- 2024-10-23
- 特集 「いい建築」をつくる材料と工法 | 積算資料公表価格版
総評
政府は「2035年までに、乗用車新車販売で電動車※100%を実現する」という目標を掲げ、クリーンエネルギー自動車の普及とインフラとしてのEV充電器等の設置を車の両輪として進めていくこととしている。
※電動車:EV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド自動車)、HEV(ハイブリッド自動車)
こうした中、経済産業省では2030年までに公共用の急速充電器3万口を含む充電インフラを30万口設置するとの方針を打ち出し、利便性が高く持続可能な充電インフラ社会の構築を目指している。
東京都は2025年から新築建築物へのEV充電設備設置を義務化
東京都は、EVの本格的な普及を見据え、2025年4月から新築建築物(マンション、商業施設やオフィスビル等)に一定規模のEV充電設備設置を義務付ける条例を制定した。
充電設備設置に関する義務化の条例は全国でも初となる。
この先進的な取組みにより、都内の新築建築物における充電インフラの整備が大きく進展すると期待されている。
この動きは他の各自治体へも波及する傾向にあり、自治体の保有する施設(集合住宅、公園、スポーツ施設等)にEV充電器を設置した事例は着実に増加している。
EV充電器の種類
EV用充電器は、「急速充電器」と「普通充電器」に大別され、その違いは、充電時間である。
EVバッテリーには、一般的にリチウムイオン電池が使われており、「急速充電器」は約30分程度で充電が完了する。
自動車ディーラーをはじめ、ガソリンスタンドや高速道路のサービスエリア・パーキングエリア、商業施設、道の駅等、車で移動する道中の施設に設置されているケースが多く見られ、休憩等短時間の滞在場所での充電でも充分な走行が可能になるのがメリットである。
一方、「普通充電器」の充電には、200Vで約7時間程度が必要となる。
長時間の滞在が想定される宿泊施設、商業施設、月極駐車場、集合住宅等への設置が多い。
充電速度が緩やかであるものの、小型で導入費用を安く抑えられる等の特長がある。
自動車ディーラー、商業施設、道の駅は滞在者の利用目的によって、長時間、短時間の両方の利用者が想定される。
利用目的別の充電の分類
EV充電の利用シーンは、主に自宅などで行う「基礎充電」、移動途中で行う「経路充電」、目的地で行う「目的地充電」の3つが考えられる。
例えば、移動の途中で目的地に着くまでに足りない分を補う目的で行う「経路充電」には、短時間の充電で航続距離が長い「急速充電器」の利用が適している。
「急速充電器」は、交通の要衝となるサービスエリアに複数台まとめて設置することが海外では一般的である。
一方、滞在時間の長い自宅や勤務先での「基礎充電」、「目的地充電」には、「普通充電器」の利用が適している。
利用目的ごとに使い分けを行うことで各充電器の特性を生かした設置および利用が可能となる。
設備導入等にかかる補助金
【東京都】
「充電設備普及促進事業」の運用を通じて、助成事業を行っている。
EVおよびPHEVの普及促進に向けて、都内に充電設備等を導入する場合、当該設備の導入または運営に要する経費の一部を助成する。(東京都HP参照)
【経済産業省】
「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」の運用を通じて、充電インフラ整備事業等に係るEVやPHEVの充電設備の購入費および工事費や、V2H充放電設備の購入費および工事費、外部給電器の購入費を補助する。
(経済産業省HP参照)
おわりに
ガソリン車を電気自動車に転換する「EVシフト」が実現すれば、脱炭素化に向けて二酸化炭素排出量の大幅な削減が期待できる。
とりわけ、運輸部門において二酸化炭素排出量の多くを占める自家用乗用車のEV化を促進するためには、利用者が安心してEVを購入できるよう官民ともに充電インフラ環境を整える必要がある。
自動車ディーラーや商業施設、集合住宅、ガソリンスタンド等にEV充電設備は設置されているが、民間企業だけでは設置拡大にも限界があることから、国や地方自治体によって「基礎充電」「経路充電」「目的地充電」等の目的に応じた積極的なEV充電インフラの整備が望まれており、今後の動向が注目される。
EV充電器 注目製品
充電サービス・製品
ユビ電(株)が提供する充電サービス「WeCharge」は、駐車場内に専用の充電ポートを取り付けることで、スマートフォンのアプリ操作から簡単にEVの充電ができるサービス。
コンセント型の普通充電を基本として、マンションなどの集合住宅のほか、商業・公共施設においてもユーザー拡大に努めている。
IoT技術の活用により車両登録から充電利用、⽀払いまでをアプリだけで完結できるのが大きな特長で、2023年時点で充電ポート数は約2,000口に達しており、EV普及を後押しするサービスとしても期待されている。
同社は、ソフトバンクの新規事業制度「ソフトバンクイノベンチャー」で1、000件を超える中からグランプリに選ばれ、経済産業省が制作した「行政との連携実績のあるスタートアップ100選」にも掲載されるなど実績を重ねている。
「WeCharge for Business /WeCharge for Gov」
多数の社用車・公用車を保有している、またはマイカー通勤車両の多い法人・自治体に向けて、従来の「WeCharge」を機能拡充した法人・公的機関向けのサービスである。
ニーズに合わせた最適なEV充電設備計画を策定するほか、設置施工、デマンド制御、補助金申請までワンストップで対応する。
管理ダッシュボードでEV利用状況も可視化できるなど、CO₂排出量削減に向けた社用車や公用車のEV導入をサポートする。
詳細▶特集92、93ページ
パナソニック(株)エレクトリックスワークス社の「ELSEEV hekia S Mode3」は、充電コネクタを自動車に差し込むだけで充電を可能とした電気自動車EVおよびPHEV専用の充電ケーブル搭載タイプ充電器である。
6㎾充電(※対応車種充電時)を行うことで、充電スピードが従来の約2倍となり、短時間での充電が可能となる。
また、HEMSゲートウェイのAiSEG2との連携により充電状態の可視化や充電スケジュール設定も可能となる。
同社は企業、自治体向け充電導入コンサルティングとして、EV充電インフラソリューション「Charge-ment:チャージメント」と集合住宅向けEV充電サービス「Resi-Charge:レジチャージ」を展開している。
詳細▶特集94ページ
Bell Energy(株)の「Roadie V2」は、「どこでも急速充電」をコンセプトに、外部入力設備が不要、単独での使用が可能。
固定式充電設備を置く場所がなくてもEVの充電設備を作ることができ、下記 3つの特長がある。
①20分の充電で約40km走行が可能。
②「蓄電池ユニット」に車両へ充電を行う「CHAdeMOユニット」を重ねるだけで簡単に利用可能。
③一度に蓄電池ユニット4台まで積み重ねて蓄電容量の増量が可能。
2024年から保険商品として「EV電欠時の現場駆け付け急速充電サービス」を開始。
EVの普及拡大に努めている。
九電テクノシステムズ(株)の「スマートEV充電器」は専用アプリであらゆるニーズに応えるEV充電器である。
家庭や事務所向きの個人使用向きの『パーソナルタイプ』と商業施設や集合住宅向きの総電力制御と課金機能を搭載した『ビジネスタイプ』の2つのモデルが選べる。
スマートEV充電器は下記の特長を有している。
①スマホアプリを使った機器操作や設定変更、充電器状況や充電記録をリアルタイムに確認可能。
②7.5mの充電ケーブルを標準搭載。
どの車両の充電口にも届きやすい設計。
③スマホアプリもしくは専用カードキーによる認証機能で無断使用をブロック。
④予約充電機能により電気料金が安い時間帯に充電が可能。
⑤ビジネスモデルには課金決済機能を搭載。
EV充電器の利用料金をスマートフォンで決済できる機能。
⑥ビジネスモデルには総電力制御機能を搭載。
複数台の充電器の電力出力を自動でコントロール。
スマートEV充電器は電動車両の導入
拡大・運用の経済性向上に貢献していく。
詳細▶特集88、89ページ
(株)東光高岳の「SERA(セラ)シリーズ」は、現在3種類を販売しており、充電利用が多い場所などに適した、大容量で2台のEVに同時に充電できるトータル最大120㎾(1口最大90㎾)出力の2口タイプ、50㎾/30㎾の出力で急速充電器としては設置数の多いスタンダードなタイプ、設置スペースが限られた場所やプライベート利用で2~4時間充電できる場所では、 15㎾出力で奥行が200㎜の薄型壁掛けタイプがある。
15㎾出力の薄型壁掛けタイプは、普通充電器と一般的な急速充電器の中間の出力で、今までになかった中容量急速充電器という新たなカテゴリを創出したとして、新エネルギー財団 令和5年度新エネ大賞 新エネルギー財団会長賞を受賞。
詳細▶特集90、91ページ
【出典】
積算資料公表価格版2024年11月号

最終更新日:2024-10-24
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