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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 どこでもトイレプロジェクト > コロナ禍におけるマンホールトイレ活用の取組み

はじめに

新型コロナウイルスによる感染症は依然として猛威を振るっており、変異株の発生等により終息は見通しが立たない状況にありますが、さらに状況の変化に伴い対策の変更を求められているようです。
 
近ごろは異常気象なのか、台風等による大雨の被害が頻発しているように感じます。
また、地震も多発しており、住民自ら避難準備をすることや、避難行動を起こすことが求められています。
さらに、災害に起因した停電や断水により、水洗トイレも使用できなくなります。
 
その場合、簡易トイレ等を使用したり、仮設トイレは設置に時間がかかったりと、トイレに関する環境は急激に悪化することから、早急に対策を講じなければなりません。
トイレは我慢できない生理現象なのです。
 
そのため、避難所にマンホールトイレを設置することは、トイレ不足を解消する減災対策であり、トイレ環境の改善を行うものでもあります。
 
 

1.東松島市のマンホールトイレの取組み

マンホールトイレの整備は、市内各避難所16カ所の整備が完了しており、今後は4 カ所の整備を計画しています。
しかし、マンホールトイレは、整備して終わりではないと考えています。
広く住民に認知してもらい、さらに使用訓練を重ねることで、発災時に混乱することなく、安心安全にそして快適に使用することができます。
 
これまで啓発活動として、イベントや学校の運動会で実際に使用する訓練を行ってきました。
運動会では、設置・運営・撤去まで、先生や保護者に参加していただき訓練を重ねてきました。
特に運営面での訓練に力を入れて実施しています。
 
さらにアンケートを聴取し、理解度や問題点の検証を行っております。

 

2.避難所のマンホールトイレの感染症対策

避難所では、「新型コロナウイルス感染症に対応した避難所運営対応マニュアル」(防災課策定)に基づき、3密を避ける等の対策や施設内のレイアウト例などが示されています。
マンホールトイレについても同様の対策を講じなければならないと感じていました。
 
そこで、これまで運動会で行ってきた訓練において、コロナウイルス感染症対策についても実践し、実効性や課題の検証を行うこととしました
写真- 1)。
 
運動会の前に、本市の保健師、小学校養護教諭と打合せを行い、考えられる問題点を抽出し、検討を行いました。
 
 

写真-1 事前打合せ

写真-1 事前打合せ


 
 

2-1感染予防のポイント
①トイレの設置台数

計画では、男性用3 基、女性用3 基、多目的トイレ1 基で、現地が密な状態にならないか、昨年
の写真と計画図により判断しました(図- 1)。
 

図-1 矢本西小学校マンホールトイレ配置計画図

図-1 矢本西小学校マンホールトイレ配置計画図


 

②マンホールトイレの設置・撤去

マンホールトイレの設置・撤去は、保護者の協力を得ることになりました。
 
作業に当たっては、事前検温、手の消毒、手袋、マスク、帽子等を着用します。
トイレ設置後は全ての施設を消毒します。
また、作業を手伝った保護者の氏名、連絡先を保管し、発症の際には接触
者の追跡を容易にします(写真- 2 〜4)。
 

写真-2 設置状況
写真-2 設置状況
写真-3 便座の組立て
写真-3 便座の組立て
写真-4 便座等の事前消毒
写真-4 便座等の事前消毒

 

③マンホールトイレの使用について

動線の誘導として出入口を分け、カラーコーン等を使用してトイレ敷地内を一方通行にします(写真- 5 〜7)。
 
ソーシャルディスタンスを保つ対策として、
「足跡マーク」などを使用し、混雑時にも1mの間隔を確保します。
 
便座とドアの消毒は、トイレ内に消毒薬を備え、使用者が便座等を消毒するように掲示します。
ドアの消毒については、使用前に手の消毒を行うため不要とします。
 
換気対策については、建屋自体に特別の開口部が無いことから、片側の天井部分を上げ、開口と
します(写真- 8)。
また、トイレ使用後に利用者がドアを開けた状態にするように、トイレ内に掲示します。
 
手洗い場は、トイレ使用後に手を洗いやすい場所に配置します。
また、液体せっけん、ペーパータオル、ゴミ箱を用意します。
特にペーパータオルは水滴飛散防止の観点から重要であると考えます(写真- 9)。
 

写真-5 動線の表示
 写真-5 動線の表示
写真-6 一方通行指導
 写真-6 一方通行指導

 

写真-7 トイレ全景
写真-7 トイレ全景
写真-8 建屋内状況
写真-8 建屋内状況

 

写真-9 手洗い場
写真-9 手洗い場

 
 

④マンホールトイレの撤去

撤去時は、雨合羽、ゴーグル、ゴム手袋、マスクを着用し、使用後は全てを廃棄処分します(写真- 10、11)。
 
便器等の洗浄には通常の洗浄剤を使用し、洗浄後は消毒薬で拭き取ります。
建屋等の備品、アメニティーは全て消毒薬で拭き取ります。
便座シューターはウイルスの付着のリスクがあるため取り扱いに注意し、ビニール袋を二重にして廃棄
します(写真- 12、13)。
 

写真-10 清掃前の保健師との打合せ
写真-10 清掃前の保健師との打合せ
写真-11 マンホールトイレの撤去
写真-11 マンホールトイレの撤去
写真-12 片付け清掃
写真-12 片付け清掃
写真-13 内部の消毒
写真-13 内部の消毒

 
 

3.感染症対策の訓練実施状況

マンホールトイレの設置については、保護者が主体的に行い、事前に打合せを行った対策をしました。
また、運営の指導等は下水道課の職員と保健師が常駐して行いました(写真- 14、15)。
 
一方、運動会は、コロナウイルス感染防止対策として、密を避けるために各演技は立ち見とし、観覧エリアには学年ごとに子どもの演技を見る保護者のみが入れる入替制となりました。
このため、トイレ利用者が分散し、トイレが混み合うことなく使用されました。
 
事後アンケートの結果は、「設備が良かった」が約80%、「マンホールトイレを災害時に利用することを知っていた」が約65%でした。
全体としては、コロナ禍のため、住民に感染症防止対策への意識があったことから、感染症対策を含め使用訓練は効果があったと考えます。
 

写真-14 手洗いの指導
写真-14 手洗いの指導
写真-15 利用状況
写真-15 利用状況

 
 

4.実施課題と今後の目標

今回の訓練の結果、以下のような課題がありました。
 

  1. 一方通行の矢印を地面に大きく表示しましたが、気が付かない人が多く、声掛けをしました。
  2. 手洗い場でペーパータオルを使用しない人に声掛けをしました。
  3. 換気対策でドアの開放を掲示しましたが、ドアにバネが付いていて閉じてしまうため、ドアストップ用にカラーコーンを置くことも考えましたが、利用者の利便性を考えて断念しました。
  4. 依然として、トイレ使用後の手押しポンプの使用を知らない人が多く、さらに使用後の手の消毒をしない人がいたため指導しました。
  5. 今回は感染予防に主眼を置いたことから、コロナウイルス感染者のトイレについては検討しておりませんでした。

 
特に5.に関しては、マンホールトイレの設置基数は、避難者数に応じた数であり、現状ではコロナウイルス感染者専用を確保することは難しいと考えられ、感染者用トイレの確保が今後の課題となります。
これについては避難所での簡易トイレ等の使用も視野に入れ、防災課と協議して対策を検討しなければならないと考えます。
 
新型コロナウイルスの感染に関しては、第7波以降の感染症対策や対応について専門家や政府の方針に変化が見られることから、本市も国の対策内容を再確認し、改善を行いながら訓練を実践していきます。
 
また、現在進めているのが、住民向け「マンホールトイレ設置運営マニュアル」の作成です。
訓練や発災時に公助なしで設置運営ができるように、住民目線で作成し、地域住民で自主運営ができることを目指します。
このマニュアルは産学官による共同作業により、今年度内の策定を目指して作業を進めています。
 
 

おわりに

東日本大震災から11 年が過ぎました。
震災の風化が懸念される中、防災意識の向上を図るためにも、使用訓練は重要であると考えています。
 
今後も運営方法を工夫し、イベントや運動会でさらなる使用訓練を行い、発災時に混乱すること無く、安心してマンホールトイレが使用できるように努めていきたいと思います。
 
 
 

東松島市 建設部 下水道課
小田島 毅

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2022年12月号

積算資料公表価格版2022年12月号

最終更新日:2023-06-26

 

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