建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 建設工事公衆災害防止対策要綱の改正について

 

1. はじめに

建設工事に伴う公衆災害を防止するために必要な計画,設計及び施工の技術基準として「建設工事公衆災害防止対策要綱」が平成5年に策定(平成5年1月12日付け建設省経建発第1号)されましたが,策定から20年以上が経過し,この間の建設工事の安全に関する意識の高まりや建設技術の進展などの建設工事をとりまく状況の変化等を踏まえ,平成30年2月に「建設工事公衆災害防止対策要綱の見直しに関する検討会(座長:高野伸栄 北海道大学大学院公共政策学連携研究部教授)」を設置し,公衆災害防止策等について専門的知見からの検討を踏まえて要綱の改正を行いましたので紹介します。
 
なお,この要綱において公衆災害とは,「土木工事(建築工事等)の施工に当たって,当該工事の関係者以外の第三者(公衆)の生命,身体及び財産に関する危害並びに迷惑」と定義しており,公衆災害を防止するために必要な計画,設計及び施工の基準を示し,もって土木工事(建築工事等)の安全な施工の確保に寄与することを要綱の目的としています。
 
 
 

2. 改正のポイント

今回の要綱改正では,次の3つの観点を踏まえて内容の整理を行いました。
 
(1)公衆災害防止に向けて,関係者が持つべき理念と担うべき責務を明確化
(2)近年の公衆災害の発生状況を踏まえた見直し
(3)制度の改正や施工技術の進展等を踏まえた見直し
 
ここで,各観点からの主な見直し内容について説明します。
※【 】は建築工事等編の要綱番号

(1)関係者の理念と責務の観点からの見直し

公衆災害の防止のためには,工事関係者がそれぞれの立場で,関係法令とともに要綱を遵守することや,個々の現場特性等を踏まえた主体的な工夫や改善等が重要となります。また,設計段階での配慮や危険性の事前評価,適切な工期の確保や経費の確保についての責務について,要綱で明確化しました。
 
①第3 発注者及び施工者の責務
建設工事に関係する者は,関係法令及び当該要綱を遵守すべきことを明記。さらに,当該要綱を守るのみならず,より安全性を高める工夫や周辺環境の改善等を通じ,公衆災害の発生防止に万全を期さなければならないことを規定。
 

②第4 設計段階における調査等
工事の設計に当たっては,現場条件を調査した上で,施工時における公衆災害の防止に配慮しなければならないことや,施工者等に必要な情報を十分に伝達することを明記。また,使用機械等の設計者においても,使用時の公衆災害の発生防止に資するよう努めることを規定。
 

③第5 施工計画及び工法選定における危険性の除去と施工前の事前評価
公衆への危険性を低減するため,原則として敷地内で工事を収める施工計画を作成することや,工事に先立ち,危険性の事前評価(リスクアセスメント)によって,各種作業における公衆災害の危険性を特定し,当該リスクを低減するための措置を自主的に講じる(措置により危険性の低減が図られない場合は施工計画を協議する)ことを規定。
 

④第7・第8 適正な工期の確保・公衆災害防止対策経費の確保
適切な工期や費用について設定・確保するとともに,施工計画等に変更が生じた場合には,必要に応じて工期や経費の見直しを検討することを規定。

(2)近年の公衆災害発生状況の観点からの見直し

国土交通省のデータベースからみた公衆災害内容の特性と傾向として,「物損事故」は埋設物等の損傷,重機等の接触・転倒,架空線等の損傷が多く,「死傷災害」では資材の落下,重機等の接触・転倒等によるものとなっていました。これらの発生状況結果等を踏まえて,要綱の見直しを行いました。
 
①第11 荒天時等の対応に関する検討
公衆災害の発生起因となる強風や降雨等への備えとして,あらかじめ荒天時(強風,豪雨,豪雪等)の具体的な措置(作業中止の基準,作業中止時の措置)を定めることを規定。

 
②第18【22】 建設資材等の運搬
河川航行中等における公衆災害の防止として,航行する水面の管理者が指定する手続き等を遵守し,施設または送電線等の工作物への接触及び衝突事故を防止するための措置を規定。

 
③第19【25】 足場等の設置・解体時の作業計画及び手順
「足場等の仮設の組立て・解体時」に対しては,事前に危険性評価等を行うとともに,災害の発生リスクが高くなる「資材の上げ下ろし作業」は,原則,作業場内で行うことや,落下物の危険性を伴う場合においては,通行止めや防護構台の設置,交通誘導警備員を配置する等の措置を規定。

 
④第42【26】 埋設物の事前確認
施工前に埋設物管理者等が所有する資料(台帳等)と設計図面等を照合することを明記。また,埋設物の位置,管理者の連絡先等を記載した標示板が明確に認識できるよう工夫するとともに,工事関係者等に確実に情報を伝達することを規定。

 
⑤第34【36】 建設機械の使用及び移動
建設機械の移動及び作業時における措置について,転倒や転落または接触による損傷事故を防止するため,作業規則を定め,工事関係者に周知徹底を図り,交通誘導警備員の配置や傾斜計測の実施,高さ制限装置の配置等,対策を具体的に規定。

 
⑥第36【37】 架線,構造物等に近接した作業
架線,構造物等に近接した作業時における具体的な措置について規定するとともに,その情報を作業員等に確実に伝達することを規定。また,特に重要な架線,構造物に近接した工事において,センサー等を使用した危険性の検知等,より高い措置の推奨等について規定。

 
⑦【第42・第43・第44】 解体建築物に関する資料の作成・構造的に自立していない部分の解体・構造的に異なる部分の解体
発注者は,解体対象建築物の情報(設計図書,増改築記録,メンテナンスや点検の記録等)を可能な限り施工者に提供することを明記。施工者は,構造的に自立していない部分の解体では,各解体段階で安定性を保つような施工計画の作成を行うことや,構造的に異なる部分の解体について,異なる構造の接合部や増改築部分と既存部分の接合部の強度等に十分配慮する等の対処を規定。

(3)制度改正や技術進展の観点からの見直し

近年,i-Construction 等の施策展開に合わせ,工事測量や検査等への無人航空機(ドローン等)の活用が進められています。また,建設機械器具賃貸業の新規購入比率が高く,建設機械のレンタル化が進んできています。一方,バリアフリー法等の制度改正も行われており,これらを踏まえて要綱の見直しを行いました。
 
①第27【32】 歩行者用通路の確保
平成18年12月施行のバリアフリー法を踏まえ,工事の実施に当たり,やむを得ず歩行者の通行を制限する場合には,高齢者や車椅子使用者等にとっても安全な歩行者用通路を確保することを規定(必要な標識や夜間照明,段差や路面凹凸解消を図る等)。

 
②第37【38】 無人航空機による操作
建設現場においてドローン等の操作を行う場合について,原則として飛行する空域の土地所有者から許可を得ることや,規制された空域を飛行する場合は,あらかじめ国土交通大臣の承認を受けることを明記。また,飛行前に安全な気象条件であること,故障等が無いこと,電源や燃料が十分であることを確認すること等,公衆災害防止のための措置を規定。

 
③第39【40】 建設機械の点検,維持管理
レンタル(持込み)建設機械を使用する場合,必要な点検整備がなされていることを確認することや安全装置が十分に機能を発揮できるように,常に点検及び整備をし,安全装置を切って使用しないことを規定。
 
 
 

3. おわりに

今回,見直しを行った要綱については,建設業法第25条の27第2項の規定に基づく技術的事項として位置付け,令和元年9月2日に告示(国土交通省告示496号)しました。この告示により,各建設現場においてより積極的に公衆災害防止に向けた対策等が行われることが期待されます。
 
また,当要綱の内容を解説した「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説(令和元年9月)」も併せてとりまとめていますので,公衆災害の発生防止対策を実施する上で参考としてください。
 
なお,下記の国土交通省のホームページアドレスから「建設工事公衆災害防止対策要綱」,「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説」等を確認することができますのでご参照ください。
 
【参考ホームページ】
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000162.html
 

建設工事公衆災害防止対策 要綱




 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課    
不動産・建設経済局 建設業課

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年12月号



 

 

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