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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 橋梁土木 > 中部道路メンテナンスセンターによる地方公共団体への支援の取組み

はじめに

国土交通省中部地方整備局中部道路メンテナンスセンター(以下、「中部MC」という)は、平成31年4月に開設され、直轄国道における橋梁点検結果に基づき、橋梁等の健全性診断や点検結果データの分析による劣化予測等、大規模な修繕になる「事後保全」から損傷が軽いうちに補修を行う「予防保全」に向けた対応等に取り組んでいるところである。
また、技術者が不足する地方公共団体(以下、「地公体」という)に対して、幅広いメンテナンスに関する知識の共有や技術支援などの取組みも行っているところである。
 
本稿では、中部MCによる地公体への支援として、研修・診断・修繕等の支援、会議・研修等の参画による技術支援、予防保全に関する取組み、これらメンテナンスに関する情報発信について紹介する。
 
 

1. 研修・診断・修繕等の支援

1-1 研修

中部MCでは、道路メンテナンス実務の経験の浅い地公体職員を対象に実施する橋梁およびトンネル等に関する管理実務者研修の講師を行っている。
 
本研修は、道路橋を中心とする定期点検に関して、最低限必要な知識と技能を習得することを目標とする橋梁初級Ⅰ研修を現地講習も含め5日間、年3回実施するほか、道路橋の措置(修繕)に関する座学による橋梁初級Ⅱ研修を3日間およびトンネルの点検・診断に関する研修を現地講習も含め3日間で実施される(写真-1)。

写真-1 現地講習状況
写真-1 現地講習状況

 
令和4年度には、地公体から計123名の参加があり、本研修の受講により、地公体職員の技術力向上が図られるものと考えられ、引き続き講師として、地域の人材育成の一助を担っていく所存である。

 

1-2 直轄診断・修繕代行の取組み

静岡県吉田町(以下、「吉田町」という)が管理する古川橋について、吉田町において実施した平成28年の橋梁点検により、塩害による主桁の腐食や支承等の損傷が確認された。
これら補修工法の検討には高度な技術が必要になることから、吉田町からの要請を受け、令和元年11月に「道路メンテナンス技術集団(国土技術政策総合研究所、土木研究所、中部MC)」による直轄診断を行った。
 
また、直轄診断の結果を受けて、補修に際し施工管理に高度な技術力が必要になることから、令和2年11月に吉田町からの要請を受けて中部地方整備局が修繕代行として補修工事を行い、令和4年4月に完了に伴う町への引き渡しを行った(写真-2)。

写真-2 直轄診断・修繕代行を実施した古川橋
写真-2 直轄診断・修繕代行を実施した古川橋

 

1-3 被災現場における技術支援

中部MCでは、風水害等により被災した地公体が管理する道路構造物について、地公体からの要請を受けて技術支援を行っている。
一例として直近においては、令和5年6月の台風2号およびそれに伴う前線の活発化による大雨の影響で静岡県浜松市管理の道路が斜面崩壊等により被災した際、市の要請により復旧方法について、市職員等と現地の合同調査を実施し技術的助言を行った
(写真-3)。

写真-3 現地の合同調査
写真-3 現地の合同調査

 

1-4 技術相談に関する対応

中部MCでは、地公体から橋梁・トンネル等道路のメンテナンスに関する疑問や困っていることを随時相談できるように、中部MCホームページ上に技術相談窓口を設け、「お問い合わせフォーム」(図-1)により気軽に相談できるように対応している。

図-1 技術相談窓口「お問い合わせフォーム」
図-1 技術相談窓口「お問い合わせフォーム」

これまでの代表的な相談内容の一例を図-2に列記する。
また、地公体からの相談を受け、現地調査の依頼に関しても支援を行っている。
 

●床版の補修について
●地下横断歩道の点検について
●木橋の健全性の診断について
●DIYによる止水対策について
●台風15号襲来後の橋梁点検の要請
●橋梁の耐震補強について
●トンネル補修について
●大型ボックス頂版のひび割れ補修について
●アルカリ骨材反応の措置について

図-2これまでの代表的な相談内容

 
写真-4は愛知県田原市からRC単純床板橋の補修について技術相談があり、損傷状況などの現地の合同調査を市職員と実施し、補修方法について技術的助言を行っている。

写真-4 現地合同調査の状況1
写真-4 現地合同調査の状況
写真-4 現地合同調査の状況2

 
このように中部MCでは、地公体が早期に的確な現地対応ができるようにサポートを行っている。
また、現地支援した地公体からは「過去の同じような損傷事例や対応策について的確なアドバイスをいただき、架け替えではなく修繕で対応できることが判り、助かった。」などの声をいただいている。
 
 

2. 会議・研修等の参画による技術支援

2-1 道路メンテナンス会議の参画による支援

中部MCでは、地公体が参加する各県の道路メンテナンス会議において、メンテナンスに関する知識や話題などを中部MC職員が説明する取組みを行っている。
 
令和4年度は、メンテナンスに関する知識や話題について、水処理の対策や橋梁の点検ポイントなどに関する内容を中部MC職員から説明を行っている(図-3)。

図-3 道路メンテナンス会議にてメンテナンスの知識や話題を提供
図-3 道路メンテナンス会議にてメンテナンスの知識や話題を提供

 

2-2研修等の参画による支援

中部MCでは、地公体から講習会や研修の依頼により、地公体が開催する研修等において、道路メンテナンスに関する話題、橋梁のメンテナンスに関する講義や実習など行っている(写真-5)。

写真-5 地公体での道路橋点検講習会1
写真-5 地公体での道路橋点検講習会
写真-5 地公体での道路橋点検講習会2

 
 

3. 予防保全に関する取組み

3-1 予防保全に向けた取組み

中部MCでは、損傷が深刻化してから大規模な補修を行うより、損傷が軽微なうちに補修を行う
「予防保全」への移行を推進しているところである。
しかしながら、地公体のリソースもまちまちであり、十分な措置を講じることが厳しい状況であることは否めない状況である。
 
このため、措置までの間に「損傷を遅らせる」ことを目的に、地公体の職員が自ら一時的に簡易な補修ができる工法(以下「簡易補修DIY」という)を紹介し、予防保全につながる取組みを行っている。

 

3-2 簡易補修DIYの試行事例

中部MCでは、水の進入を防ぐことが構造物の劣化の進行を遅らせる重要な対策と考え、主に水の進入経路を遮断し、構造物の部材の水かかりを防ぐ簡易補修DIYを試行しているところである。
このため、地公体が参加する各県の道路メンテナンス会議や各種講習会、橋梁初級Ⅰ研修などで
「簡易補修DIY」を紹介しているところである。
以下に、直轄国道で試行している簡易補修DIYの一部を紹介する。
ただし、簡易補修DIYは一時的な補修であることに留意する必要がある。
 
写真-6は、職員自らにより、道路橋の地覆漏水箇所などに発砲ウレタンの充填材をスプレーで簡単に注入し、水の浸入を防止した試行例である。

写真-6 発砲ウレタン充填材による水の浸入防止対策
写真-6 発砲ウレタン充填材による水の浸入防止対策

充填材は約2時間程度で硬化し漏水を防ぐことができ、施工から約1年経過後も止水効果を保っている。
 
写真-7は、壁高欄の隙間からの漏水により、鋼主桁端部および支承の腐食や床板等損傷防止を目的に壁高欄の隙間に防水シリコーン粘着シートを貼り付けた試行例である。

写真-7 防水シリコーン粘着シートによる止水対策
写真-7 防水シリコーン粘着シートによる止水対策

 

3-3 多様な主体との連携

簡易補修DIYに関しては、大学や地公体等が参加する(公社)日本コンクリート工学会中部支部の「小規模橋梁を対象としたコンクリート用DIY補修のあり方調査研究委員会」に中部MCの職員も委員として参加している。
 
簡易補修DIYの対象は、地公体に多く存在する小規模橋梁を主眼に雨水等による床板張り出し部の劣化防止を目的に水切りを設置するものである。
管理者自らが補修できるように現地での試験施工(図-4)を行うなどし、手引き書のとりまとめを行っている。
今後も引き続き、本取組みを継続し、予防保全の観点から直轄に加え地公体支援においても情報提供をしていきたいと考えている。

図-4 床板張り出し部の水切り試験施工状況
図-4 床板張り出し部の水切り試験施工状況

 
 

4. メンテナンスに関する情報発信

4-1 メールマガジンによる技術情報の発信

中部MCでは、地公体職員を対象にメンテナンスに関する身近な話題等を「わかりやすく」情報提供するために、メールマガジンの配信を月1回定期的に行っている。
 
具体的には、国土交通省・地方自治体等からの最新情報、橋梁メンテナンスに関する基礎的な知識や、最新の損傷事例や話題(新技術)、(一社)日本橋梁建設協会および(一社)プレストレスト・コンクリート建設業協会からの橋梁の基礎情報などを配信している(図-5)。
現在の登録者は中部地整管内の地公体、直轄の保全担当および産・学等(コンサル、建設会社、大学関係、新聞社等)の約560件となっている。

図-5 メールマガジンの配信について
図-5 メールマガジンの配信について

 

4-2 地公体が気軽に相談できるような取組み

地公体が中部MCに相談しやすいよう、地公体向けに道路メンテナンスでの困りごとを相談できるパンフレットを作成し、研修や講習会および地公体への訪問時に配布・説明を行い幅広くPRしている。
また、中部MCのホームページでは、動画による技術支援のサポートの様子を配信するなど、地公体が中部MCに気軽に相談できるような取組みを展開している(図-6)。

図-6 地公体が気軽に相談できるような取組み
図-6 地公体が気軽に相談できるような取組み

 
 

おわりに

中部MCでは、困ったときに「聞けば何とかなる!中部道路メンテナンスセンター」を目指し、引き続き地公体に寄り添った幅広いメンテナンスに関する知識の共有や技術支援などの取組みを行い、中部地方整備局管内の道路メンテンナンスの一助を担っていく所存である。

中部道路メンテナンスセンター公式ホームページ
中部道路メンテナンスセンター公式ホームページ

 
 
 

国土交通省中部地方整備局 中部道路メンテナンスセンター 技術第一課長 
梶浦 昌尚

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年10月号

積算資料公表価格版10月号

最終更新日:2023-09-22

 

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