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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 「いい建築」をつくる材料と工法 > 木材利用の課題と展望

1. 政策上の木材利用

地球環境の持続性を維持する中で、木材は人類が生活の豊かさを追求することが可能な資源として世界で注目されています。
日本では、カーボンニュートラルの実現という政策が産業界に注目されることで、木材の利用は二酸化炭素の吸収固定の機能に目が向けられがちです。
そのような取り上げ方のメディア、SNSも多いのですが、木材の特性は、生物資源として循環利用が可能であり、国連が定めたSDGsの17の目標のうち、目標12の「つくる責任、つかう責任」に強く関係していることを強調したいと思います。
 
木材の供給は森林の伐採行為の結果として行われることから、現代社会では森林という豊かな生態系の持続を維持しながら、木材を供給し続けられることが求められます。
一方で、地球上の人口は増え続け、その人口が活動するのに必要な資源の量は増えていきます。
そうすると、資源を循環的に利用することが地球の環境、資源へ負荷をかけない行動であり、つくる側、つかう側もそのことを意識して産業活動、生活活動を行っていかなければならないのです。
 
鉄やコンクリートをリサイクルして再利用することは、限られた鉱物資源を新たに掘り出すことなく、開発済みの資源を何度も使い続けることには意味がありますが、そのためには、熱や電気などのエネルギーや新たな資源を付加しなければなりません。
木材もカスケード利用と言われていますが、木材の再利用、木質リサイクル利用という形で、一度使ったものを繰り返し資源として使い続けることを考えていかなければなりません。
その際にはやはり、熱などのエネルギーや新たな資源(接着剤など)を付加する必要が生じる場合が多いのです。
 
しかし、木材には、鉱物資源とは異なる特性が認められます。
伐採後、新しい樹木が成長して伐採された森林を再生するという太陽のエネルギーを元にした自然の循環の中で、再び新たな資源として木材を利用するという大きな循環利用の可能性があるということです。
大部分は、太陽のエネルギーと大気や土壌が有する物質によってこのサイクルを回すことが可能かもしれません。
場合によっては、肥料などの新しい資源の付加なくしては循環のスピードを保つことが難しいかもしれませんが、できるかぎりその負荷を小さくして回すことが期待できます。
 
環境に対する負荷に気を付けつつ木材を使うことが国内外においても政策的に重要性を増していることを、PRして気付いてもらわないといけないのです。
 
一方で、国内には再生した森林資源があります。
戦中・戦後・高度経済成長期に集中した伐採後に植えた森林資源ですが、育てる期間が長かったため、山村地域の人口・経済は縮小し、森林資源を育んできた集落の存続さえ危ぶまれる状況となっています。
植えたものだけではなく、薪や炭が燃料革命で商売にならなくなり、放置されたままになっているものもあります。
その縮小、放置の期間に大きくなった森林資源は、都市部における国産材需要の喚起により、木材利用が雇用の拡大、お金の循環などを導くものとして、衰退する山村地域の活性化のキーポイントの役割を果たすことを期待されています。
木材利用の持続が途切れた30 ~ 40年間が山村社会の衰退を招きましたが、再生した資源を二度と枯渇させることなく持続的に利用していくことは、今後の山村社会の発展にとって重要となっています。
ノスタルジックな「ポツンと一軒家」になる前に何とかしなければならない待ったなしの状況にまで追い込まれています。
 
このような政策課題を解決するためのエンジンになるのが国産材需要の喚起です。
国産材需要を喚起して新しいエンジンを起動しない限り、森林資源の循環利用のサイクルは回らないまま放置されることになってしまい、先人たちの思いや努力は「夢の跡」となって、早晩忘れ去られていくこととなってしまいます。
 
 

2. 森林吸収量目標

現在、政策的には、二酸化炭素の吸収固定の機能に注目して木材需要を喚起しています。
 
気候変動を防止するために1997年に締結された京都議定書の国際的な約束の下で、二酸化炭素の森林吸収量については、当初は森林が伐採されればその時点までに吸収した二酸化炭素は排出量として算入されることになっていました。
森林経営林として間伐などの人為的な管理行為を行って吸収量を算入できていた森林が、加齢による吸収量の低下だけではなく、順次伐採時期を迎えると排出量に算入されてしまう不利を生じることになってしまいます。
そのため日本が中心となってHWP(伐採木材製品)ルールを提案し、京都議定書の第2 約束期間において、国産材が木材製品として利用されている間は自国の吸収量として算入し続けられるルールをまとめ、パリ協定下でもそのルールで算入することが確認されています。
この算入ルールを踏まえ、日本のカーボンニュートラル実現への取組みについては、木材による炭素貯蔵の拡大が森林吸収源対策の柱の一つに盛り込まれ、2030年の排出削減目標において森林・木材利用による吸収量は全体の内2.7%削減に当たるとされているところです。
 
2021年に林野庁が建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の教示に関するガイドラインを公表しました。
このガイドラインを拠り所に、先導的な建築物において木材利用がどれだけの炭素を貯蔵したのかが明示されてきています。
それは、木材を使うことについての国民の新しい理解と応援をいただくことへのキーポイントになっています。
今後はさらに、木造建築物がその建設、運営に当たって、材料の生産・調達から廃棄・再生までのサイクルの中で二酸化炭素をどれだけ排出や吸収・貯蔵するのかという、いわゆるライフサイクルアセスメントを早急に実施することが要請されています。
この分野の実証は他の産業分野に比べ遅れていることから、ここ1、2年のうちに明確にすることが求められていくでしょう。
需要拡大を進める木材の関係者はその要請に応えていかなければならないのです。
 
 

3. 木材利用に係る情勢変化

木材利用については、都市の不燃化の促進と木材不足の緩和という流れの中で1950年代に都市の建築物の木造化禁止などの決議が政治、行政、学会の各レベルで進められていきました。
当時の情勢からすれば、やむを得なかったことかもしれませんが、残念に思われるのは、この動きが徹底され、建築教育でも建築業界でも都市の木造建築が顧みられなくなったということだけではなく、日本人の心に、木の文化、木造の建造物が古臭いもの、弱いもの、近代化に遅れているものとして植え付けられてしまったのではないか、ということです。
住宅のような人の身の丈に応じたものについては、木材を使うこと、木造が好まれた面もあったのでしょうが、都市建築においては、鉄筋コンクリート造や鉄骨造のビルが、日本の未来の都市の原型になったものと思うのです。
鉄腕アトムや鉄人28号に描かれた未来の都市の姿こそが、日本人の憧れの近代都市だったのだと考えています。
 
戦後に植えられた木が大きくなるにつれて、戦後の上記のような社会経済、教育文化全体の固定した考え方を何とか変えなければ国産材の利用は拡大しないということが明らかになったと思います。
民主党(当時)政権時の森林・林業再生プランの構想策定を契機として、(非住宅)建築物の木造化の推進が追求され、2010年に公共建築物等木材利用促進法が民主党(同)政権下で法案化され、自由民主党からの大幅な修正案を受け入れることで可決・成立したことは、戦後の都市の不燃化を変えるエポックメーキングなことでした。
また、建築行政を担う国土交通省が法律の共管省庁として法案作成から関わっており、建築における都市の不燃化の軛が解けて木造建築の普及の時代が来ることを予感させる出来事だったと思います。
 
そして、国土交通省の建築行政は、「性能規定」の考え方への転換と相まって、「木は燃えるから、腐るから、弱いからダメ。木材は使えない。」というそれまでの世界を変える方向に舵を切りました。
不燃化に絡めとられた建築基準のあれこれに関し、徐々にではありますが、実験・実証により木の持つ力が認定、基準の合理化が進められ、建築物に木材が使われる可能性を広げてきたのです。
 
中でも、2015年の建築基準法の改正で準耐火建築として使用が可能になった学校の木造3階建て校舎は心に残るものでした。
私の営林署長時代、地元の学校校舎の建て替えで木造化をお願いしていましたが、地域のPTAの方々はコンクリート造にして欲しいと強く希望されていました。
子供の学び舎としての身体的、教育的効果の議論はさておき、都会への憧れを具現化するものが鉄筋コンクリート造ということに加え、弱い、燃えるといったことが校舎の安全性に及ぼす危惧を払拭できなかったのです。
 
木造3階建て校舎の実大燃焼実験のニュースは、燃える映像の衝撃もあって、かえって木造化が困難になるのではないかと心配しましたが、3年にわたる計画的な実験・実証の結果、準耐火建築で建てることが可能になりました。
1年目の心配が大きかったため、この基準の見直しは素晴らしい成果だと思っています。
木造3階建て校舎の実例はまだ少ないのですが、その実例が建築コンクールで受賞するなど安全・安心な木造建築の普及に一役買っていただいています。
 
その後も、特に耐火、防火に関する基準の見直しが重ねられ、木造化、木材利用が建築の未来に大きな窓を開けていると感じています。
 
そして、これらの動きと軌を一にして、2021年に公共建築物等木材利用促進法を見直し、木造化推進の取組みを民間建築へも拡大することを意図した通称「都市の木造化推進法」(脱炭素化社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)が、自由民主党の議員提出法案として可決・成立しました。
このことは、開いた窓が水平方向(大規模化)にも垂直方向(高層化)にも大きさを増してきているものと感じています。
 
都市の木造化推進法では、建築主の木造化インセンティブのみならず、都市建築における木材利用の課題となっている木材のサプライチェーン確立のための協定制度が措置されています(図-1)。
 
すでに70 件を超える協定が締結されているところですが、2023年6月には、ツーバイフォーコンポーネント事業者のウイング株式会社、大分県佐伯市の佐伯広域森林組合、佐伯市、そして木質大型パネル工法による木造建築の合理化を提案するウッドステーション株式会社の4者による先導的な協定が結ばれました。
 
地元木材の利用を進めるに当たり、人工林伐採後の再造林と需要に応じたツーバイフォー製材等の設備投資を確実にするため、ウイング株式会社と佐伯広域森林組合との間で一定水準の木材量と売買価格による安定取引を約束するものであり、国産材を使うことが山村地域の活性化や持続的な国土管理としての意味を持つことを明確にしたものです。
この協定では、図-1中の木材供給事業者と森林組合が同一化され、工務店のところでは、コンポーネント会社と木質大型パネル会社が連携して役割を果たすことになります。
 
このような需要に応じたサプライチェーン(ディマンドチェーン)が各地域で作られて、建築の需要と山元からの木材供給がしっかりと結びつくように事業展開していくことが期待されます。

図-1 建設事業者(工務店)の協定参画イメージ
図-1 建設事業者(工務店)の協定参画イメージ

 
 

4. 木材需給の変動への対応

2020年に第3次ウッドショックと言われる事態が発生し、我が国において輸入木材の供給不足から住宅建築を主とした木材需給がひっ迫しました。
これは、アメリカの住宅需要の急速な拡大に対しコロナの影響で縮小していた木材産業の生産回復が追いつかず、投機的な木材先物取引もあいまって米国内の木材価格が飛躍的に上昇し、米加材は輸出から米国内への供給に移行したためです。
また、港湾労働者やコンテナの不足から日本への輸出木材が大幅に減少するとともに、輸送料金も高騰するといった状態が継続しました。
 
当初は、中国に対する買い負けということも不足のきっかけであったようですが、さらに南米やロシア・ヨーロッパをはじめとした世界の木材もアメリカに向かい、日本の輸入木材全体が不足するといった事態が起こったことから、代替できる木材を求める動き(代替需要)が建築事業者の間で生じたのです。
代替材として利用された国産材にあっても、コロナ禍の影響やこれまでの国産材事業の停滞によって生じていた従業員不足や人工乾燥機の不足などで、輸入木材を代替できる量には供給の限界があったことから急速な価格上昇が発生し、2020年夏から2021年夏までほぼ1年程度にわたって高値が持続したという経過をたどりました。
 
一方で、その木材不足の状況に対する思惑から、2021年初頭から欧州材を中心とした木材製品輸入が高コストにも関わらず急速に進展しました。
またウッドショックに続くウクライナ侵攻の影響により、欧米の物価高騰と金利上昇で円安の状況となり、輸入品を中心として日本国内の諸物価が高騰しました。
そして、建設資材価格を始めとした建築関係コストの上昇や住宅ローンの金利上昇の動きから、2022年後半からはコロナ禍からの住宅着工の回復は一服しました。
特に持家の着工数は19か月連続(2023年6月末現在)で対前年度同月を下回り、現時点で10%以上の減少幅となっているのです。
この建築需要不足で、大量の輸入木材の在庫が発生し、その処理のため、競合する国産材も一緒に木材価格は2022年夏以降右肩下がりの下落傾向にあります(図-2)。
 
このウッドショックは、大きく動く国際経済情勢の下で、これまで供給が安定確実とされて来た輸入木材についても、これまでのように依存することは危うくなっていることを明らかにしました。
過剰と不足の振れ幅が予測付かないものとなり、国産材の代替による供給を一定程度確保して木材調達を安定させようとする需要者の動きも見られています。
また、木材の安定供給が今後の課題となっていることを明らかにしたことで、国産材のシェア拡大についてもチャンスがあることを示しました。
 
しかし、国際的な需給の連動の下で、供給不足から一気に需要不足に陥いるような急激な需給の変化が起こることも明らかになり、その不安定さを克服しなければ、不安定に対するその時その時の対応に疲弊し、量的にも経営規模としても小さい国内の木材産業の持続的な発展は困難と考えられます。
 
国産材利用の拡大のため、このような不安定さを克服し、輸入木材の影響を受けにくい需給構造を確立していけるかが林業・木材産業の課題となっています。
そのために、横架材やツーバイフォー材など住宅建築の中で国産材が使われてこなかった部分にも国産材の供給を増やしてシェアを拡大していかなければなりません。
横架材やツーバイフォー材で勝負するためには、林業の現場では、これまでの丸太の造材を材長から変えていくことが求められます。
 
また、新たな木材の需要先である木造のビルや大規模建築物、新奇な住宅建築様式をRC造やS造と競争できる低コストで作るためには、市場に流通している通常規格の構造材を用いる標準モデルを作ることがコストを上振れさせないためにまずは重要です。
そうした建築需要におけるシェアをもっと拡大していくためには、需要に直接に対応できる長さや大きさの木材を生産、供給するシステムの確立を模索しなければなりません。
 
さらに、未来世代への地球環境の保全のために必要な持続可能な資源の利用、SDGsの実現が、社会、経済、産業システム全体として求められる時代において、国産材の生産・利用を拡大する課題となっているのが、伐採後の再造林の確保です。
これは、川上から川下までが連携して解決しなければならない課題であり、資源の再生産、循環利用が可能となる再造林等が実現できない木材利用は社会的に排除されていくことを前提に考えていかなければならない課題です。

図-2 輸入木材の供給不足による国内への影響
図-2 輸入木材の供給不足による国内への影響

 
 

5. 森林・林業基本計画の狙い

前述のような見通しを踏まえ、目標の設定と課題の解決を政策として提示しているのが、政府の森林・林業基本計画です。
 
2030年の国産材供給量の目標を4,200万m3とし(現状は3,370万m3(2021年)、うち建築用材供給量の目標を2,600万m3(現状は1,750万m3(2021年))に置いています。
その際の建築用材の需要量は4,100万m3で、国産材シェアを6割越え(現状48%)と見通した目標設定となっているのです。
 
シェアを確保することは、一般的な木材流通における価格決定権を握り、輸入木材の供給が不安定になっている中で需給や価格を安定させ、山元から末端までの木材利用の関係者の事業の基盤となるものなのです。
見方を変えれば、輸入木材と国産材とが半々に近い現在のシェアが不安定な状況を作り、我が国のウッドショックを引き起こす要因になったとも言えるのではないでしょうか。
シェア争いが激化しているために、輸入木材を高く買えずに買い負けするということもあったのではないかと考えています。
 
また、基本計画で施策の方向として提案しているのが、国際競争力の強化と地場競争力の強化という考え方です(図-3)。

図-3 木材加工・流通体制の整備の方向性
図-3 木材加工・流通体制の整備の方向性

 
首都圏など都市圏の住宅需要において、輸入木材に対して価格や品質性能で競争力を確保する国産木材を製造販売できる体制を作るのが国際競争力の強化です。
都市圏の周囲には森林が少ない上に伐れない森も多いために、使える木材資源の豊富な森林地域で、高い生産効率や低コストで品質・性能の確かな製品を作る自動機械化された大規模工場や乾燥度や精度が高い木材を安定した量で供給できる工場などを整備して、都市の需要に応じてシェアを確保する事業運営を図らなければなりません。
輸入木材販売の機動力と営業力を凌駕できる国産材供給体制を確立することを目指しています。
ただし、このような都市圏への供給体制では輸送距離が長くなるということが物流の 2024年問題の中で大きな課題になるため、内航船や列車での運送を考えることも必要です。
 
一方、地場においては、地域の工務店等との連携のもとでニーズを把握し、ローカルで顔の見える関係の中で地域の山から木材を調達し、そのマッチングで需要に応じた製品供給を行うことが国産材利用に貢献しています。
このような工場や流通システムを支援することで、付加価値や競争力を確保するサプライチェーンを構築するのが地場競争力です。
地域産材のサプライチェーンを維持拡大し、ウッドショック時のような混乱を起こさない国産材供給を確保することとしています。
当連合会は、このような地場の中小規模の工場 が組織の構成員の主体をなしており、地場競争力の強化を政策課題にして国産材の利用拡大を進めることとした基本計画を踏まえた活動を強化していかなければなりません。
最初に述べたように、戦中・戦後・高度経済成長期の人工林の伐採後に植えた森林資源を育てる期間が長かったため、外国産材の輸入拡大に対して、地場の木材産業は国産材の供給を確保する態勢をしっかりと整えることができずにいました。
建築業界とのつながりも希薄になり、ウッドショックの際には、建築業者から国産材の入手方法がわからないと言われるような状況もありました。
今後、山元の森林資源の充実を踏まえて、地元の林業界、建築業界との連携を強化し、一体となって地場の国産木材の利用に競争力を付けていくようにする必要があります。
 
 

6. クリーンウッド法の一部改正

2023年、「つくる責任、つかう責任」に関連して、木材の利用に係る制度で大きな改正がありました。
6年前(2017年)に施行された通称「クリーンウッド法」(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)の一部改正です。
当初から、法律に内包されていた5年後の見直し検討が行われたものです。
 
検討の中で、合法性が確認された木材が占める割合が総需要量の4割強でしかないことや国際会合でも違法伐採への対策の強化が課題として取り上げられていることから、取組みの強化の必要性が認識された結果です。
 
これまでの木材関連事業者の登録制度による奨励的な取組みだったものから、山際(森林所有者や素材生産事業者から最初に丸太を譲り受ける立場にある者)・水際の木材関連事業者に対しては、木材等の譲り受け等をする場合に、合法性の確認等を義務付けるとともに、譲り渡しをする場合に合法性の確認結果の情報の伝達を義務付ける取組みです。
また、これを担保するため、これまで法律の対 象にされていなかった素材生産販売事業者に対し、木材関連事業者からの求めに応じて伐採届等の情報提供を行うことを義務付けることになっています。
合法性の確認、その情報伝達を義務付けることで合法性確認木材の占める割合を高めようというわけです。
 
木材については、EUでは生産地での伐採・流通加工の合法性のみならず、森林の持続性を担保したものでないと販売を禁止する措置もすでに法制化されており、このような合法性、持続性を担保するサプライチェーンは、地球に負荷をかけずに将来世代に良好な資源と環境を引き継ぐものとして国際社会で当たり前のこととして認知されていくはずです。
そうでないものは社会的にマーケットから排除されることになるのです。
 
2年後(2025年度から)の法律の施行に向けて、現在、林野庁で詳細な制度設計が検討されていますが、これらの世界の動きを早くキャッチアップして、国内でも当たり前のことにするために、当連合会としては合法性が確認された木材だけが流通・利用されるように取り組むことを決議することとしています。
とはいえ、これまで義務ではなかったために様子見だった中小の木材事業者がきちんとスタートラインに立ち、円滑に取り組めるよう、まずは、事業者の負担があまり大きくならない制度運用を要望しています。
 
 
 

一般社団法人 全国木材組合連合会 副会長
本郷 浩二

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年11月号

積算資料公表価格版2023年11月号

最終更新日:2023-10-24

 

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