• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 公共施設用照明器具標準JIL5004-2015(2016年版)改正 ~LEDへの大幅移行~

 

照明器具小委員会主査(東芝ライテック株式会社)   鶴岡 伸一
一般社団法人 日本照明工業会 特別事業部長      山田 憲幸

  
 

1.はじめに

(一社)日本照明工業会では公共建築物で使用する照明器具について「公共施設用照明器具標準委員会」を設置,「公共施設用照明器具(JIL5004)」を制定し,改正を重ねてきた。今回の改正では,大きなポイントとして従来光源である白熱電球,蛍光ランプ,高輝度放電ランプ(HID)を用いた照明器具の多くをLED照明器具へ移行し,省エネルギーの促進など環境負荷の低減の推進を図る内容とした。本標準は,公共施設用照明器具標準委員会(委員長 小野隆 日本大学理工学部教授)の承認を得て,2015年12月15日に刊行した。総掲載機種数は257となりLED照明器具が大部分を占めている。今回の改正の概要を以下に紹介する。
 
 

2.改正の概要

2.1 従来光源器具からLED 照明器具への移行

省エネルギー,環境性重視等を目的にLED照明器具の採用を大幅に増やした結果,機種数は,2013年版(2012年12月15日改正発行)時点でのLED器具97機種に対して,2016年版は243機種となった。屋内用ベースライトは蛍光灯器具をLED器具に全面切替えを行ったほか,屋外用器具についても従来のHID器具から全面的にLED器具へ移行しLED化を行った。また,すでにLED化の進んでいた誘導灯に加え,電池内蔵専用形非常灯についてもミニハロゲンランプからLED光源に移行した。前回2013年版との機種数の比較をまとめると表- 1のようになる。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
次に用途別の主な改正点について紹介する。
 
2.1.1 ベースライト
本改正により従来の蛍光灯器具から全面的にLED器具に移行した。前回2013年版ですでに
LED器具に移行していた機種についても効率の改善による特性見直しを行った。また,LED化にあたり従来からの機種見直し検討を行った結果,意匠性の強い機種,特定用途向け機種等は今回除外することとした。また,類似した機種については統合を行った。表- 2にベースライトの移行例を示す。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2.1.2 ダウンライト
ダウンライトは前回2013年版からLED化を行っていたが,後述する光学性能改善により定格
光束,定格消費電力の改善見直しを行った。また,ビームの開きを従来の60〜100°の範囲から70〜100°に見直して光の広がりに配慮したほか,新しく廊下用の照明等に使い勝手の良い仕様として器具取付間隔の広いタイプを追加した。
 
2.1.3 防災照明
防災照明の中では誘導灯が以前からLED化されていたが,今回はミニハロゲンタイプの電池内蔵非常灯や蛍光灯階段通路誘導灯もLED光源の採用を図った。一方,ベースライトとして使用されてきた電池内蔵の併用形の非常灯については,同タイプのLED器具が普及していないことなどから電池内蔵の専用形LED非常灯を使用することとした。
 
2.1.4 HID 代替対応のLED器具
従来のHIDランプを使用した照明器具は全て
LED光源を使用した器具への代替を行った。高天井器具は従来のHID光源からLED光源としたほか,器具を軽量化したタイプとして質量3kg以下の仕様を追加設定した。街路灯は全周向き配光の上方光束5%以下タイプと15%以下タイプの2機種と通路用配光1機種の計3機種にした。投光器は定格光束18,000lm以上,50,000lm以上の2タイプをLED器具として新設した。
 

2.2 LED 化に関連した光学特性の規定化

(1)ベースライトの発光部の輝度分布均一化
 
照明を使用するエリアの照明空間の質を低下させない配慮から,粒々で非連続な発光とならないように「拡散カバー」を定義し,規定化した(説明- 1参照)。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(2)高天井器具の輝度規制形の追加
体育館などでスポーツ照明として使用する場合,LED器具は輝度が高くなる傾向にあることから,従来のHID器具と同じレベルの直下輝度の要望に応えるため,輝度値規制形LED高天井器具の分類を設け規定化した(説明- 2参照)。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
(3)ダウンライトの保守率向上と光束の変更
2013年版のものと比べてLED光源の性能が向上したことから,今回LED光源の設計光束維持率を見直した。これに合わせて照明器具の保守率と照明器具の光束値の改定を行った。光源の設計光束維持率を従来の0.7から0.8とし,その結果,使用環境「普通」の場合での保守率が0.63から0.72に向上した。これに伴いダウンライトの器具光束値を見直した(表- 3参照)。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なお,器具光束値は従来よりも小さくなっているが,保守率が向上したため,設計光束は従来と同等のままとなり,同じ設計照度で消費電力を低減し,省電力となっている。
 

2.3 その他

その他の変更点としては次が挙げられる。
 
● 照明器具の配置設計に活用するために,LED照明器具の最大器具取付間隔と固有照明率の掲載を拡充した。
● 補修に対応するために,代表的な従来機種を改修専用機種一覧として参考資料に掲載した。
 
 

3.おわりに

既存光源からSSL(Solid State Lighting:LED,有機EL等の固体照明)へのパラダイムシフトが進む中,2010年6月18日閣議決定されたエネルギー基本計画等に基づき,(一社)日本照明工業会では2010年に国内SSL器具出荷比率(フロー)が100%に近づくと推測している。
 
今回のJIL5004改正によりLED照明器具への移行が進み,官公庁建築物でのLED照明器具の採用が増加し,省電力化の進展を図ることができれば幸いである。進化するLED照明器具にあわせ,今後改正追補版の発行などによる最新の動向に合わせた見直し,改定も継続的に行っていく予定である。
 
なお,誌面の都合で一部しか紹介できないため,詳細はJIL5004-2015本文や,(一社)日本照明工業会のホームページ(http://www.jlma.or.jp/)等を参照いただきたい。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【出典】


積算資料2016年04月号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最終更新日:2016-09-27

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

話題の新商品