建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 国土交通省におけるインフラの老朽化対策の取組

 

はじめに

我が国では,高度経済成長期以降に整備した社会資本の老朽化が進んでおり,例えば,道路橋では,15年後には建設後50年以上経過するものが6割を超えることになる。
 
国土交通省では,2012年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故を契機に,2013年を「社会資本メンテナンス元年」として位置付け,2014年5月に戦略的な維持管理・更新に関する基本的な考え方や国土交通省が取り組むべき施策を取りまとめた「インフラ長寿命化計画(行動計画)」を策定して,この行動計画に基づき,インフラの老朽化対策に係る取組を推進している。また,2017年12月から,社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会社会資本メンテナンス戦略小委員会(第3期)において,議論を行っている(表−1)。
 
本稿では,国土交通省におけるインフラの老朽化対策に係る取組状況について紹介する。
 

表−1 社会資本の老朽化対策に関するこれまでの経緯



1. インフラの老朽化対策に係る取組状況

1-1 予防保全への転換

2018年11月,国土交通省は,経済財政諮問会議のワーキングにおいて,所管するインフラの今後30年後までの維持管理・更新費の推計の結果を示した。インフラに不具合が生じてから対策を行う事後保全型の維持管理・更新から,不具合が生じる前に対策を行う予防保全型の維持管理・更新に移行することにより,30年間の維持管理・更新費の合計費用が,約3割縮減される推計結果となった。
 
この結果からも明らかなように,今後,事後保全から予防保全への転換による費用の縮減・平準化を図ることで,持続的・効率的なインフラメンテナンスを推進することが必要である(図−1,表−2)。
 

図−1 事後保全と予防保全のサイクル


 

表−2 維持管理・更新費の推計,長寿命化等による効率化の効果(「事後保全」で試算した場合との比較)



1-2 自治体の支援に関する取組

インフラメンテナンスで特に困難な状況に直面しているのは,市町村である。道路・下水道・住宅・公園などの非常に多くの施設を管理する必要があるにもかかわらず,維持管理に関わる土木部門の職員は減少しており,点検・補修等を行う費用も十分ではない。
 
このため,市町村の支援を様々な方面から行うことが重要である。具体的には,新技術やデータ活用の推進等の市町村の実行力を高める取組,「道路メンテナンス技術集団」による直轄診断等の市町村に対する直接的支援,関係機関の連携拡大による支援が重要であり,これらの取組を推進していく。
 
このうち関係機関の連携では,道路・港湾・空港・河川の各分野で,国・地方公共団体等の施設管理者が一堂に会するメンテナンス会議を通じて技術的支援,情報共有を継続していくことや,PFIや包括的民間委託等により民間協力の活用の推進を行っているところである(図−2〜4)。
 

図−2 市町村における職員数の推移


 

図−3 市町村の土木費の推移


 

図−4 地方公共団体の支援に重要な3つの観点



1-3 新技術・データ活用に関する取組

維持管理・更新費の増大や担い手不足が懸念されているなかで,新技術の現場への導入による作業の省人化・効率化を図る必要がある。
 
そのための取組の一つとして,インフラメンテナンス国民会議(2019年11月時点:会員数1,853者)を通じ,施設管理者のニーズと民間企業のシーズのマッチングによる新技術導入の支援等を進めている。国民会議を通じて紹介された技術の社会実装数は着実に増加している(2019年3月時点:6技術,71件)。
 
また,新技術の活用に向けて,小規模自治体等が単独で技術導入を検討するのは困難であるため,自治体横断的な新技術の普及・展開を図る必要がある。そこで,自治体のインフラメンテナンスを推進するため,2018年度から「官民研究投資拡大プログラム(PRISM)」を活用し,モデルケースの実施を通じて,自治体における新技術の導入に役立つ手引きを作成することとしている。
 
インフラメンテナンスサイクルにおける新技術の活用により,計測・点検・補修等の膨大なデータが得られるようになる。これらの情報を利活用することは重要であり,そのためには,各管理者がそれぞれに保有している維持管理情報をデータベース化していくことが必要である。そこで,国土交通省や地方自治体が保有する維持管理に関するデータベースの整備・連携方法について検討しており,モデル地方自治体で試行を行っているところである(図−5〜7,写真−1)。
 

図−5 インフラメンテナンス国民会議の概要


 

図−6 インフラメンテナンス新技術・体制等導入推進委員会


 

図−7 インフラメンテナンスにおけるデータ活用


 

写真−1 現場ニーズと技術のマッチング等による革新的技術の社会実装の事例



2. 社会資本メンテナンス戦略小委員会

社会資本メンテナンス戦略小委員会では,2013年を「社会資本メンテナンス元年」と位置付け第1期,第2期を通じて様々な取組を進めてきたところであるが,第3期では社会資本メンテナンス元年から6年が経過するにあたり,施策の進捗状況や市町村の動向等を把握して,これまでの取組のレビューを行うとともに今後の取組の方向性について検討を行っている。
 
第3期の小委員会は6回開催されており(2019年11月現在),今後,以下の3つの課題について,既存の枠組みの活用やワーキンググループ等を設置して検討を行うこととなっている。
 
(1)自治体支援への新技術導入支援
(2)民間活力活用,包括民間委託
(3)外部人材による支援
 
 
 

おわりに

本稿では,国土交通省におけるインフラの老朽化対策に係る取組状況について紹介した。
 
本稿で紹介した取組以外に今後,インフラメンテナンスに対する理解向上や社会全体で取り組む機運を高めることも重要であり,国民一人ひとりがインフラメンテナンスを身近なもの,自らのものとして認識する会社の実現を目指してまいりたい。
 
[参考文献]
社会資本メンテナンス戦略小委員会HP
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s201_menntenannsu01.html 
 
 

国土交通省 総合政策局 公共事業企画調整課 調整官  松岡 禎典

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年1月号


 

 

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