• お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ

建築資材、土木資材をはじめとした建設資材、機材、設備、工法等の
データを収録し、スピーディな検索を実現した建設総合ポータルサイト

建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 浸水防止用設備建具型のJIS制定について

 

はじめに

近年,大規模な集中豪雨や大型化する台風が頻発しており,大量の雨水が地下街・地下駐車場などの地下空間や建築物のエントランス部分へ侵入し,時として甚大な被害を引き起こしています。このような浸水被害に対応する方法として,今までは土のう,水のう,プランターなどの身近に用意できるもので緊急的に対応する方法が一般的でした。しかし,これらの方法では,準備に時間と労力を要するため短時間で急激に増水するような場合には対応することが難しく,また,精度よく設置できなければ十分な止水効果を発揮しないことが問題点として挙げられていました。この問題点を解決し,市民の安心・安全を確保するために,「浸水防止用設備」と呼ばれる製品の開発・普及が進んでいます。製品の更なる普及のために,性能の目安となる基準や設置条件などを早急に標準化することが求められていました。このため,一般社団法人日本シヤッター・ドア協会は,2018年1月からJIS原案作成委員会(委員長:清家剛 東京大学大学院教授)を開催し,JIS原案を作成しました。その後,原案は経済産業大臣へ申出がなされ,第16回日本産業標準調査会建築技術専門委員会(2019年9月13日開催)にて承認されました。本稿では,2019年11月20日に制定されたJISA4716(浸水防止用設備建具型構成部材)の内容について報告します。
 
 
 

1. 浸水防止用設備の概要

1-1 浸水防止用設備の種類

浸水防止用設備には図−1のようにさまざまな種類があり,大まかに①建具型(シャッター及びドア)(写真−1),②脱着型(写真−2),③開口部設置型(起伏式・スイング式・スライディング式など)(写真−3)に分類されます。これらの製品を,想定される浸水状況や設置場所の状態などに応じて適切に選択することが重要です(図−2
 

図−1 浸水防止用設備の種類


図−1、図−2 出典元:「 地下街における浸水防止用設備整備ガイドライン」2016年8月 国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室

  • シャッター型(連続構造)
    地下鉄・地下街出入口
    写真−1 建具型

  • シャッター型(単一構造)
    地下鉄・地下街出入口

  • ドア型(スイング)
    建物通用口など

  • ドア型(スイング)
    建物通用口など


  • 防水板(単一構造)
    玄関・コンビニ出入口
    写真−2 脱着型

  • 防水板(連続構造)
    地下出入口・建物外構

  • シート式
    シャッター・建具


  • 床収納起伏式(手動・電動)
    地下駐車場・建物外構
    写真−3 開口部設置型

  • 床収納起伏式(浮力)
    地下駐車場・建物外構

  • 壁収納(スイング)
    地下駐車場・建物外構

  • 壁収納(スライディング)
    建物外構



図−2 浸水防止用設備の選択フロー



1-2 浸水防止用設備の効果

浸水防止用設備を地下空間や建築物の開口部などに設置することで,降雨などにより外部から浸入する水の阻止又は軽減及び内部が浸水状態に至るまでの時間の遅延が期待できます。
 
 
 

2. JIS制定の概要

2-1 JIS制定の経緯

浸水防止用設備は,前述のとおりさまざまな種類の製品が製作されていますが,今まで製品を設置するための条件や性能を評価する基準はありませんでした。そのため,ユーザーからは,製品を導入するにあたって目安となる基準などが強く求められていました。このような状況から,ユーザーの利便性の向上,製品の安心・安全性の向上のために,浸水防止用設備のJISを制定することとなりました。しかしながら,原案作成委員会で審議した結果,止水板には多様な形態があり,一つのJISとして規格化することが難しいと判断されました。このため,まずは先行して,シャッター型の止水板と防水扉を規格化して,浸水防止性能の比較を可能とし,着脱型と開口部設置型については,今回のJIS化を見送っています。

2-2 JISの概要

(1)適用範囲[箇条1]
この規格の適用範囲は,「建築物の開口部などに用いられる浸水防止用設備のうち,建具型に分類されるシャッター型およびドア型の構成部材について規定する」としています。
 
 

(2)用語及び定義[箇条3]
構成部材の用語及び定義は,既存の規格である,JISA4702(ドアセット)及びA4705(重量シャッター構成部材)を引用したうえで,浸水防止用設備に関する用語については新たに定義しました(表−1)。
 

表−1 主な用語及び定義



(3)種類[箇条4]
浸水防止用設備には,さまざまな種類がありますが,この規格では,型式による分類(シャッター型及びドア型)及び常用・非常用の分類で種類を定めています(表−2,3)。
 

表−2 浸水防止用設備建具型の型式による分類

表−3 浸水防止用設備建具型の常用・非常用の分類


(4)等級[箇条5]
製品に求められる設定浸水高さに基づく漏水量によって,表−4のように等級を定めています。
 

表−4 漏水量による等級



(5)性能[箇条6]
浸水防止用設備建具型に求められる性能は次のa)〜e)です。
 
a)浸水防止性能
最大の設定浸水高さまでの真水の静水圧において試験を行ったとき,漏水量が0.2㎥/(h・㎥)以下であれば浸水防止性能をもつ製品としています(写真−4
 

写真−4 浸水防止性能試験(例)




主な等級が示す使用場所の目安は次のとおりです。
 
Ws-1 比較的簡易な浸水防止用設備。
一般的な土のうより浸水防止性能は高い。
多少の浸水を許容できる場所又は排水設備が設置されている場所。
倉庫,駐車場など
 
Ws-3 最も一般的に用いられる浸水防止性能。浸水に対して比較的重要度の高い場所。
機械室,一般家屋など
 
Ws-6 最も浸水防止性能が高い。重要度が高く,できる限り浸水を防止したい場所に用いる。
電気室,ポンプ室など
 
b)耐水圧性能(止水板及び扉の曲げ強さ)
耐水圧性能は,設定浸水高さによって生じる真水の静水圧又はこれと同等の負荷による試験を行ったときに,使用に不具合がないことを確認することとしています。しかしながら,実際の浸水時には,動水圧などによる想定外の負荷が発生することや,繰り返し使用による残留たわみが発生することは考慮が必要です。
 
c)操作の容易性
操作の容易性として,締付機構部品の操作力及び設置時間について規定しています。締付機構部分の操作力は,試験を行ったとき,200N以下と規定しています。また,設置時間は,試験を行ったとき,シャッター型の場合は,5分以内(電動方式)又は10分以内(手動方式),ドア型の場合は5分以内(電動方式及び手動方式)と規定しています。
 
d)開閉及び締付けの繰返し性能
開閉繰返し性能は,常用の場合は,試験を行ったとき,ドア型はJISA4702 に,シャッター型はJISA4705に規定する開閉繰返し性能に適合することとしています。また,非常用の場合は,受渡当事者間で協議し決定することとしています。
締付け繰返し性能は,200回の繰り返し試験を行ったとき,使用上有害な損傷及び変形があってはならないとしています。
 
e)開閉性能
開閉性能として,安全上の観点から,シャッター型の電動方式の場合は,閉鎖中に障害物を感知して停止する装置を設けることとしています。
 
 
(6)構造[箇条7]
浸水防止用設備は,実際の浸水時には動水圧や漂流物の影響を大きく受けますが,これらの状態を再現することは技術的に難しいため,本規格においては,真水の静水圧を止水板又は扉で受け,枠を通じて躯体などに伝える構造と規定しています。また,浸水防止用設備の各構成部材における構造は表−5のように規定しています。
 

表−5 浸水防止用設備建具型の構造




(7)寸法[箇条8]
浸水防止用設備建具型の基本的な寸法許容差は,従来のJISA4702(ドアセット)及びA4705(重量シャッター構成部材)と同等としています。しかしながら,浸水防止性能を確実に発揮させるために溶接構造とするなど,従来のドア及びシャッターと異なる構造となっている製品もあるため,特別な場合は受渡当事者間の協定によって変更が可能なように規定しています。
 
 

(8)材料[箇条9]
浸水防止用設備建具型に使用する主要な材料は,各JISに規定されるもの又は同等以上の品質のものと規定しています。止水材に関しては,現状ではゴム類を使用している場合が多いですが,ゴム類以外でも本規格の規定に満足すれば使用できるように規定しています。
 
 

(9)試験方法[箇条10]
浸水防止用設備建具型の性能(箇条6)を確認するための試験方法について規定しています。
 
 

(10)製品の呼び方[箇条12]
浸水防止用設備建具型の製品の呼び方は,型式,動作区分,等級,設定浸水高さの順に記載しています。また,非常用の分類の場合は,末尾に“非常用”と追記することと規定しています。
 
 

(11)取扱い上及び維持管理上の注意事項[箇条14]
浸水防止用設備には,ユーザーの利便性の観点から,次の取り扱い上及び維持管理上の注意事項を添付することと規定しています。
 
①操作取扱いに関する注意事項
②維持管理上の注意事項
③建築物又は工作物に設置後の品質及び性能を維持するための定期保守点検の必要性など
 
 
 

3. 今後の課題

今回のJIS制定においては,浸水防止用設備のうち,建具型(ドア型及びシャッター型)に絞った規定内容となっています。しかしながら,建具型以外の脱着型,開口部設置型(起伏式・スイング式・スライディング式など)の型式についても市場に流通していますので,今後,それらの規格化についても検討していく必要があります。そのためには,脱着型,開口部設置型の性能や安全性などをしっかりと評価できるような方法を確立することが重要です。また,建具型においても,現在は真水の静水圧における性能を規定しているため,泥水や流水,漂流物など,静水以外の条件についても考慮することが望ましいと考えられますので,考えうる要求事項について,可能な限り対応することが必要です。
 
 
 

おわりに

経済産業省国際標準課では,水災害対策に資する浸水防止用設備の普及が進む一助となるようなJISの制定又は改正などについて,業界団体などと協力して取り組んでまいります。まずは,今回制定されたJISA4716(浸水防止用設備建具型構成部材)が幅広く活用され,甚大化する水災害の抑制に貢献することを期待します。
 
 
 
 

経済産業省 産業技術環境局 国際標準課

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年5月号


 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品