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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 生産性向上 > 「狭小空間専用小型ドローンを活用したインフラ設備点検」の解説

 

1. 狭小空間専用小型ドローンIBIS(アイビス)について

「狭い・暗い・汚い」設備点検専用ドローンIBIS(以下,IBISとする)は,株式会社Liberaware(本社:千葉県千葉市/代表:閔弘圭)が開発・製造を手掛けている製品である(写真-1)。
狭小空間を安定して飛行することに特化している点がユニークであり,主に製造業・建設業より「人が赴くと危険な施設」や「人が赴くのに多額の費用(足場架設やゴンドラ設置,高所作業車傭車等)が発生する施設」での点検依頼が増加している。
 
現在,ドローンはホビー用の小型なものから物流用の大型なものまで,さまざまなタイプが発売されている。
これらの共通点は,「屋外の大空を効率良く飛行させることに最適化されている」ということが挙げられる。
基本的に障害物の少ない空間において,GPSやコンパス機能を駆使することにより,操作性や耐風性,飛行時間の向上を図っている。
しかしながら,これらの大空を飛行させるのに適した機能は,狭小空間を飛行させるうえでは一転して大きな障害となる。その例として以下を挙げることができる。
 
 ●ドローンの本質的な特徴として天井や壁面に吸い寄せられてしまうことから,天井や壁が常に間近にある狭小空間では安定して飛行することが難しい(写真-2)。
 ●ちょっとした衝突でも姿勢を崩して墜落してしまう。
 ●狭小空間では,ドローン自身が下に吹き降ろす風が床や壁面,天井に跳ね返ることで,ドローンに対する外乱となってしまう。
 ●屋外を飛行させる際には大変便利なGPSやコンパスといった機能は,狭小空間(特に鉄筋や鉄板を多用している施設)では使えないどころか,時に暴走させてしまう危険性を孕んでいる。
 
この他,設備点検のためには暗所でも鮮明な映像を撮影することや,粉塵の多い場所でも不具合を発生させないデバイスを用いる必要があり,屋外を飛行させるために製造された一般的なドローンでは対応できない点も多い。
 
IBISは狭小空間をできるだけ安定して飛行させることに特化して開発されたことが特徴である。
 

  • 狭小空間専用小型ドローンIBIS(アイビス)
    写真-1 狭小空間専用小型ドローンIBIS(アイビス)
  • IBISと従来品との違い
    写真上がIBIS,写真下が一般小型機。
    一般的なドローンは壁に吸い寄せられてしまい,
    狭小空間を安定して飛行することが難しい。
    写真-2 IBISと従来品との違い

  • 2. IBISが活躍している現場について

    IBISは「狭い・暗い・汚い」設備点検専用ドローンとして,煙突内や配管内,ボイラー内,天井裏,地下ピット,橋梁箱桁内等の点検用途で使用されている。
    業種としては,製鉄会社,電力会社,石油化学コンビナート,建設業といった企業からの依頼が多い(表-1)。
     
    ドローンの操縦者は安全なポジションから操作し,ドローンだけを危険なエリアに進入させるため,費用対効果だけではなく,作業者の安全性やQOW(QualityOfWork)の向上を重視する企業から評価をいただいていると感じている(写真-3,4,5)。
     

  • IBISを活用した点検の主な実績
    表-1 IBISを活用した点検の主な実績

  • 天井裏点検の様子
    写真-3 天井裏点検の様子
  • 雨水管内点検の様子
    写真-4 雨水管内点検の様子

  • エレベーター昇降路内点検の様子
    写真-5 エレベーター昇降路内点検の様子

  • 3. 動画データから3Dデータを生成する画像処理技術について

    当社では,IBISが撮影した動画データを解析・編集し,3D化,点群化,オルソ画像化する業務にも注力しており,この業務への関心が一層強まっている(写真-6,7)。
    画像処理にはSfM(StructurefromMotion)の技術を活用し,動画データから3Dデータを生成している。
     
    点検業務において,これまでの部分的な写真を中心とした報告書からドローンの動画データをアーカイブすること自体もデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼べるが,3D化することでより一歩進んだDXとなると考えている。
     
    3D化により設備の様子の一覧性が高まるため,定期的に3D化を行っておくことでクラックの成長率や設備の歪み率を正しく計測することも可能になり,経年変化を比較しやすくなる。
    こうした情報を多く蓄積することで,設備を修繕するタイミングの予測精度を高めることにつながっていく。
    製造業,建設業を問わず,TBM(TimeBasedMaintenance)からCBM(ConditionBasedMaintenance)への移行を推進しているが,定期修理のように時期を決めて半ば強制的に修繕を行う体制から,必要な時に必要なだけ修繕を行う体制への変革を図るには,点検をより頻繁に行い,修繕時期の予測精度を高める必要がある。
    IBISと画像解析技術の組み合わせが真のCBMへ導くことができると考えている。
     

  • 天井裏を点群化
    写真-6 天井裏を点群化

  • 煙突内部を3D化(写真情報入り)
    写真-7 煙突内部を3D化(写真情報入り)

  • 4. 橋梁点検事例の紹介

     ●実 施 日:2021年3月
     ●場  所:横浜市森永橋(鶴見川)
     ●点検内容:橋梁定期点検鋼床版下面(箱桁間)
     ●事 業 者:横浜市道路局橋梁課
     ●点 検 者:株式会社アジア共同設計コンサルタント,株式会社Liberaware
     
    鋼床版下面(箱桁間)の近接目視点検にあたり,作業員が箱桁間化粧板上で点検を行うことに安全上の懸念があった。そこで,従来の点検方法を見直し,新技術を採用した点検方法が検討された結果,IBISを活用した近接目視点検が実施された。
     
    ドローン操縦者は橋台の安全な場所に位置しながら,箱桁間のIBISの操縦を行った(写真-10)。土木技術エンジニアも同時にリアルタイム映像を確認することができ,IBISの飛行経路や映像撮影のアングル等について都度,指示を出しながら点検を進めた(写真-11)。
     
    IBISは暗所でも鮮明な動画を撮影できるイメージセンサーを採用した特殊なカメラを搭載しており,箱桁間の暗い場所でも点検に資する映像を収めることができた(写真-12)。
     

  • 箱桁間の様子
    写真-8 箱桁間の様子
  • 箱桁間をIBISが飛行する様子
    写真-9 箱桁間をIBISが飛行する様子

  • 操縦者は橋台の安全な位置から操縦
    写真-10 操縦者は橋台の安全な位置から操縦
  • 土木技術エンジニアもリアルタイム映像を確認
    写真-11 土木技術エンジニアもリアルタイム映像を確認

  • IBISが撮影した箱桁間の映像
    写真-12 IBISが撮影した箱桁間の映像

  • 5. IBISの仕様について

    最後にIBISの仕様を紹介して本稿を終わりたい。
     

  • IBISが撮影した箱桁間の映像

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    株式会社Liberaware 事業戦略室 マネージャー
    北川 祐介

     
     
    【出典】


    積算資料公表価格版2021年6月号


     
     

    最終更新日:2023-07-07

     

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