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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 雪寒対策資機材 > 冬期路面管理に伴うコスト縮減事例 〜ロードヒーティングの管理方法の工夫〜

 

前 国土交通省北海道開発局 室蘭開発建設部 道路整備保全課      
(現 同 室蘭道路事務所計画課)
福田 孝志

 
前 国土交通省北海道開発局 室蘭開発建設部 道路整備保全課        
(現 同 札幌開発建設部 札幌道路事務所第一工務課)
関  夏実

 

はじめに

平成26年11月1日より,北海道では電気料金の値上げが始まった。これを受け,室蘭開発建設部でも多くの電気設備がある室蘭道路事務所において,値上げによる負担の低減,さらにはコスト縮減のため,節電を行ったので報告する。
 
 

1. 概要

北海道開発局室蘭開発建設部室蘭道路事務所は,北海道の南西部に位置する室蘭市,登別市,伊達市,および白老町の3市1町における一般国道36号および37号の管理を行っている(図- 1)。
 

図-1 室蘭道路事務所の管轄区間




 
当地域は,室蘭市における1月の平均気温が平年値で-2.0℃であり,札幌市の-3.6℃,函館市の-2.6℃よりも高く,北海道の中では比較的温暖な地域である。積雪に関しても札幌市の1月の最深積雪平年値が77cm,函館市が35cmであるのに対し,室蘭市は19cmと少なく,北海道の中で積雪の少ない地域といえる。
 
また,一般国道36号と37号における当該事務所の管轄区間には,山間部がほとんどなく,平野部が多い。また,室蘭市,登別市,伊達市,白老町の市街地を通る区間である。冬期は,積雪は少なく,気温が0℃前後になることが多く,凍結した路面の表面が融解しアイスバーンとなり滑りやすくなる(写真-1)。そのため,市街地で車道・歩道橋等にロードヒーティングを多数設置している。
 

写真-1 冬期路面状況(一般国道36号)




 
そうした中,北海道電力は平成26年11月1日から一般家庭等(公衆街路灯契約含む)で平均15.33%,高圧契約で平均20.32%の値上げを行った1)。これにより,室蘭開発建設部室蘭道路事務所でも応分の負担増となることが予想されたため,管内施設の節電を検討し,一部ロードヒーティングの休止等を実施した。
 
 

2. 電気料金の支出内容

当該事務所は白鳥大橋(写真- 2)や室蘭新道等に大きな電気設備があり,また,交通量の多い坂路等にはロードヒーティング設備が多数設置されている。
 

写真-2 白鳥大橋




 
夏期に比べ冬期の電気料金が高く,夏期の倍以上となる月もある(図- 2)。
 

図-2 室蘭道路事務所の月別電気料金(百万円)




 
施設ごとの電気料金の割合を見ると,積雪期となる12月〜3月のロードヒーティング設備の占める割合が大きく,冬期の電気料金が増大する要因のひとつとなっている(表- 1)。
 

表-1 施設ごとの電気料金の割合(夏期・冬期抜粋)




 

3. ロードヒーティング設備の節電検討

ロードヒーティングは冬期間の事務所電気料金の約40%を占めている設備である。
 
横断歩道橋,地下歩道は通学路であることが多く,階段部などにロードヒーティングが設置され,冬期降雪の際の融雪に使用するとともに,融雪後の水が再度氷となることを防ぐ役を担っている。また,車道ロードヒーティングは管内の交通量が多く縦断勾配の大きい区間等,雪氷によるスリップ事故等が想定される場所に設置している。
 
ロードヒーティングを停止した場合は,除雪,凍結防止剤等による対応となるが,散布で歩道橋の腐食が進行する可能性もあり,車道ではスリップによる事故や速度低下による渋滞の懸念もあるため,設置場所毎に節電の可能性を検討した。
 
なお,ロードヒーティング以外の設備については,以下の理由から節電が困難または効果が少ないため,今回の節電対象から除外した。
 
(1)道路照明
平成23年東日本大震災による節電のため,管内1334灯のうち116灯を節電消灯したが,住民から寄せられた交通安全面での要望により72灯を再点灯。現在は室蘭新道を中心に44灯の消灯を行っている。新道以外は局部照明が多く,消灯による交通安全上の懸念もあるため,これ以上の消灯は困難である。
 
(2)トンネル電気設備
事務所管内のトンネルは交通量が非常に多く,減灯する場合には,トンネル照明設置基準を満たすよう再度照度計算などの検討が必要である。今後はLED 等により対応すべきと考える。
 
(3)情報板,カメラ等情報収集提供装置
機器の内部にヒータがあり,寒冷期でも機能が発揮できるようになっている。ヒータを外すと,寒冷期に映像が映らないことや,情報収集,提供ができなくなることが想定される。
 
(4)白鳥大橋電気設備
白鳥大橋での使用電力のうち道路照明と航空障害灯は夏期で設備全体の約19%,冬期で約21%となっている。その他の使用内訳は除湿器,表示板,情報板および各室補機類やデータ伝送設備など多種であり,どれも施設管理上重要な設備である。照明は深夜に半減の節電を既に実施している。
 
(5)白鳥大橋主塔ヒーティング
主塔に着雪した雪氷を落下させない設備で,雪氷落下事故を未然に防止する重要な設備である。作動は情報管理員が目視で行っており,十分な節電対応を行っている(写真- 3)。
 

写真-3 夜間の白鳥大橋




 

4. 節電検討結果

効果的かつ実効性のある節電対策は,ロードヒーティングの設定温度見直し,および設備の廃止または縮小である。次に平成25年度のロードヒーティング設備電気料金一覧を示す(表- 2)
 

表-2 室蘭道路事務所ロードヒーティング電気料金一覧



4.1 設定温度の見直し

現在ヒーティングセンサーは4要素や3要素,単純な1要素と分類されており,通常の設定温度は分類ごとに一般的に次のように設定されていることから,降雪の少ない当地においての設定変更を試みた。特に予熱運転モードは,降雪がなくても動作していることを踏まえ,節電に効果的と考える。
 
(1)4要素
● 融雪運転モード(降雪がある場合で雪を溶かす運転モード):標準4℃→ 3℃(128時間の削減)
● 凍結防止運転モード(路面水分の凍結防止運転モード):標準2℃→ 1℃(261時間の削減)
● 予熱運転モード(融雪の立ち遅れを防止する保温運転モード):標準1℃→- 2℃(768時間の削減)
温度条件:融雪運転> 凍結防止> 予熱運転
 
(2)3 要素
● 融雪,凍結防止運転モード(路面水分の凍結防止運転モード):標準4℃→ 2℃(332時間の削減)
● 予熱運転モード(融雪の立ち遅れを防止する保温運転モード):標準2℃→- 2℃(1029時間の削減)
 
(3)1 要素
● 温度により運転する。標準5℃→ 1℃(925時間の削減)
 
下記に平成25年度における室蘭道路事務所管内の冬期気温の分布を示す(表- 3)。
 

表-3 室蘭道路事務所管内冬期気温



4.2 ロードヒーティング設備の一部休止

管内のロードヒーティングのうち,一部休止が可能な場所として,「入江交差点ヒーティング」が該当した。
 
一般に,下り勾配の交差点部のロードヒーティングについては停止線まで設置することとなっているが,当交差点は縦断勾配が4%と急であることにより,上り車線を含む停止線以降の交差点内にもロードヒーティングを設置している。そのため,図- 3のとおり交差点内の下り車線直進部と上り車線で実験的に一部休止を行い,状況を見守ることとした。
 

図-3 室蘭市入江交差点ヒーティング休止範囲




 



停止した面積は
A2=36.1 / C2 〜C4=108.3 / C6 〜C8=108.3/ C10 〜C12=87.6 / D2 〜D4=63.6 / D7 〜D9=102.7/G3〜G4=47.7/
G8〜G9=61.0
合計615.3m2
 
これはヒーティング面積1676.1m2 の36.7%で,平成25年度実績により試算すると170万円/4ヶ月のコスト縮減が見込まれた(ただし,値上げ分を除く)。
 
 

5. おわりに

平成26年度は,室蘭市の降雪深の合計が117cmと平年値242cmの半分以下にとどまったこともあるが,電気料金の値上げにもかかわらず,節電を行った結果,ロードヒーティングの電気料は前年比で900万円/4ヶ月削減できた。また,実施後の事故等の交通障害の増加や,意見・要望等はなかった。
 
このような結果を踏まえ,今後は当該交差点での継続と他箇所への拡大等検討を進め,さらなるコスト縮減に努めていきたいと考える。
 
【出典】
1) 北海道電力ホームページ
http://www.hepco.co.jp/info/2014/1189782_1635.html
 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2016年07月号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最終更新日:2023-07-11

 

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