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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 環境と共生する技術 > グリーン購入法と公共工事におけるグリーン調達推進について

 

国土交通省大臣官房技術調査課建設システム管理企画室 課長補佐
本間 大策

 

1.はじめに

「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(平成12年法律第100号)(以下「グリーン購入法」という)は、
環境負荷の少ない物品や役務(以下「環境物品等」という)への需要の転換を促進することを目的として、
平成13年度から全面施行されています。
 
本法律は、重点的に調達を推進すべき環境物品等の調達方針を定め、それに基づき調達を推進していくというものです。
 
平成25年2月に閣議決定された「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(以下「基本方針」という)では、
国等が重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類(以下「特定調達品目」という)として266品目が定められており、
そのうち公共工事に関わるものは67品目あります。
 
本稿では、グリーン購入法と、国土交通省の調達方針について、その概要を紹介します。
 
 

2.グリーン購入法について

地球温暖化問題や廃棄物問題などの今日の環境問題の解決には、
大量生産や大量消費等の経済社会のあり方そのものを見直し、生産から流通、消費および廃棄に至るまで、
資源の効率的な利用やリサイクル・リユース等による環境負荷の少ない「循環型社会」を形成することが必要です。
このような趣旨から、平成12年5月に「循環型社会形成促進基本法」(平成12年法律第110号)が制定され、同年6月に公布されました。
 
さらに、循環型社会の形成のためには、再生品などの供給面の取り組みに加え、需要面からの取り組みも重要との観点から、
平成12年5月に循環型社会形成促進基本法の個別法の一つとして、グリーン購入法が制定されました。
 

図-1 グリーン調達の仕組み

図-1 グリーン調達の仕組み


 
グリーン購入法の仕組みは図-1のとおりです。
この仕組みのそれぞれの要素について見ていきたいと思います。
 
まず、「基本方針」の策定です。基本方針には、環境物品等の調達推進の基本的方向、特定調達品目およびその判断の基準など、
各機関が調達方針を作成する際の基本的事項などが定められています。
基本方針は、毎年度2月ごろに閣議決定され、次年度の特定調達品目の一覧および判断基準等が示されます。
 
基本方針は本文と「別記」から構成されます。
本文には、環境物品等の調達の推進に関する基本的方向、特定調達品目とその判断基準等に関する基本的事項、
その他重要事項について記載があり、毎年ほぼ同様の内容となっています。
ただし、平成25年度は本文に若干の改定が行われており、
「3. その他環境物品等の調達の推進に関する重要事項」の「(6)環境物品等に関する情報の活用と提供」について、
「また、事業者、各機関その他関係者は、特定調達物品等の調達に係る信頼性の確保に努めることとする」という一文が追加され、
一定程度の客観性の確保のための努力義務がうたわれています。
 
基本方針の「別記」は、特定調達品目のリストと、何をもって特定調達品目とするかの「判断の基準」、
「判断の基準」とまではいかないものの配慮することが望ましい「配慮事項」、その他の付記である「備考」からなります。
この部分は、毎年度、追加・削除、修正等が行われています。
 
基本方針本文には、「2.(1)エ.」に、公共工事に関して特段の記述があります。
例えば、
「公共工事の目的となる工作物は、国民の生命、生活に直接的に関連し、
 長期にわたる安全性や機能が確保されることが必要であるため、公共工事の構成要素である資材等の使用に当っては、
 事業毎の特性を踏まえ、必要とされる強度や耐久性、機能を備えていることについて、特に留意する必要がある。」とあり、
公共工事の特定調達の品目に当たっては、長期的な安全性が重視されています。
 
また、
「公共工事のコストについては、予算の適正な使用の観点からその縮減に鋭意取り組んでいることにも留意する必要がある。」とあり、
調達に際してコスト面も重視されています。
 
次に「調達方針」の作成です。
国等はグリーン購入法第7条第1項の規定に基づき、
毎年度、府省庁ごとに、基本方針に即して環境物品等の調達の推進を図るための方針を作成することとなっています。
調達方針では、特定調達品目ごとに留意点が掲げられるとともに、調達の目標値が設定されています。
 
このように、方針および目標値を決定し、これらに基づき調達を推進した後、調達実績をとりまとめます。
 
調達方針等、国土交通省におけるグリーン購入法に関わる情報については、
http://www.mlit.go.jp/tec/kankyou/green.htmlに掲載されておりますので、ご参照ください。
 
 

3.公共工事における特定調達品目について

(1)特定調達品目の公募と評価について

特定調達品目については、毎年度、民間等から広く特定調達品目を公募し、その追加および見直しを行っております。
平成26年度分は、6月3日から同28日にかけて公募を行いました。
提案された品目については、「グリーン購入法の公共工事の技術評価基準(案)」に従って審査されます。
審査に当たっては、提案者からの提出資料に加えて、
環境問題、技術基準類、技術開発動向、市場状況などの広範かつ最新の知見を考慮します。
 
まず、提案内容がグリーン調達の趣旨に沿うか否かについて、四つの観点から確認します。
一つ目は国で使用されるものかどうか、二つ目は比較対象が適切かどうか、
三つ目はすでに普及して通常品になってしまっていないかどうか、そして最後は、いまだ開発段階にとどまっていないかどうかです。
 
これらが全て満たされていると確認された後、
環境負荷低減効果、CO2排出量、廃棄・資源、有害化学物質、生物多様性、品質、普及性、経済性等の観点から審査します。
この結果、特定調達品目として問題がないと判断されたものについては、次年度の特定調達品目に追加されます。
 
もし、解決すべき課題が残っている場合には、継続検討品目群(ロングリスト)に掲載されます。
ロングリストに掲載された提案は、特定調達品目として採用されずロングリストに掲載された理由と、
その残された課題ごとに、E、Q、S、Cのグループに分類されます。
 
E:期待される環境負荷低減効果が十分か、継続的な検討が必要と考えられるもの
Q:JIS・JAS 等の公的基準に適合していないなど、品質確保について不確実性が残ると考えられるもの
S:特定調達品目に指定することにより本品目の普及を図ることができるか、継続的な検討が必要と考えられるもの
C:比較対象品と比べてコストが高いと考えられるもの、
  普及とともに比較対象品とコストが同程度になる見込みを確認する必要があると考えられるもの
 
前年度の提案募集に提案され、ロングリストに掲載された品目については、当該年度は改めて提案し直す必要はありません。
ただし、最低限の情報更新は必要で、
検証および客観的・科学的な情報の蓄積等を図るための情報を提供しないまま、掲載から2年が経過したものについては、
継続的な検討が困難となることから、次年度からロングリストから削除される場合があります。
 

(2)平成25年度特定調達品目について

平成25年度の公共工事に関わる特定調達品目は、
資材55品目、建設機械2品目、工法7品目および目的物3品目の合計67品目あります(表-1)
 

表-1 平成25年度特定調達品目(公共工事)

表-1 平成25年度特定調達品目(公共工事)


 
平成25年度の公共工事における特定調達品目は、
平成24年度と比べ、新たな品目の追加はありませんでしたが、
公共工事の共通記載部分と7品目について、以下のとおり見直しが行われています。
 
●公共工事共通の判断の基準等の見直し(共通の判断の基準および配慮事項において資材の内容を明確化)
●省エネ法トップランナー基準の改正に伴い、変圧器について判断の基準を見直し
●高炉セメント、フライアッシュセメント、エコセメントおよび高日射反射率塗料についてJIS規格適合品が判断の基準を満たす旨記載
●パーティクルボードおよび繊維板についてJIS規格の一部がホルムアルデヒド放散量に関わる判断の基準を満たす旨記載
 

(3)その他

国土交通省では、実際の公共工事において特定調達品目の調達を推進するため、
設計および施工の発注時において仕様書に、グリーン購入法に基づき、
物品使用の検討に当たっては環境への負荷が少ない環境物品等の採用を推進するよう記載しています。
 
また、毎年度の調達実績の概要をホームページで公表しています
(平成23年度の調達実績は、http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_000352.htmlからご覧になれます)。
 
 

4.おわりに

以上、簡単ではありましたが、
グリーン購入法の概要と、国土交通省における環境物品等の調達の推進の概要について紹介させていただきました。
 
公共工事は、長期品質の確保の観点から、どうしても長い間の実績がある既存の部材・工法等が採用されがちです。
しかしながら先にも述べたとおり、今日の環境問題の解決には、グリーン調達という持続可能性の観点も非常に重要な要素です。
そのため、今後とも一般からの幅広い提案募集を行いつつ、グリーン調達の推進を進めて参りたいと考えています。
 
 
 
【出典】


月刊 積算資料SUPPORT2013年12月号
特集「環境負荷低減に貢献する資機材・工法」
積算資料SUPPORT2013年12月号
 
 

最終更新日:2023-07-14

 

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