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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 公園・緑化・体育施設 > Park-PFI事業による国営海の中道海浜公園の新たな魅力創出

はじめに

国営海の中道海浜公園は,福岡県福岡市の北部に位置し,玄界灘と博多湾を隔てて志賀島へ伸びる半島「海の中道」において,北部九州における広域的なレクリエーション利用,白砂青松の良好な自然環境の保全等を目的に整備・管理運営を行っている計画面積約539haの国営公園です(令和4年4月現在で約350ha供用済み)。
 
本公園では,国による広場,遊具等の整備や花修景のほか,民間事業者等によるプール,水族館,ホテル等の整備,運営を組み合わせ,官民連携により多様なレクリエーションを提供してきました。
 
一方で,近年では少子高齢化,人口減少の進行やライフスタイルの多様化などさまざまな社会情勢の変化が生じています。本公園でも,このような変化に伴うレクリエーションニーズの変化,多様化に柔軟に対応することで,より多くの方に利用され,満足いただける公園であり続けることを目指しています。
そして,その実現のためには,本公園の整備過程を踏まえると,官民連携をさらに加速させることが重要と考えています。
 
本公園では,無料区域であるリゾートエリアにおいて,UR(独立行政法人都市再生機構)が管理・運営を行っていた2つの施設について,民間資金と経営能力・技術力を活用するPFI 事業を導入し管理運営を行っています。
 
具体的には,水族館(マリンワールド海の中道)は平成28年から「マリンワールドPFI(株)」が,ホテル(ホテル ザ・ルイガンズ.)は平成30年から「(株)海の中道リゾート」が,それぞれ管理運営を行っています。
 
事業者が施設の改修と長期間の管理運営を行うことができることから,サービス水準の向上が図られ,公園全体の利用増とともにインバウンド観光や地域活性化の拠点として寄与することが期待されます。
 
これに加え,公園の魅力をより一層向上させる新たな官民連携の取組を推進することを目的に,有料区域である「パークエリア」の一部のエリアを対象として公募設置管理制度(以下:Park-PFI)による公募を令和元年に行いました。
同年の事業者選定を経て,令和4年3月に「海の中道パーク・ツーリズム共同事業体(代表企業:三菱地所(株),構成企業:積水ハウス(株),(一財)公園財団,(株)インザパーク福岡)が,宿泊施設,アスレチックタワー,レストラン・売店,屋内遊戯施設,BBQ施設,浴場棟,乗馬厩舎,サイクリングセンター,駐車場の管理運営を開始したところです。
 
本稿では,このPark-PFI による新たな官民連携の取組を紹介します。
 
国営海の中道海浜公園

図-1 国営海の中道海浜公園
 
 

1. 官民連携による魅力向上推進方針の検討

(1)整備・管理運営プログラムへの位置付け

平成29年3月に策定した本公園の今後5年間の整備・管理運営の方針を定める「海の中道海浜公園整備・管理運営プログラム」において,園内の各施設について民間活力を活用した整備・管理運営手法の検討を行うことを位置付けました。
 

(2)現状分析

官民連携による魅力向上の新たな取組を推進するにあたり,まずは本公園のポテンシャルとその発揮状況を把握するため,平成29~30年度に公園利用状況や来園者アンケート結果等に基づき,現状の強み,課題等の分析を行いました。
 
その結果,多様なレクリエーションを提供することで多くの方に利用頂いているものの,利用者層,利用地区の偏り等の課題もあることが言え,より一層多くの方に利用頂けるポテンシャルがあると考えられました。
 

(3)マーケットサウンディング調査の実施

現状分析の結果も参考に,民間事業者の視点から見た本公園のポテンシャルを活かした事業の実現可能性を探るため,平成30年5月から約2カ月間,マーケットサウンディング調査を実施しました。
 
調査期間の初期に開催した事業者説明会には17社・グループが参加し,最終的には9社・グループから提案があり個別対話を行いました。
提案は,B地区に係る内容が最多で,他にC地区に係る内容もありました。
 
また,想定される事業効果として,利用者の少ない地区での利用者増大による園内利用の平準化,閑散期における公園利用者の増加,ファミリー層以外の利用者の増加等が挙げられました。
 
このほか,提案内容に適した事業方式,事業期間,営業時間についても提案を受けるとともに,提案内容に合わせた営業時間の変更,対象エリアの入園料の徴収方法など運営面についての課題,土地使用料,B地区への交通アクセス改善に関する意見を頂きました。
 
この調査を通じてB地区を中心に,園内のいくつかの場所において民間事業者による新たな事業が実施できるポテンシャルがあることが確認できました。
 

(4)官民連携による魅力向上推進方針の策定

現状分析とマーケットサウンディング調査を踏まえ,平成31年3月に「海の中道海浜公園官民連携による魅力向上推進方針」を策定しました。
主な内容として,まず,官民連携による魅力向上の新たな取組の推進の方針として次の4点を示しました。
 
①海の中道のポテンシャルを活かした個性ある魅力の承継,強化
②不断の新陳代謝による継続的な魅力向上
③計画段階からの民間事業者の意見の反映
④各主体が有機的に機能し,相乗効果を高める体制の確保
 
次に,方針に基づく取組を具体的に進めるため,早期に実現を目指す取組と長期的な取組を示しました。
 
早期に実現を目指す取組としては,本公園の特徴である「海」に面したB地区およびD地区のさらなる利用促進が極めて重要であること,またマーケットサウンディング調査の結果,B地区を拠点とした事業は早期に実現できる可能性が高いと確認できたことなどから,B地区を拠点としつつD地区など他地区へも広がりのある事業の早期実現を目指すこととしました。
 
また,想定事業内容を「海の中道を遊び尽くすための滞在型レクリエーション拠点の整備,運営」とし,事業手法をPark-PFI,事業期間を20年間,公募開始を令和元年夏頃とする方針を示しました。
 
長期的な取組としては,早期に実現を目指す取組をリーディングプロジェクトとして進めつつ,他の場所でも官民連携による魅力向上の取組を連鎖的に展開できるよう,次の取組を実施し,常にどこかで新たな魅力が生まれ続けるような公園を目指すこととしました。
 
①民間活力を活用するエリアのゾーニングの検討
②施設の更新時期等を踏まえた長期的,継続的な魅力向上の取組の推進
③園内の交通アクセスの改善の検討
 
なお,これら一連の調査検討は有識者等で構成する「海の中道海浜公園における官民連携再整備推進検討委員会」における審議を踏まえて進めました。
 
 

2. 事業者の公募・選定,公募設置等計画の認定

早期に実現を目指す取組については,令和元年8月に「海の中道海浜公園官民連携推進事業」としてPark-PFI の公募設置等指針を公表し,公募を開始しました。
 

【公募対象公園施設等の設置等】
(1)公募対象公園施設の設置および管理業務

①本公園でさまざまなレクリエーション活動を行う者の拠点となる宿泊施設の設置,管理(必須)
②光と風の広場駐車場の管理(従来は運営維持管理業務で管理)(必須)
③その他の公園施設の設置,管理(任意)
 

(2)特定公園施設の設計,建設および管理業務

①屋内遊び場および屋内休憩所の建設,管理(必須)
②その他の公園施設の建設,管理(任意)
 
公募の結果,2者から公募設置等計画等関係書類が提出され,選定委員会における審査および評価についての審議を経て,令和2年1月に「海の中道パーク・ツーリズム共同事業体」を公募設置等予定者として選定しました。
 
その後令和2年5月に整備・管理に関する基本協定の締結,Park-PFI事業者の提案事項を事業計画に取りまとめ,令和3年5月公募設置等計画の認定を行いました。
 

【認定された公募設置等計画の概要】
(1)全体コンセプト

公園という身近な存在でありながらも,一日中そこで過ごすことで今までにない非日常を体験することができる旅「パーク・ツーリズム」を実現する。
 
①日常の喧騒を離れた広大な公園で,その余韻に浸りながらゆっくり「憩う」
②新たな発見や創造性を高める取組によって遊びながら「学ぶ」
③宿泊による長期滞在によって公園のもつ「憩い」「遊び」の役割を最大化させる
 
以上の3つの機会提供により公園,周辺地域を最大限楽しむ「海の中道 パーク・ツーリズム」を推進し,滞在型レクリエーション施設の整備とその特性を活かした質の高いサービスを提供することが可能となり,小中学生の子どもを持つファミリー層,高校大学生カップルやグループ,ミレニアム世代,シニア世代,インバウンドと幅広い集客が期待できる。
 

(2)配置計画

①「創造性を育む新しい滞在型レクリエーション拠点」をコンセプトに海の中道を学び,憩うための宿泊施設
②対象エリアの特色ある事前環境を最大限に活かした配置,かつ運営上の効率性を意識したゾーニング
③公園内の施設という特性に則した,自然に調和して環境負荷の低いものとし,周囲と連携しやすい動線やユニバーサルデザインにも配慮した計画
④博多湾および対岸の博多都心部といった特徴的な景色を眺望できる南側エリアに,球体テント・ヴィラなどを配置することで敷地の特異性を活かす。
また,カモ池に隣接して球体テントを設置し,幻想的な景色を演出する。
 
 

3. 主な施設やアクティビティの概要

(1)宿泊施設

おひとり様からカップル,ファミリーまでさまざまなニーズに対応し,本公園を最大限に楽しむための拠点となる全4タイプ30棟の宿泊施設。

(2)浴場施設

園内により長く快適に滞在できるよう,宿泊者以外でも利用でき,博多湾を望む眺望を活かした浴場。
 

区域全体

写真-1 区域全体

宿泊施設

表-2 宿泊施設

 

(3)レストラン・BBQ施設

既存のサイクルセンターをリノベーションし,レストランとして営業するほか,福岡をはじめとした九州産の食材や素材,その生産者に光をあてることで訪れた人が地元の食材や各地域の魅力に出会い,体験できる場を提供。
 

(4)休憩施設(特定公園施設)等

すべての公園利用者が気軽に利用できる休憩施設や屋内遊戯施設を整備し,来園者の交流を促進。
 

(5)非日常を体感する多様なアクティビティの提供

博多湾の穏やかな水面,玄界灘の荒々しい海を臨む海浜部,広大な広場とその奥の松林など,本公園の特徴や魅力を生かしたアクティビティを提供。
公園を核に周辺地域へ広がるアクティビティも提供し,海の中道エリアの魅力を発掘し,遊びつくす「パーク・ツーリズム」の拠点となるよう努める。
 
①シー・ドラグーン(アスレチックタワー)
九州初登場,博多湾と玄界灘の両方を一望できる立地を活かした,子どもから大人まで楽しめる国内最大規模(高さ17m)のアスレチックタワーで,フィールドアスレチックをタワー状に配置。
 
 アスレチックタワー(シー・ドラグーン)
 
写真-2アスレチックタワー(シー・ドラグーン)
 
②乗馬厩舎
玄界灘海浜部の白砂青松と青い海,細長い地形が特徴的な「海の中道」を堪能し,四季折々の公園の魅力を学ぶ乗馬体験。
 
③ SUP,カヤック
玄界灘と比べると穏やかな博多湾の海上を利用し,SUPやカヤックなどのスポーツプログラムの提供。
 
④アウトドアフィットネス
博多湾をのぞむ広大なパノラマ空間を利用して,ヨガ,ノルディックウォークなどの屋外プログラムの提供。
 
⑤その他のプログラム
公園と志賀島をつなぐサイクリングや収穫体験,フィッシングなど,地域と連携したプログラムの提供,充実。

アウトドアリビング

写真-3アウトドアリビング

シーサイドキャビン

写真-4シーサイドキャビン

 

Park-PFI関連施設の配置

図-2 Park-PFI関連施設の配置

 
 

おわりに

令和4 年3 月にPark-PFIを活用した新たな官民連携の公園施設が,国営公園では初めて開業しました。
 
福岡都心部から30分圏内に位置するなかでくつろぎの非日常を体験できることや,計画面積約539haという広大なスケールメリットを活かし,本公園の他のエリアも含め,まさに「海の中道を遊び尽くす」ことができる環境が整ってきています。
 
今後も,変化し,多様化し続けるレクリエーションニーズに柔軟に対応し,より一層多くの方に利用され,満足頂ける公園となるため,「ALLうみなか」で取り組んでまいります。
 
 
 

国土交通省 九州地方整備局 国営海の中道海浜公園事務所 事務所長
小島 孝文

 
 
 

【出典】


積算資料公表価格版2022年8月号
積算資料公表価格版2022年8月号

最終更新日:2023-07-07

 

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