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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 公園・緑化・体育施設 > 150周年を迎えた都市公園制度と公民連携

1.公園制度の発足と歩み~総合的なランドスケープ行政として発足

明治6年1月15日に公園設置に関する太政官布告第16 号(注1、写真-1)が公布されてから今年で150周年を迎える。
記念の年でもあり全国の地方公共団体や緑・公園関係団体ではさまざまな行催事が行われている。

写真-1 「公文録」に収録されている太政官布告第16号(国立公文書館デジタルアーカイブ所蔵)
写真-1 「公文録」に収録されている太政官布告第16号
(国立公文書館デジタルアーカイブ所蔵)

これまでの研究などからこの太政官布告は、当時の政府が進めていた地租改正政策の一環として誕生したものであることが知られている。
また、公園制度が発足する背景には、明治元年の神仏分離令、明治4 年の上地令などの影響により、社寺などが公有地化され荒廃が進んだことが布告成立の要因のひとつとして挙げられる。
公有地となった土地の保全管理のための施策として公園制度が誕生したのである。
 
この公園制度を担当していたのは、当時の大蔵省(注2)であり、地租改正政策の一環であったことから租税寮(現在の主税局に相当)において事務が所管されていた。
公園とともに名所旧跡(今日の史跡名勝)に関する事務も同じ部署が担当しており、公園の制度的なルーツをたどると公園と名所旧跡が(やや言葉が過ぎるかもしれないが)兄弟のような関係性を持っていたことがわかる。
その後、両制度の担当は内務省に移るが、ここでも公園と名所旧跡は引き続き関連の深い行政として運用されている。
この時誕生した公園をみても、日本三名園とされる水戸偕楽園、金沢兼六園、岡山後楽園や全国各地の城址公園など文化財的価値の高いものが多く含まれている。
 
その後、公園と名所旧跡の制度の受け皿となる旧都市計画法と史跡名勝天然記念物法が誕生するのはともに大正8年であるが、この時点においても両制度の所管は内務省であった(その後、昭和3年に史跡名勝天然記念物法は文部省へ移管)。
今日、都市公園は国土交通省、自然公園は環境省、史跡名勝は文部科学省においてそれぞれ所管されているが、もとをたどれば、いずれも同じルーツを持つ関連の深い制度であることがわかる。
こうして、公園制度150 年の歩みと起源をふりかえると、その原点は総合的なランドスケープ行政として発足していると言えよう。

 
 

2.都市公園の公民連携の歩み

明治6年に発足した公園制度では、その創設当初から民間事業者による飲食店等の民間施設が立地していた。
東京都の上野公園に現在も営業する韻松亭(いんしょうてい)は明治8年に、精養軒は明治9年にそれぞれ創業している(写真-2)。
 
当時の東京府では、公園の管理運営は独立採算制がとられており、これらの公園内の民間施設からの地代収入等により公園全体の管理運営が行われていた。
 
都市公園の管理法制は昭和31年に制定された都市公園法に始まるが、都市公園法においても法制度発足当初より公園管理者以外の者による公園施設の設置管理許可が制度化されている。
占用物件としてではなく、公園施設という公園本体を民間事業者が整備管理することができる仕組みが用意されていることが、他の公物管理法と異なる都市公園法の大きな特徴であり、立法当初より民間事業者とともに整備管理するという精神がビルトインされていたことになる。
 
その後、平成15年の指定管理者制度の創設、平成16年の都市公園法等の改正(設置管理許可制度の拡充、立体都市公園制度の創設など)、平成29年の都市公園法等の改正(Park-PFIの創設など)により、都市公園の公民連携の仕組みは時代とともに拡充され今日に至っている。
都市公園の150年の歩みは公民連携の歴史でもある。

写真-2 上野公園の韻松亭(明治8年創業)
写真-2 上野公園の韻松亭(明治8年創業)

 

3.都市公園の公民連携の最近の動向

(1)最近のPark-PFIの動向

平成29年都市公園法の改正において制度化されたPark- PFI制度は、全国的にその活用が進んでいる。
制度発足当初は既設の都市公園に飲食店や売店を設置し、その周辺の公園施設の整備を一体的に行うような標準的事例が多くみられたが、最近では、既設の公園だけでなく新設の公園整備と一体的にPark-PFIが用いられる事例、公園全体の大規模改修と合わせてPark-PFIを活用する事例、公園の周辺地域の整備と一体でPark-PFIを公募する事例など、事業の大規模化、複合化が進んでいる。
また、Park-PFIを展開する公園の規模も小規模なものから都道府県営公園や国営公園などの大規模なものまで多様化してきている(写真-3、4)。
さらには、施設整備を主体としたものから指定管理者制度を併用し、計画から整備、管理運営までを含む総合的なマネジメント事業として展開される事例も増加傾向にある。

写真-3 太政官布告により明治6年に開設された飛鳥山公園におけるPark-PFI
写真-3 太政官布告により明治6年に開設された
飛鳥山公園におけるPark-PFI
写真-4 100年前の関東大震災の震災復興公園である山下公園におけるPark-PFI
写真-4 100年前の関東大震災の震災復興公園である
山下公園におけるPark-PFI
(2) 公園緑地公民連携研究会

筆者が所属する一般社団法人日本公園緑地協会(以下、当協会)では、公園緑地の公民連携事業に参画する機会の多い民間企業等により組織される公園緑地公民連携研究会(以下、研究会)を設置し、事業推進上の課題等について研究を進めている。
 
これまで、3 回にわたり研究会としての提言をとりまとめるとともにシンポジウムの開催等による普及啓発活動を行ってきたところであるが、このたび第4 次提言をとりまとめ公表した。
 
第4 次提言では、Park-PFI の開業事例が増える状況下において、民間事業者・行政へのヒアリングを実施し、「過去の提言書でも述べた事項の再確認」、「開業後の段階で配慮すべき事項」および「今後予想される事態に対し現段階から備えておくべき事項」等について取りまとめを行った。
内容的には、①パートナーシップに基づく公民の相互理解と協力の継続、②認定公募設置等計画の変更に対する備えと柔軟な対応、③ Park- PFI 事業の効果を測定・分析・評価し、事業の改善につなげるための「指針」の必要性、④認定期間満了後の期間更新(将来の課題)、⑤ガイドラインの継続的な充実、の各項目について具体的な提言を行った。
 
また、研究会では、上記の提言に加え「オープンスペースの一体的活用」に関する提言として、都市再開発・エリアマネジメントに携わり、オープンスペースの活用を担う民間事業者が向き合っている課題、改善要望事項等を提言として取りまとめ公表した。
(注3)
 

(3)Park-PFI実務の手引き

当協会では、Park- PFI制度の発足に呼応し、事業の普及と推進に資するため平成30年に「都市公園における公募設置管理制度 Park-PFI活用の手引き」を発行したところである。
さらにこのたび、前述の研究会での議論やこれまで実施されてきた実例等を踏まえ、先行事例の注目すべき点や課題などを整理し、課題解決に向けた実務上のポイントを「都市公園をいかす公募設置管理制度 Park-PFI実務の手引き─12のポイントと実例─」としてとりまとめ、発行した。
本書では、ポイントとして、①公民連携の方針を定め公の意思を明確に、②公の方針と民の意向をすり合わせるには、③実施条件を定めて公募指針の策定を、④ Park-PFIと指定管理者制度の併用公募の注意点、⑤パートナーシップで最適なリスク分担を、⑥利便増進施設を有効に活用するには、⑦基本協定条項の検討は念入りに、⑧各種の行政手続き、⑨事業者選定後の公民の協議・調整は綿密に、⑩モニタリングで事業の目標や安全性・継続性の確認を、⑪欠かせないPark-PFIへの市民合意、⑫土地、建築物、インフラ等で注意すべきこと、の12項目を抽出し、Park-PFIの手続きフローに合わせて、留意事項を解説している。

 

(4)ガイドラインの改正

以上のような取組み等を踏まえ、国土交通省において、令和5年3月31日付で「都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン」の改正が行われた(注4)。
改正の主な内容は以下の通りである。

①公園全体の整備・管理運営とPark-PFIとの連携に関する項目の追加、Park-PFIと指定管理者をセットで公募するスキーム・留意点の提示など、Park-PFIを入り口とした都市公園における民間活用の拡大。

②民間活力の活用に当たって、協議会を活用する等により、利用者や地域の関係者の意見、ニーズ等を把握したうえで、公園管理者としての方針を整理するなど、地域と連携した都市公園の質の向上につながるPark-PFIの推進。

③公園管理者においても、長期にわたる事業期間中に一貫した方針を維持しながら民間事業者と連携するなど、Park-PFIの適切な制度運用の普及。

 
 

4.都市公園制度150 周年記念事業

本年令和5 年は、都市公園制度150周年の節目の年を迎えることから、これを記念し、令和5年の1年間、公園の意義や必要性を広く認識する機会とすべく、国、地方公共団体、緑・公園関係団体が連携した取組みを実施することとしている。
記念事業の実施に向けて、昨年8月に都市公園制度制定150 周年記念事業推進委員会(以下、推進委員会)が発足した。
推進委員会では、「事業実施方針」をとりまとめるとともに、一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会にロゴマークの作成を依頼し、完成したロゴマークを全国に配布したところである(注5、写真-5 ①、②)。

写真-5①,② 都市公園制度創設150周年記念事業のロゴマーク
写真-5①,② 都市公園制度創設150周年記念事業のロゴマーク

当協会では、実施方針を踏まえ、そのキックオフ・イベントとして、本年令和5 年1 月17 日に「都市公園制度制定150 周年記念フォーラム」を開催し、五十嵐康之国土交通省大臣官房審議官の基調報告、越澤明北海道大学名誉教授による基調講演などを行ったところである(写真- 6)。

写真-6 都市公園制度創設150周年記念フォーラム
写真-6 都市公園制度創設150周年記念フォーラム

また、協会ホームページにポータルサイトを設けるとともに、機関誌「公園緑地」では1年間にわたり150周年を特集した情報発信を行なうなどの取組みを進めている。
 
東京都では、都および都立公園の指定管理者からなる実行委員会を組織し、情報発信のためのポータルサイトを開設するとともに、上野公園等の150 周年を迎える公園を中心に都立公園全体でさまざまな取組みを実施している。
 
10日には、都立駒沢オリンピック公園において、上野公園のマスコットキャラクターである「うえのん」を特別アンバサダーに任命するなどのイベントが実施された。
また、太政官布告第16号が公布された1月15日を記念し、都庁庁舎やレインボーブリッジのライトアップが実施されるなど、都立公園全体で多くの記念イベントが行われている。
飛鳥山公園のある東京都北区では、「飛鳥山公園150 周年プロジェクト」が始動しており、トークセッションをはじめさまざまなイベントが展開されている。(注6)
全国の国営公園においても、それぞれの公園の特性に応じた事業等が行われている。
一足早く温かい季節を迎えている国営沖縄記念公園では、都市公園制度制定150周年記念事業として、「春到来!彩(いろどり)廻り 美ら海花まつり」が開催され、春の花・夏の花を中心に多種多様な花の展示が行われ、利用者を楽しませている(写真-7)。
また、国営明石海峡公園では、150周年を記念した「芝生の地上絵」が登場し好評を博している(写真-8)。
今後も各国営公園において、さまざまな行催事が予定されていることに加え、春季における都市緑化推進運動期間や秋季都市緑化月間を中心に全国の公園等においても150周年を記念するイベントなどが展開される予定である。
これまで3年間にわたり、コロナ禍によりさま ざまな行動制限が行われ、我々の生活に大きな影響をもたらしてきたが、ようやくそれらが解除され、新しい日常へと移行しつつある。
コロナ禍により、都市公園の持つ価値が再認識されるとともに、これまで以上に多くの利用者で賑わうようになってきている。
公園制度創設から150 周年という記念すべき年を迎えるに当たり、都市公園が持つ役割や意義について、次の時代を見据え、未来志向で考える機会としたい。

写真-7 国営沖縄記念公園の立体花壇
写真-7 国営沖縄記念公園の立体花壇
写真-8 国営明石海峡公園の地上絵
写真-8 国営明石海峡公園の地上絵

 


 

  • (注1)明治6年の公園設置に関する太政官からの通知文書は、太政官布告または太政官布達と呼称されている。
    この布告または布達の呼称については、国立公文書館や国立国会図書館等においてデジタルデータとして所蔵公開されている公文史料が複数存在し、布告または布達の呼称が混在している。
    なお、都市公園法では、附則第9 項に布告と記載されており、本稿でも、布告の呼称を用いている。
    詳しくは、浦田啓充(2023)「公文史料における明治6年太政官第16号」公園緑地第83巻第5号p55-60参照。
    併せて当協会のホームページの公開資料を参照。
    https://www.posa.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/01/ historical-materials_m6Dajokan-No16_02.pdf
  • (注2)当時の大蔵省は明治4年に民部省と合併し、財政だけでなく内政の大部分を所管する巨大官庁であった。
    また大蔵卿(大臣に相当)大久保利通は岩倉使節団に加わり外遊中であった。
    省のナンバーツーである大蔵大輔は井上馨であり、井上が実質的なトップの地位にあった。
    公園設置に関する明治6 年太政官布告第16 号は、井上馨名で大蔵省から太政官宛てに稟申されており、「公文録」には布告文書とともにその伺書も掲載されている。
    公文録のこれら文書は国立公文書館のデジタルアーカイブに所蔵されている。
    https://www.digital.archives.go.jp/
  • (注3)提言の具体的内容については、当協会ホームページ参照。
    https://www.posa.or.jp/wp/wp-ontent/uploads/2023/03/ 20230329POSAPressRelease.pdf
  • (注4)国土交通省ホームページ参照。
    https://www.mlit.go.jp/toshi/park/content/001598649.pdf
  • (注5)ロゴマークは「漢字の十を15組み合わせることで150年を表し、樹木が枝を広げ成長する様子を表現したもので、十が交差する点には錯視効果により見えない果実が浮かび上がる」ようデザインされており、ポジ型とネガ型でワンセット(どちらかのみまたは両方同時に使用可)となっており、当協会サイトにおいてダウンロード可能 https://www.posa.or.jp/topics/park150thanniversary_logo/
  • (注6)東京都立公園の「150周年記念特設サイト」はこちら https://www.tokyo-park.or.jp/Tokyopark150years/
    東京都北区の「飛鳥山公園150周年」の特設サイトはこちら https://prkita.jp/asukayama150/

 
 
 

一般社団法人 日本公園緑地協会 常務理事

浦田 啓充

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年8月号

公表価格版8月号

最終更新日:2023-07-28

 

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