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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 「いい建築」をつくる材料と工法 > 建築材料FOCUS 膜天井

総論

有史以前から「膜材料」はわれわれの身近にあるさまざまなものに使用されてきた。
遊牧民の住居や市場の日除け、軍事用およびレジャー用のテント、サーカスや博覧会をはじめとするイベント用施設など多岐にわたる使用形態がある。
これらに共通する一時的、短期的な使用を目的としたいわゆる“テント”としての膜材料が、日本において恒久的な「建築物」に使われ始めたのは1980年代である。
 
この頃から、東京ドームやサッカースタジアムなどの大型のものをはじめ、プラットホームの屋根やバス停の上屋など、街のあちこちで膜材料を用いた建築物が見られるようになった。
 
また、近年では膜材料を天井やファサードなど、建築物の内外装材とするなどの実例も増加している。
 

膜材料とは

建築物に使用される膜材料は、化学繊維またはガラス繊維による織物(基布)の両面に塩化ビニル樹脂やフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂をコーティングしたものが一般的である(図-1)。
 
これらの特長は、厚さはおよそ0.5~ 1.0㎜、 質量は500~1,000g/㎡程度と、非常に薄く軽量であるとともに透光性を有していることなどが挙げられる。
したがって、膜材料を用いることにより耐震性が高く独特な形状を持つ、明るく開放的な建築空間を創ることが可能である。


図-1 膜材料の構成

 

天井崩落による被害

2011年の東日本大震災をはじめ、最近頻発する地震では、建物が倒壊や崩壊に至らない場合でも天井等の内装材の崩落により、人的被害や建築物として使用できなくなる事態が多数発生している
このため、2013年(平成25年)に天井の構造に関する基準が定められた(平 25国交告第771号 特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件)。
この告示では規制の対象となる天井を「特定天井」として、その構造方法を規定しているが、膜材料を用いた天井は軽量であるため対象外としている(吊り天井でなく、天井面構成部材が2㎏/㎡以下は対象外)。
 
膜材料を建築物の天井や内装材に用いる例は告示制定前から存在していたが、これによって一気に関心が高まることとなった。
実は天井崩落事故は震災前から度々発生しており、大空間など高い位置に設置される天井が崩落した際に重大事故となる危険性は以前より指摘されていた。
このため、膜材料を用いて天井を軽量化することによる、崩落の際の被害軽減について検討が進められていた。

 

膜天井について

「膜天井」という名称が定着しはじめたのは2000年頃と考えられる(諸説あり)。
初期の膜天井の多くは建築物に用いられる一般的な膜材料や、膜屋根の結露水落下防止および室内環境改善のために屋根内膜用の膜材料を用いていたが、近年では膜天井専用の膜材料が開発され使用されるようになった。
 
膜天井用膜材料に求められる性能としては、軽量であることに加え折れジワが目立ちにくいことや、狭い空間でも施工時の取扱いがしやすいこと、膜材料表面の良質な質感(表面のツヤやテカリ具合)などが挙げられる。
膜天井用膜材料も、その多くは前述の建築用膜材料と同様に化学繊維またはガラス繊維織物+熱可塑性樹脂コーティングという材料構成であるが、新たな特徴を持った材料も登場している。
 
膜天井は崩落しにくく、また崩落しても被害が少ないというメリットに加え、さまざまな形態の天井を構成できるという点も大きな特長である。
一般的な天井のように平面的なものばかりでなく、柔らかな曲面を持つもの(写真-1)や点支持によりテントのような形状(写真-2)など膜材料の特性を生かしたさまざまなタイプが考案、設置されている。

写真-1 実例1
写真-1 実例1
写真-2 実例2
写真-2 実例2

 

おわりに

「膜天井」の最大の特長は「軽量」ということである。
所定の安全性を満たすよう設計された天井であっても、未曽有の巨大地震においては崩落するリスクは避けられない。
室内高所に設置される天井を可能な限り軽量化することが、在館者の生命を守り、被害を軽減するための重要なポイントの一つである。
 

【以上、(一社)日本膜構造協会】
 
 

建築材料FOCUS 膜天井 注目製品

太陽工業(株)の膜天井は、軽く、柔らかく、丈夫で安全・安心なだけでなく、美しく快適な空間をつくることが可能。
非構造部材の耐震化が重視されている今日、スポーツ・教育・商業・交通・公共施設などさまざまな用途の建築に使用されている。
 
太陽工業(株)の膜天井施工例

 
山口産業(株)の膜天井は、従来の「重くて硬い」天井から「軽くて柔らかい」天井とすることで、地震や劣化による脱落落下の危険性を取り除く天井材。
 
膜素材による包み込むような優しい安心感と、他の天井材には表現できないデザインの豊かさは、これまでにない空間演出を可能とする。
 
また、優れた吸音性能を持つ膜材料を使用することにより、残響時間の短い快適な室内環境を作り出すことができる。
 
山口産業(株)の膜天井施工例

 
協立工業(株)の膜天井は、改修工事では主に特定天井対策として、新築工事では安心・安全・意匠性に優れた天井材として用いられている。
 
テンションタイプ、パネルタイプ、懸垂曲線タイプの3種類の形状があり、ニーズによって選択することが可能。
 
吸音性能が求められるエントランス・ホール・体育館等のほか、湿気・塩素に強いという特性を生かし、屋内プールでも多く使用されている。
 
協立工業(株)の膜天井施工例

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年11月号

積算資料公表価格版2023年11月号

最終更新日:2023-10-24

 

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