• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 「いい建築」をつくる材料と工法 > 建築資材FOCUS 雷保護システム

総論

現在はIoTの世の中と言われ、電子機器に囲まれた状態にある。
一方、地球温暖化に伴う落雷の増加による被害が懸念されている。
 
落雷は、直撃雷での建物や人への被害だけでなく、雷サージ(雷過電圧)による電子機器の破壊、瞬停(瞬低を含む)や機器の故障、さらに、張り巡らされているネットワークの故障など、多様な被害の原因となっている。
これらの被害防止のため、雷被害対策を徹底することが重要である。
 
昨今の雷現象の詳細な解明とともに、合理的で経済的な雷保護対策は急速に進歩し、建物だけでなく内部の機器・設備の雷保護対策の確立と合わせ各種の保護機器の開発と充実化が進んでいる。
 
雷対策は、①建物と人を直撃雷から保護する「雷保護システム(LPS)」と、②建物内の電気・電子機器類を雷サージから保護する「雷サージ保護対策(SPM)」とから成っている(図-1)。

図-1 総合的な雷保護システムの構成要素と規格の関係

 

雷保護システム(LPS)

LPSは、「外部LPS」と「内部LPS」との両者で構成している。
 
前者は、受雷部、引下げ導線、接地極の各システムで構成し、接近した雷を捕捉し、迅速に大地に放流する。
後者は、雷等電位ボンディングおよび/または外部LPSとの絶縁からなり、落雷電流が外部LPSを通過する間に、火災や爆発の原因となるような危険な火花放電の発生を防止する。
なお、「内部LPS」は、あくまでも建物と人の保護のものであり、内部機器の保護のためのものではない。
 
国土交通省告示151号[令和6(2024)年3月8日発行]によって、建築基準法により、高さ20m超過の建築物に設置を義務付けしている避雷設備の構造方法が、JIS Z 9290-3:2019に規定する外部LPSに適合することと改定された(施行期日:令和7年4月1日)。
 
したがって、超高層建築物の雷保護範囲は屋上からの高さ20%までの対応で可能のため、大幅の節約が期待される。
また、既設建築物の大幅な増築・改修時にも引下げ導線の追加不要など対応が容易となる。

 

雷サージ保護対策(SPM)

建物内の機器・設備類は、落雷電流とその分流した電流、雷電流により発生した磁界の両者によって機器と接続線に発生した雷サージ(過電圧と過電流)などによって影響を受けて、故障または破損する。
これら電気・電子機器類に影響を与える雷の要素をLEMP(雷電磁インパルス)、または雷サージと称している。
 
SPMは、LEMP低減対策と、雷サージの過電圧を制限するSPD設置対策とに分けられる。
 
前者は、雷保護ゾーンの構築、磁気遮蔽と配線ルート、接地と雷等電位ボンディングなどで、接地と雷等電位ボンディングは、LPSのものを共通に利用可能である。
 
上記対策によっても、接続線へ侵入した雷サージから機器の損傷を防止するための保護機器としてのサージ防護デバイス(SPD)が必要となる。
SPDは、避雷器、保安器、アレスタなどと称していたものであり、サージ電流を分流し、サージ電圧を機器の破損電圧以下に制限するものである。
SPDは、保護する機器に応じて各種のものが用意されており、さらに、JISへの対応によって、より安全性の強化が図られた商品として、メーカーの指定するSPD分離器と併せて使用することとしている。
 

総合的な雷保護対策

雷保護対策は、国際的に確認された対策を基準としたIEC規格を基にしてJISを作成しており、充実した内容が整備されている。
 
そのため、合理的で経済的な対策を実施するには、建物や設備の計画・設計の段階からの取り組みが不可欠である。
建物の構造部材のLPS部材への活用、重要機器や設備の雷の影響を受けない配置、適切なSPDの選定など、早期段階から雷保護の専門家との協議、検討の上、全体システムの設計をすることが重要となる。
 
 
【以上、(一社)日本雷保護システム工業会】
 
 

雷保護システム 注目製品

SPD(サージ防護デバイス)

分電盤内にD種接地とELCB用接地、2つの接地端子がある場合、従来は主幹にSPDを2台設置するか、接地端子間にSPDを追加していた。
音羽電機工業(株)の製品は「分離器内蔵協約寸法SPD」に接地端子を2個設けたことで1台のSPDで配線対応でき、盤内の省スペース化を実現。
また、SPD分離器を内蔵することで外部分離器が不要となり、配線工数の削減、配線距離の短縮、省スペース化が図れる。
 
JIS協約形配線用遮断器寸法(3極用)に準拠、自動切り離し装置、SPD機能表示の安心機能を標準搭載、遠隔でも劣化確認可能な劣化接点出力対応品も用意されている。

詳細▶特集84ページ
 
(株)ダイヘンのLAN用SPD「PE- CAT6シリーズ、PE1000D」は、JIS C 5381-22(2018)【付属書F(参考)イーサネットシステムの防護】に記載されているブリッジダイオード技術を用いて、通信線間とPoE給電線間の全線間サージ電圧も制限することができるため、今まで雷害の多かったネットワークカメラへの被害の低減が期待できる。
 
高速通信と90WまでのPoE給電に対応し、PE-CAT6-Sは劣化状態や接点出力機能により遠隔監視も可能である。
また、劣化状態を確認できるPE-CAT6-C、PE1000D-Cならびに価格を抑えたPE- CAT6、PE1000Dをラインナップすることで、幅広いユーザに対応できるようになっている。

詳細▶特集85ページ
 
(株)白山の「サージプロ〈セーフテック〉Sシリーズ」は、独自の熱制御システムと特殊な遮断機能を組み合わせることにより、持続的に印加された過電圧から、より確実なアーク遮断を可能にし、雷防護素子の長寿命化を実現するSPD。
故障した際の故障表示機能、信号出力機能を標準で搭載。
UL認証規格を取得している。

 
森長電子(株)は、雷サージの破壊力を雷サージの電圧だけでなく、エネルギー(=電圧×電流×継続時間)で評価し、雷サージをエネルギーレベルで減衰させる独自の「サージエネルギー減衰方式」が大きな特長。
「新JIS規格対応型 SPD高速回線避雷ユニット」は、並列素子と直列素子を併用し、雷サージを減衰させる。
 
(株)昭電のハイエンドSPD「アスリートシリーズ」は、電源・通信線で生じる雷サージから各種機器を安全に保護する。
同シリーズの電源用SPDは全てプラグイン構造で、SPD分離器を内蔵。
SPDの保守・交換が容易で、別途分離器不要による省スペース化と配線工数の低減を実現する。
新しくNETISに登録された、クラスⅠ:AFD-Sシリーズ、クラスⅡ:AFD-Tシリーズ、電源コンセント用のTBP-2PEなどがある。
 

SPD分離器

近年、電源用SPDに許容範囲を超える電圧が作用してSPDが故障したり燃
えたりする短絡事故が増えていることから、SPDの内部素子を守るために分離器を設置して短絡電流を電源線から切り離す必要がある。
 
音羽電機工業(株)の「免雷SPD 盤」は、SPD外部分離器(ヒューズ)とSPDを盤に収納して簡単な施工を実現した。
SPD部に直撃雷用SPDを採用したクラスⅠ対応品、協約寸法SPDを採用したクラスⅡ対応品(下の写真)がある。
さまざまな用途にあわせたSPD盤が製作可能。

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2024年11月号


積算資料公表価格版2024年11月号

最終更新日:2024-10-23

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

カテゴリ一覧

新製品・業界ニュース

人気の電子カタログ

新着電子カタログ