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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 橋梁土木 > 九州道路メンテナンスセンターの地方公共団体支援について

はじめに

国土交通省九州地方整備局九州道路メンテナンスセンター(以下、「九州MC」という)は、令和4年4月13日に開設した。
九州MCでは、道路管理者に対する技術支援、直轄国道において、橋梁等(橋梁・溝橋)の健全性の診断、新技術および点検の指導等を行っているほか、地方公共団体など道路管理者に対する具体的な技術支援として、道路メンテナンスに関する技術相談を受け付けている。
なお、地方公共団体からの要請に基づき直轄診断に参画することもあり、修繕代行事業等では技術的助言を行っている。
 
また、計画研修の講師として職員の派遣や九州各県の道路メンテナンス会議技術検討部会等における橋梁点検・補修に関する技術的助言、道路橋石橋の維持・管理の検討などに取り組んでいる。
さらには、定期点検結果の遷移状況等のメンテナンスデータの管理・分析を行っている。
インフラは損傷が軽微な段階で対応できれば、大きなコストもかけずに延命することができるので、メンテナンスデータなどを管理・分析し、アセットマネジメントによる維持・管理の実現に向けて取り組んでいるところである。
 
本稿では九州MCの地方公共団体への支援内容について紹介する。
 
 

1. 地方公共団体等からの技術相談

1-1 相談状況とその内容

九州MCを設置後、地方公共団体などの道路管理者から橋梁メンテナンスに関する数多くの技術相談が来ており、それに対して技術的な助言等を行っている。
その件数は図-1の通りであり、令和6年6月28日時点で124件(R4:50件、R5:61件、R6:13件)となっている。
その内容については、図-2に示す通りであり、補修・補強に関することから、施工の積算に関することまで、幅広い内容になっている。
今後も引き続き、技術相談の状況などについて地方公共団体等へ情報提供を行い、気軽に技術相談ができるようなPR等をしていきたいと考えている。

図-1 これまでの技術相談件数(R4・R5)
図-1 これまでの技術相談件数(R4・R5)
図-2 技術相談内容(R4・R5)
図-2 技術相談内容(R4・R5)

 

1-2 被災現場における技術支援

地方公共団体への支援の一つとして、地方公共団体からの支援要請に対して専門家による現地調査の一員として参加し、助言等を行っている。
今年度(令和6年7月31日時点)では、2回の要請があり、九州MCからも現地調査を実施している。
 
一つ目が一般国道386号 三郎丸橋(大分県日田市南友田)である。
写真からも分かるように橋脚が沈下・傾斜し、上部構造も支承から逸脱し、落橋しそうな状況であった。
二つ目が一般国道504号北薩トンネル(北薩横断道路)である。
トンネルの覆工コンクリートが崩落し、土砂がトンネル内部に流入している状況であった。
これらの状況の一例を写真-1,2に示す。
このような緊急性を要する被災現場での現地調査を実施し、地方公共団体の支援を実施している。

写真-1 三郎丸橋の被災状況
写真-1 三郎丸橋の被災状況
写真-2 北薩トンネル内部の崩落状況(九州地方整備局の記者発表資料より)
写真-2 北薩トンネル内部の崩落状況
(九州地方整備局の記者発表資料より)

 

1-3 各種研修等の実施

九州MCでは、各種研修等の講師をしており、この研修等を通して地方公共団体職員の技術力向上に少なからず貢献させて頂いている(写真-3,4)。
具体的には、道路構造物管理実務者(橋梁初級Ⅰ・Ⅱ)の実施に携わっており、九州地方整備局職員だけでなく、地方公共団体職員の方々の参加者数が毎回多く、メンテナンスに関する研修のニーズの高さを再認識しているところである。
また、各県で開催している道路メンテナンス会 議等にも参加させて頂き、地方公共団体職員の方々の悩みや実際の橋梁の症例等について議論しており、今後も引き続き各種研修等を通じて、支援していきたいと考えている。

写真-3 新定期点検要領実習会
写真-3 新定期点検要領実習会
写真-4 道路構造物管理実務者(橋梁初級Ⅰ)研修
写真-4 道路構造物管理実務者(橋梁初級Ⅰ)研修

 

1-4 出張!なんでも相談会

地方公共団体からのメール等による技術相談だけでなく、直接各地へ出向き、技術相談等に応じる「出張!なんでも相談会in○○」を開催している(図-3)。
令和5年3月に初めて佐賀県鹿島市において「出張!なんでも相談会in鹿島」を開催し、地方公共団体の皆さんが多くの課題を抱えられていることが分かった。
その後、令和5年11月に福岡県北九州市で開催し、令和6年2月に鹿児島県南さつま市でも開催している。
このような取組みを通じて、地方公共団体の方々から九州MCに対してさまざまな意見・要望を頂いた。
特に多かった要望としては、「各県に出向いて対面で技術相談を行って欲しい」とのことであった。
こういった声を参考に今後も継続的に相談会を実施していきたいと考えている。

図-3 なんでも相談会の開催状況
図-3 なんでも相談会の開催状況

 
 

2. 修繕代行事業

2-1 事業の枠組み

地方公共団体への支援として、要請により緊急的な対応が必要かつ高度な技術力を要する施設について、地方整備局、国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人土木研究所の職員等で構成する「道路メンテナンス技術集団」による直轄診断を実施し、その診断の結果、診断内容や地域の実情等に応じて、修繕代行事業、道路メンテナンス事業補助等が実施されている1)
その流れは図-4に示す通りである。

図-4 直轄診断・修繕代行の流れ1)
図-4 直轄診断・修繕代行の流れ1)

 

2-2 九州地方整備局での事例

九州では呼子大橋と天大橋が直轄診断後に、修繕代行事業として実施されている(表- 1)。
 
呼子大橋は「直轄診断」を実施した結果、主桁内部に多数のひびわれの発生や強風時においてケーブル振動の発生が明らかとなったため、斜材ケーブルの振動抑制対策の見直しも視野に入れ、対策検討を速やかに行うことが極めて重要であると、国から唐津市に対して技術的助言が報告されている。
「直轄診断」報告を受けた唐津市の要請により、翌平成28年度より修繕代行事業の着手に至った。
平成28年度に実施した「修繕代行」においては、呼子大橋の損傷原因の究明と効率的かつ効果的な修繕対策を策定するにあたり、有識者及び専門技術者で構成した「呼子大橋修繕対策検討会」を設立し、検討が行われている2)

表-1 直轄診断実施箇所とその後の対応(令和4年度末時点)1)
表-1 直轄診断実施箇所とその後の対応(令和4年度末時点)1)

 
天大橋は薩摩川内市の要請により直轄診断をし、その結果、令和元年度より修繕代行事業として実施されている。
上部構造のポステン箱桁部、プレテン中空床版部に対して実施されたSEM- EDS試験およびカナダ法による残存膨張量試験の結果、ASR反応性骨材が含まれており、残存膨張率も有害の範囲であることが明らかとなった事案である3)
 
引き続き、九州MCにおいても技術的支援を実施し、またこのような修繕代行事業に関わり、微力ながら老朽化対策の一助となっていければと思っている。
 
 

おわりに

このように九州MCでは日頃の技術的な悩みについての相談や災害時の技術的な支援、研修等を通じた支援、高度な技術を要する支援など、色々な場面での支援を地方公共団体へ実施している。
今後も地方公共団体の職員の方々に寄り添った支援を実施していきたいと考えおり、九州全体のメンテナンスサイクルの効率化、高度化へ寄与できればと思う。
最後に、九州MCの技術相談窓口(図-5)を紹介し、終わりとする。

図-5 九州MCの技術相談窓口
図-5 九州MCの技術相談窓口

 
 


参考文献

1) 国土交通省、社会資本の老朽化対策情報ポータルサイトインフラメンテナンス情報、
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/03activity/03_02_05.html (令和6年8月2日閲覧)
2) 国土交通省九州地方整備局佐賀国道事務所、呼子大橋の修繕代行について、
https://www.qsr.mlit.go.jp/useful/n-shiryo/kikaku/kenkyu/h29/02/2_04.pdf (令和6年8月2日閲覧)
3) 国土交通省九州地方整備局鹿児島国道事務所、直轄診断・修繕代行 天大橋修繕代行事業、
https://www.qsr.mlit.go.jp/kakoku/works/gaiyo/r2/tentai.pdf (令和6年8月2日閲覧)
 
 
 

国土交通省九州地方整備局 九州道路メンテナンスセンター 技術課長
梶尾 辰史

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2024年10月号


公表価格版10月号

最終更新日:2024-09-20

 

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