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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 横浜港国際海上コンテナターミナル再編整備事業─新本牧ふ頭の整備─

1.はじめに

横浜港は、平成22年8月に京浜港(東京・川崎・横浜)として国際コンテナ戦略港湾に選定され、我が国の国際貿易の窓口として、特に東日本地域を背後圏とし、この地域の生産・消費などの経済活動を支えている。
 
一方、アジア諸国の経済成長、首都圏道路ネットワークの整備進展に伴うアクセス向上などを背景に、今後も増加が見込まれるコンテナ貨物量に対し、取扱い能力の不足が懸念されている。
 
京浜港では、増大する貨物量をはじめ、コンテナ船の急速な大型化や船社間のアライアンス(世界規模の戦略的協定)再編による基幹航路の寄港地の絞り込みなど、海運事業者を取り巻く変化に加え、運輸業における労働力不足を背景とした陸上輸送からのモーダルシフトの需要も見込まれている。
そこで、大消費地である首都圏や日本を代表する製造拠点である京浜工業地帯の活動を支えるため、港湾物流機能の継続的な維持・改善が求められている。
 
このような状況を考慮し、横浜港は国際コンテナ戦略港湾として、コンテナ貨物の取扱い機能を量・質の両面で強化することが必要であり、コンテナふ頭の再編・強化や先進的な施設整備を進めること、また増大する港湾物流に対応するため、広域道路ネットワークと臨港道路を接続することが不可欠であり、ふ頭間の円滑な交通を確保することが急務となっている。
 
※モーダルシフト…トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること。
 
本事業は、船舶の大型化や将来の取扱い貨物量に対する港湾施設の能力不足から、本牧ふ頭における既存コンテナターミナルの改良および新本牧ふ頭に新たなコンテナターミナルの整備を行い、大水深で高規格コンテナターミナルと高度な流通加工機能を備えたロジスティクス施設を一体的に配置することで、新たな臨海部の物流拠点を形成することを目指している(写真-1、図-1)。

【写真- 1 横浜港と新本牧ふ頭の位置】
【写真- 1 横浜港と新本牧ふ頭の位置】
【図- 1 事業対象施設と新本牧ふ頭の位置図】
【図- 1 事業対象施設と新本牧ふ頭の位置図】

 
以下に本事業の目的を示す。
 
①貨物取扱能力を向上させ、代替港利用による輸送コストの増加を回避する。
②大型船舶の寄港を可能にし、海上輸送コストの削減を図る。
③受入環境を向上させ、大型船舶の寄港に伴う運航コストの削減を図る。
④国際フィーダー貨物の取扱能力を向上させ、国際フィーダー船の滞船コストを削減する。
⑤突堤間の横持ち作業の効率化による陸上輸送コストの削減を図る。
⑥耐震強化岸壁の整備により、震災時でも国際海上コンテナターミナルの輸送機能を維持し、輸送コストを削減する。
 
本稿では横浜港国際海上コンテナターミナル再編整備事業の一環として、新本牧ふ頭の整備に関する計画概要、構造概要および施工概要について紹介する。
 
 

2.計画概要

本事業において整備する新本牧ふ頭の計画図を図-2 に示す。
 
この計画は、外内貿コンテナ貨物需要の増加とコンテナ船の大型化に対応するため、対象船舶を 200,000DWT(22,000TEU)とし、水深18m 以上、延長1,000mの岸壁(500m× 2 バース)を有する高規格コンテナターミナル用地とロジスティクス用地を整備する計画である(図-2、3、表-1)。

【図- 2 新本牧ふ頭の計画図】
【図- 2 新本牧ふ頭の計画図】
【図- 3 新本牧ふ頭完成イメージ】
【表- 1 土地利用計画と施工主体】
【表- 1 土地利用計画と施工主体】

 
また、大規模地震時においても幹線貨物輸送の拠点として機能を維持するため、耐震強化岸壁も整備する。
 
 

3.構造および施工概要

本章では、本事業において建設する岸壁および護岸の構造と施工の概要を紹介する。
 
新本牧ふ頭は水深30mに近い海域に位置しており、岸壁は鋼板セル構造、護岸はケーソン構造としている。
 

3.1(1)岸壁部の構造概要

岸壁部は22,000TEU積コンテナ船の荷役に対応するために自重2,000t級のガントリークレーンが設置され、軟弱な粘性土層が堆積した大水深の海域で、計画水深18mの耐震強化岸壁を短期間で施工するという条件を考慮する必要がある。
 
岸壁の構造は、南本牧ふ頭での採用実績のある鋼板セル構造を採用した。
以下の事項を考慮して断面設定が行われている(図-4)。

【図- 4 岸壁標準断面図】
【図- 4 岸壁標準断面図】

 
①鋼板セルは施工可能な最大径(φ24.5m×H25m、約400t)とする。
②安定性確保のために前面盛石を配置し、レベル2地震時における安定性も踏まえ、岸壁背後の裏込め部分には固化処理(深層混合処理、事前混合処理など)を適用。
③現地盤の表層付近の軟弱層には、堤体直下を深層混合処理工法による地盤改良を行い、前面盛石と裏込めの安定に対してはサンドコンパクション(改良率:前面盛石50%、裏込め30%)を採用。
 

3.1(2)岸壁部の施工概要

施工は深層混合処理およびサンドコンパクションパイルによる地盤改良後、盛上土を撤去し、基礎捨石の投入・均し、鋼板セルの据付け、中詰材の投入、裏込め石の投入、クレーン基礎杭の設置、岸壁上部コンクリート打設の順に行い、岸壁取付部を除いたセル本体は、合計36函を据付けることを計画している。
 
令和元年度から現地工事に着手しており、現在までに地盤改良から鋼板セルの据付け、中詰材の投入までを実施している。
(写真-2、3)。

【写真- 2 製作ヤードにおける鋼板セル製作状況(大組立)
【写真- 2 製作ヤードにおける鋼板セル製作状況(大組立)】
【写真- 3 鋼板セル据付け状況】
【写真- 3 鋼板セル据付け状況】

 

3.1(3)3次元データ(BIM/CIM)を活用した施工管理の取組

港湾工事ではi-Construction の取組みとして、ICT施工の導入や調査、設計、施工、検査、維持管理に至る一連の建設プロセス全体での3次元データの活用(BIM/CIM)を進めている。
地盤改良工、床掘工、基礎工、本体工(ケーソン、鋼板セル)、上部工など一連の施工が行われる。
新本牧ふ頭整備をモデルにして、BIM/CIMクラウドの構築が行われており、岸壁部の工事においても施工管理に活用を行っている(図-5~7)。

【図- 5 CIM モデル】
【図- 5 CIM モデル】
【図- 6 地盤改良施工CIM モデル(岸壁)】
【図- 6 地盤改良施工CIM モデル(岸壁)】
【図- 7 鋼板セル部材モデル化(接合部確認)】
【図- 7 鋼板セル部材モデル化(接合部確認)】

 
活用事例として、地盤改良による盛上土量を3次元モデルで出来形数量を算出し、作業の効率化を図ることや、属性情報の日付データを活用した地盤改良の進捗管理、深層混合処理の施工目地とクレーン基礎杭の干渉、鋼板セル本体の部材干渉確認などの図面照査、鋼板セルやアーク据付け工事にBIM/CIMデータを用い施工ステップを作成することで、受発注者間における施工イメージの共有や作業員の安全教育に活用してきた。
 
これまで立体的に把握することは容易ではなかった部分を3次元モデルで可視化することで、出来形管理や品質の向上に寄与するなど、さまざまな活用が期待される。
港湾分野における生産性向上を実現するため、積極的に活用を続けていきたい。

 

3.2(1)護岸部の構造概要

関東地方整備局が施工する図-2に示す護岸A、護岸南、護岸東のうち、護岸南および護岸東の構造概要を紹介する。
 
護岸南と護岸東は、水深約24~28mの泥質または砂泥質の海底に石材を用いた基礎マウンドを構築し、消波機能を有する重力式消波ケーソン構造を採用した。
このケーソンは、側壁を鋼・コンクリートの合成版とし、底版とフーチングにはSRC部材を組み合わせたハイブリッドケーソンとした。
 
岸壁と同様に大水深の海域での短期間施工を条件として、構造断面設定している。
断面設定は以下の要件を考慮している(図-8)。

【図- 8 護岸南標準断面図】

 
①ケーソン製作は陸上で行うため、ケーソン本体の重量(約1,970t)に加えて、艤装品を含めて起重機船で吊上げ可能な重量となる諸元
(H19m×B16m×L20m)とした。
②現地盤の表層付近に存在する軟弱層に対しては、サンドコンパクション(改良率78.5%)による地盤改良を行い、堤体の安定に影響を及ぼさない範囲で改良率50%とした。

 

3.2(2)護岸部の施工概要

施工はサンドコンパクションによる地盤改良後、盛上土を撤去し、基礎捨石を投入して均し、ケーソンの据付け、中詰材を投入し、蓋コンクリートを打設し、防砂シートを敷設し、裏込め石を投入し、上部コンクリートの施工をするという順序で行う。
 
令和2年度からケーソンの製作および現地施工に着手しており、これまでに地盤改良から蓋コンクリートまでの施工を実施している(写真-4~6)。
なお、護岸部においても岸壁部同様にBIM/CIMの積極的活用に取り組んでいる。

【写真- 4 ハイブリッドケーソン鋼殻の製作状況】
【写真- 4 ハイブリッドケーソン鋼殻の製作状況】
【写真- 5 ハイブリッドケーソンの製作状況(完成)】
【写真- 5 ハイブリッドケーソンの製作状況(完成)】
【写真- 6 ハイブリッドケーソンの据付け状況】
【写真- 6 ハイブリッドケーソンの据付け状況】

 

3.2(3)生物共生護岸の概要

横浜港新本牧ふ頭地区公有水面埋め立て事業の環境影響評価書において、環境保全措置としてケーソンの細部形状を工夫し、生物生息・生育に適した環境を提供するためのブロックを設置する。
これにより、マウンド部も含めて、水深に応じた多様な生物の生息・生育環境を形成することを目指している(図-9)。
 
生物共生型護岸の詳細な構造については、事業実施区域周辺の環境特性を考慮し、専門家の意見を聴きながら検討を進めている。
また、環境学習や研究活動などの場としての活用についても検討を行う。
さらに、付着生物や魚類についての調査を実施し、効果の把握や検証に取り組む予定である。

【図- 9 生物共生型護岸のイメージ】

 
 

4.おわりに

横浜港国際海上コンテナターミナル再編整備事業は、国際基幹航路の我が国への寄港を維持·拡大し、我が国経済の国際競争力を強化し、地域経済の発展や震災時の物流機能の確保にも貢献することが期待されている。
このため、この事業を着実に推進するために最大限の努力を行いたいと考えている。
 
 
 

 国土交通省 関東地方整備局 京浜港湾事務所

 
 
【出典】


積算資料2023年9月号
積算資料2023年9月号

最終更新日:2023-11-27

 

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