- 2024-10-22
- 特集 「いい建築」をつくる材料と工法 | 積算資料公表価格版
総論
平成23年3月に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の被害を受け、国土交通省より天井の落下対策に係る基準が新たに定められた。
国土交通省告示771号
平成25年7月には改正建築基準法施行令および関連省令が公布され、平成26年4月には国土交通省告示771号が施行。
平成28年5月31日には新たな特定天井の技術基準(天井と周囲の壁等との間に隙間を設けない仕様の追加)について関連告示の改正が行われ、同年6月1日より施行された。
防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン
平成28年4月に発生した熊本地震では、避難所指定された建築物において、構造体の損傷、また非構造部材の落下等により、倒壊に至らないまでも機能継続が困難となる事例が発生した。
これを受け、国土交通省では大地震時に防災拠点となる建築物について災害後も機能継続を図るにあたり参考となる事項をとりまとめ、平成30年5月に「防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン」を公開した。
また、令和元年6月には既存建築物を対象とした追補版が公開されている。
建築設計基準 令和元年改定版
令和元年7月、国土交通省が官庁施設の建築設計に適用する「建築設計基準(令和元年改定版)」について、建築非構造部材(外壁、扉、ガラス、天井、間仕切り等)の耐震設計に関する規定を明確化するなどの改定を行った。
天井には「各室等に求められる耐震に関する性能の水準を確保できるよう、構造体の層間変形に対する追従性及び地震力に対する安全性を確保したものとする」ことが求められ、必要事項として以下の内容が示されている。
② 天井は、同一の空間において、できる限り同一の高さとし、複雑な形状とならないようにする
③ 特定天井は、建築基準法令に定める方法による
④ 特定天井以外の在来工法による吊り天井のうち、「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件」(国土交通省告示第771号)第2第一号及び第三号に該当し、かつ、高さ6m超の部分に設置する天井、並びに特定室等及び機能停止が許されない室のうち天井材の脱落により著しい影響が生じる室に設置する天井については、適切な方法により取り付けるとともに、特定天井告示第3第2項第二号に適合させるものとする
⑤ ③、④以外の在来工法による吊り天井は、適切な方法により取り付けるものとする
⑥ システム天井を採用する場合は、グリッドタイプとし、地震力に対して安全であることを確認する
上記④に該当する天井工法のひとつである緊結在来天井は、接合部の衝撃試験で性能を確認したクリップを使用して接合部を緊結させたものである。
「新たな特定天井の技術基準(天井と周囲の壁等との間に隙間を設けない仕様の追加)の解説(平成28年7月版)」(国土交通省国土技術政策総合研究所他)の「付録1クリップの接合部の衝撃試験」によると、静的な実験では地震時の動的な挙動を再現することができないため、クリップに関しては別途定める試験方法により耐風圧クリップ相当の緊結度合を確認されたものを使用するよう明記されている。
5年ぶりに改定された建築設計基準により、建築非構造部材(外壁、扉、ガラス、天井、間仕切り等)の耐震設計に関する規定が明確化された。
これにより、防災拠点建築物の機能継続のための対策が一層進むことが期待されている。
官庁施設の総合耐震・対津波計画基準及び同解説
令和3年2月、「総合耐震計画基準」部に最新の知見を取り入れた上での全面見直しと、「対津波計画基準」部は初めて解説をとりまとめた「(平成25年制定)官庁施設の総合耐震・対津波計画基準及び同解説 令和3年版」が刊行されている。
建築非構造部材等の耐震設計では、特定天井部を含めて最新の考え方が公表されている。
出典:国土交通省HP
天井の落下防止対策 注目製品
特定天井に対応した吊天井
東日本大震災で天井材の落下リスクが表面化して以来、国土交通省告示771号の策定をはじめ、天井の耐震化が進められている。
大建工業(株)の「ダイケンハイブリッド天井」は、在来天井とシステム天井のメリットを組み合わせた工法で、①高い耐震性能、②施工の省力化、③安定した施工品質、④4つのラインナップ(特定天井以外の3グレードを含む)から選択可能、などのメリットがある。
ニーズに応じた4つのラインナップのうち「耐震DH18」、「耐震対策DH18B」は野縁受けにあたるDHメインのピッチを1800㎜とすることができ、施工性の向上が実現できる。
また、各接合部は特殊ホゾ加工によりワンタッチで施工でき、ビス留めが不要で、在来天井を耐震化する場合に比べ、施工手間を低減できる。
詳細▶特集78ページ
三洋工業(株)の地震対策天井「SZG」「SZGJ」は、従来の吊り天井とは異なり、準構造化天井とすべく構造設計された支持構造部に設置する天井下地である。
天井固有周期0.1秒以下として設計ができるため直天井としてみなすことが可能。
主体構造部では実施困難な複雑な仕上げ形状(三次元曲面等)や天井板施工精度を実現できる。
耐震設計が可能な天井下地として幅広い場面での使用が想定される。
詳細▶特集79ページ
(株)佐藤型鋼製作所では国土交通省告示771号に適合した製品として「SATOCK耐震天井(19形・19/25形・25形)」および「耐震スマート天井ライト」を展開しており、「SATOCK耐震天井システム」と総称している。
両製品とも、同社が開発した「スマートギヤロック」をブレース取付金具に採用しており、最大25㎡に1対で済むなど、ダクト干渉が減り、コスト低減につながっている。
なお、「耐震スマート天井」はふところ最長6m、「耐震スマート天井ライト」はふところ3m以内に対応し、いずれも軽歩行ができ、天井裏の点検が可能となっている。
また、構造設計された支持構造部(ぶどう棚)に天井固有周期が0.1秒以下の剛接合が可能な直天井の「スマートタイト45ショートタイプ」(上図)がある。
吊りボルトの代わりに角形鋼45×45×1.2㎜で上下させ、約110㎜のレベル調整代があるため支持構造部の精度が低くても正確なレベル調整が可能。
2段階調整機構のため野縁組付後のレベルの微調整が可能で、野縁受けが水平に取付しやすい金具構造であるなど、施工性に優れる。
支持構造部下面から野縁までのふところは100~300㎜まで対応可能。
「スマートタイト45ロングタイプ」ではふところ115~600㎜まで対応可能。
詳細▶特集76、77ページ
トーケン工業(株)の「トーケン式耐震天井」は、吊りボルト上部にブレースを堅牢に緊結するeブレース、野縁受けに野緑を堅牢に緊結するe耐震クリップ、ブレース下部を吊りボルト下部に堅牢に緊結するeプレート等で国土交通省告示771号に対応する(仕様により最大2.2Gに対応)。
詳細▶特集80ページ
(株)染野製作所のES-SSS耐震天井下地は、石膏ボードなどの仕上げ材と構造躯体を直接的にブレースで結ぶことで、力の流れのロスやほかの部材を経由して耐力が低下することを徹底して排除。
その結果、軽量鉄骨下地として強い耐震性能(耐力、剛性など)を実現した。
常盤工業(株)の「格子固定天井」は高い水平許容耐力を持つ「TEC工法」の仕組みを基に、32㎜×14㎜の角パイプを格子状に組み、じかに野縁を取り付け一体化させる準構造天井である。
格子を壁に固定するため、天井面に隙間のない施工が可能。
また、格子面に固定天井を取り付けることで既存の天井の意匠性、気密性、音響性能を維持する。
固有周期は0.09/s、水平力7000N時に変位量が10㎜以内と建物との一体化も可能とした。
詳細▶特集74、75ページ
特定天井に該当しない吊天井
耐震化の検討を要する天井は、特定天井だけに限らない。
災害時に防災拠点となる施設やそれに該当する部屋などさまざまな状況に応じた検討が必要となる。
大建工業(株)では、そうした背景から、「ダイケンハイブリッド天井」は特定天井以外に、耐震性能の異なる3グレードをラインナップし、意匠性、コストなども踏まえて選択できる。
詳細▶特集78ページ
天井の軽量化
天井の落下防止対策においては、天井をできる限り軽量化することが望ましく、2kg/㎡以下の設計にも対応可能な工法が各社から発売されている。
【出典】
積算資料公表価格版2024年11月号

【出典】
積算資料公表価格版2024年11月号

最終更新日:2024-10-22
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