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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 仮設資材 > 足場からの墜落・転落災害防止の 充実に係る労働安全衛生規則の 一部を改正する省令の概要について

はじめに

平素より労働安全衛生行政の推進につきまして、格別の御理解、御協力をいただいておりますことにお礼申し上げます。
本稿では、令和5年3月14日に公布された、足場からの墜落・転落災害防止の充実に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令の概要について、紹介します。
 
建設業における労働災害は、長期的には大きく減少していますが、今なお年間約300人がお亡くなりになり、約1万5,000人(休業4日以上)が被災しています。
その中でも、墜落・転落による災害は、死亡者数の約4割、休業4日以上の死傷者数の約3割を占めています(図-1~4)。

図-1 建設業における死亡災害発生状況
図-1 建設業における死亡災害発生状況
図-2 建設業における休業4日以上の死傷災害発生状況
図-2 建設業における休業4日以上の死傷災害発生状況
図-3 建設業における死亡災害の型別内訳(令和4年)
図-3 建設業における死亡災害の型別内訳(令和4年)
図-4 建設業における休業4日以上の死傷災害の型別内訳(令和4年)
図-4 建設業における休業4日以上の
死傷災害の型別内訳(令和4年)

 
このように、建設工事の現場においては墜落・転落による死亡者が最も多く、その防止について実効性のある対策を講ずることが急務となっています。
 
このような状況を踏まえ、令和5年3月14日、足場からの墜落・転落災害防止対策の強化を内容とする改正労働安全衛生規則(以下「改正安衛則」という。)が公布され、足場上での作業における安全確保対策が強化されました。
 
 

1. 改正安衛則の概要

改正安衛則により新たに事業者の義務となった事項は次のとおりです。
 
この内、2.(1)で述べる一側足場の使用範囲の明確化については、令和6年4月に施行、それ以外については令和5年10月に施行されますのでご留意ください。
 
(1) 本足場を使用するために十分幅がある場所(幅が1メートル以上の場所)においては、本足場の使用が原則義務付けられました。
(2) 足場の点検を行う際は、あらかじめ点検者を指名することが義務付けられました。
(3) 足場の点検後に記録・保存すべき事項に点検者の氏名が追加されました。
 
 

2. 改正内容の詳細と解説

(1) 一側足場の使用範囲の明確化について

令和6年4月1日以降、幅が1メートル以上の箇所において足場を使用するときは、原則として本足場を使用する必要があります。
なお、つり足場の場合や、障害物の存在その他の足場を使用する場所の状況により本足場を使用することが困難なときは、本足場を使用しなくても差し支えありません。
 
ア 「幅が1メートル以上の箇所」に関する留意点
「幅が1メートル以上の箇所」とは、足場を設ける床面において、当該足場を使用する建築物等の外面を起点とした梁間方向の水平距離が1メートル以上ある箇所のことを言います。
しかしながら、足場設置のため確保した箇所の一部が公道にかかる場合、使用許可が得られない場合、その他当該箇所が注文者、施工業者、工事関係者の管理の範囲外である場合等については、「幅が1メートル以上の箇所」には含まれません。
なお、足場の使用に当たっては、可能な限り「幅が1メートル以上の箇所」を確保する必要があります。
 
イ 「障害物の存在その他の足場を使用する状況により本足場を使用することが困難なとき」について
足場の設置箇所として1メートル以上の幅を確保した場合でも、障害物の存在その他の足場を使用する状況により本足場を使用することが困難なときは、本足場を使用しなくても
(一側足場を使用しても)差し支えありません。このような場合は以下のとおりです。
 
①足場を設ける箇所の全部または一部に撤去が困難な障害物があり、建地を2本設置することが困難なとき
②建築物の外面の形状が複雑で、1メートル未満ごとに当該足場に隅角部を設ける必要があるとき
③屋根等に足場を設けるとき等、足場を設ける床面に著しい傾斜、凹凸等があり、建地を2本設置することが困難なとき
④本足場を使用することにより建築物等と足場の作業床との間隔が広くなり、墜落・転落のリスクが高まるとき
なお、足場の使用に当たっては、建築物等と足場の作業床との間隔は30センチメートル以内とすることが望まれます。
 
なお、足場を設ける箇所の一部に撤去が困難な障害物があるとき等において、建地の一部を1本とする場合は、足場の動揺や倒壊を防止するのに十分な強度を有する構造とする必要があります。
 

(2) 足場の点検時の点検者の指名について

足場の点検には、その日の作業を開始する前の点検、足場の組み立て、一部解体または一部変更等の後の点検等があります。
令和5年10月1日以降、足場の点検を行う際は、あらかじめ点検者を指名する必要があります。
 
ア 指名の方法
点検者の指名は、「書面で伝達」、「朝礼等に際し口頭で伝達」、「メール、電話等で伝達」、「あらかじめ点検者の指名順を決めてその順番を伝達」等、点検者自らが点検者であるという認識を持ち、責任を持って点検ができる方法で行う必要があります。
 
イ 点検者等について
足場の点検者については、「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」(令和5年3月14日基安発0341第2号)に定める一定の能力を有する者を指名することが適切です。
具体的な要件は以下の通りです。
 
①足場の組み立て等作業主任者であって、足場の組み立て等作業主任者能力向上教育を受講した者
②労働安全コンサルタント(試験の区分が土木または建築である者)等労働安全衛生法第88条に基づく足場の設置等の届出に係る「計画作成参画者」に必要な資格を有する者
③全国仮設安全事業協同組合が行う「仮設安全監理者資格取得講習」を受講した者
④建設業労働災害防止協会が行う「施工管理者等のための足場点検実務研修」を受講した者
 

(3) 点検者の氏名の記録・保存の義務付けについて

令和5年10月1日以降、事業者または注文者が行う足場の組み立て、一部解体または一部変更等の後の点検後に、(2)で指名した点検者の氏名を記録および保存する必要があります。
 
足場の点検後の記録および保存に当たっては、「足場等の種類別点検チェックリスト」(図- 5)を活用することが望まれます。

図-5 足場等の種類別点検チェックリスト

 
 
 

厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 安全課 建設安全対策室

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年12月号

公表価格版12月号

最終更新日:2023-11-21

 

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