12 月に、災害時トイレ衛生管理講習会(オンライン)を開催しています。ぜひ受講していただき、防災力を高めていただければと思います。
 

図-2 大規模災害時のトイレの充足見込み

共同通信社による道府県庁所在地の市と政令指定都市計51市に対する調査結果
(2022年4~5月実施)を元に作成
図-2 大規模災害時のトイレの充足見込み


 
 

6.トイレ対策の基本的な考え方

6-1 複数のタイプの災害用トイレを組み合わせる

災害時のトイレ対策の考え方としては、1 つの 方法に限定せず、複数タイプの災害用トイレを組み合わせることが効果的です。
内閣府の「防災基本計画」には、災害用トイレとして「携帯トイレ」「簡易トイレ」「マンホールトイレ」「仮設トイレ」が登場します。それぞれの技術概要および特徴は、当研究所HP の「災害用トイレガイド」(https://www.toilet.or.jp/toilet-guide/)を参照してください。
 
複数のタイプのトイレを組み合わせる理由は、 3 つあります。
 
1つ目は、発災後すぐにトイレニーズは発生しますが、災害用トイレにはスピード対応できるものとそうでないものがあるからです。
 
2つ目は、災害によりインフラがどのように被災するか分からないからです。
浸水すればマンホールトイレは使えなくなりますし、バキュームカーが来なければ仮設トイレはすぐに使用禁止になります。
また、携帯トイレや簡易トイレのみでは、発生するごみの量が多くなってしまいます。
 
3 つ目は、屋内と屋外の両方のトイレで対応す ることが必要だからです。
避難所の屋内にしかトイレがない場合、在宅避難者や車中避難者、ボランティア等も避難所内に立ち入ることになり、混乱の原因になります。
 
発災時のトイレ対応の順番としては、真っ先に携帯トイレを便器に取りつけ、次に簡易トイレ、続いて屋外用として備蓄してあるマンホールトイレを立ち上げ、最後に外部調達としての仮設トイレの要請を行うことが望ましいと考えます。
国土交通省は、このように時間経過に配慮しながら切れ目のないトイレ環境の確保が重要であることを提案しています(図- 3)。
 
なお、仮設トイレに関しては、国土交通省はよりよい仮設トイレを「快適トイレ」と命名し、標準仕様を発表しています。
全17 項目のうち11 項目は、快適トイレに必ず必要な機能と付属品で、 6 項目は快適トイレの質を向上するために推奨されている内容です。
災害時に調達したり、支援したりするトイレは、要配慮者対応も考慮して「快適トイレ」にすべきと考えます。
 

図-3 切れ目のないトイレ環境の確保

出典:「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン-2021年版-」
国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部
図-3 切れ目のないトイレ環境の確保


 

6-2 水洗トイレの使用可否の確認方法

災害による被害は一律ではありません。地域や建物等によって異なります。
水洗トイレが使用できない場合に備えて災害用トイレを備蓄するとともに、建物内の水洗トイレの被災状況を把握することが重要です。
 
共同住宅において排水機能が正常かどうかを確認する方法は、基本的に専門業者による点検が必要になりますが、災害時はすぐに対応することが困難です。
それまで災害用トイレを使用し続けることも考えられますが、自主的な簡易点検ができればそれに越したことはありません。
 
このようなニーズに応えるべく、筆者も委員として参画した公益社団法人空気調和・衛生工学会集合住宅の在宅避難のためのトイレ使用方法検討小委員会では、「集合住宅の『災害時のトイレ使用マニュアル』作成手引き」を2020 年1 月に取りまとめました。
本手引きには、災害時の初動対応として携帯トイレを使用しつつ、管理組合と居住者が段階的に設備点検を行い、リスクを軽減しながら水洗トイレの使用を試みる方法が記載されています。
本手引きはウェブサイト(URL:http:// www.shasej.org/iinkai/200603/20200603.pdf)で公開されています。
 
このような手引きを参考に、共同住宅における水洗トイレの使用可否の確認方法を作成・共有することが必要です。防災訓練の一環として取り入れることも効果的だと考えます。
 
 

7.水洗トイレのレジリエンスの向上に向けて

東京大学生産技術研究所の加藤孝明教授は、災害時自立生活圏という考え方を提案されています。
災害時自立生活圏とは、圏域外の資源に頼らなくても、災害を乗り越えることを目指そうとする圏域のことです。
防災の根幹問題は、桁外れに大きい需要に対し桁外れに小さい資源しかないということです。
これを是正するために、資源を増やし、需要を減らし、バランスを整えることにより、災害を乗り越えようという考え方です。
 
これからは、この考え方を共同住宅に当てはめて災害時自立生活マンションを目指すことが必要ではないでしょうか。
そのためには、災害用トイレの備蓄や水洗トイレ使用可否の確認方法の徹底に加えて、水洗トイレシステムそのものの強化が必要です。
 
これまで、災害が起きると水洗トイレはお手上げと諦めていたような気がします。
そうではなく、水洗トイレのレジリエンスを高めるためには何が必要なのかを追究する必要があります。
水洗トイレというシステムを支えるためには、建物の耐震化、給水設備や排水設備の耐震化、処理施設の耐震化などが考えられますが、あまり意識されていない部分として宅地内の排水設備が挙げられます。
排水設備のうち宅地内に埋設されている排水管は建物の揺れと挙動が異なるため建物自体が耐震化されていたとしても被害が発生しやすい箇所です。
宅地内排水設備の耐震基準を設けて耐震化を徹底できれば、水洗トイレ用水を確保してバケツ洗浄等で水洗トイレを使用できる可能性が高まります。
また、水洗トイレ用水があれば敷地内の排水桝を活用して簡易的なマンホールトイレを設置することも検討できるため、トイレを確保する選択肢が広がります。
 
次に、水洗トイレ用水の確保です。
給水機能が停止したとしても排水機能は正常である場合もあります。
2019 年の台風19 号で被害を受けた神奈川県川崎市のタワーマンションでは、停電によってエレベーター、照明などの電気機器が使えなくなったほか、断水が起こっていたためトイレやお風呂も使えなくなりました。
各住戸への給水は地下の給水設備から電動ポンプで送水しているため停電と同時に断水が起きてしまったのです。
被災から3 日後に備蓄の水がなくなりかけた際には、バケツリレーで飲用水600 ケース以上を階段で運んだそうです。
ここで忘れてならないのは、水の用途の優先順位です。最も優先すべきは飲用です。
次に生活用水となりますが、なかでもトイレの洗浄水はかなりの量が必要になります。
居住者は、必死に運んだ水をトイレに流すということは、たとえ排水ができたとしても考えられないと言っていました。
分散避難を実現する上で、共同住宅に水洗トイレ用水を人力以外でどのように確保するかということが大きな課題になります。
 
排水設備の耐震化と水洗トイレ用水の確保が実現できれば、水洗トイレのレジリエンスは大きく前進します。
首都直下地震や南海トラフ地震などの巨大災害に対応するためには、災害時自立生活マンションとしてのトイレ機能の確保が不可欠です。
 
本稿が、水洗トイレのレジリエンス向上の一助になれば幸いです。
 
 
 

特定非営利活動法人 日本トイレ研究所 代表理事
加藤 篤

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2022年12月号

積算資料公表価格版2022年12月号

 

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