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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 復旧・復興工事と建設資材の価格動向を振り返る ─市況は需給ひっ迫による値上がりから安定推移へ─

 

一般財団法人 経済調査会 土木第一部長
杉山 勉

 
平成23年3月11日,東北地方で発生した大震災は,太平洋沿岸の約500kmにおよぶ国土に未曾有の被害をもたらしました。
 
当会では,関係者様からのお問い合わせに対応するため「災害復旧資材の供給情報提供窓口」を設置し,多くのメーカーや販売会社から覆工板や土木シート,仮設ハウスなど,復旧工事に必要な資材の供給情報をお寄せいただき当会ホームページで提供して参りました。現在は,被災地域の生コンクリートや骨材の取引価格を中心に「東日本大震災 災害復旧資材供給情報」を月刊積算資料の「速報版」と併せて提供しております。
 
ここでは,この3月で震災発生から5年を迎えた被災地における建設資材のこれまでの価格推移と,供給不足に対応するための公共機関の取り組みや,最近の需給状況について報告します(図-1)。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
震災発生直後は,製油所製品の出荷停止や資材工場,ストックヤードの被災,道路や港湾設備などのインフラ被害により,供給不能な資材があり取引価格が把握できないこともありました。
 
セメント工場では,3月下旬には太平洋セメント(株)大船渡工場をはじめ,被災3県の沿岸部にある多くのサービスステーションが津波被害により,供給不能になりました。
 
型枠用合板など主要な資材においても,港での荷卸しが困難になり取引きが行われなかったため,4月調査(2011年5月号)では東北地区で価格表示ができない時期がありました。復旧工事で欠かせない覆工板などの重仮設材は,リース業界からは当会による情報提供の際に,「被災地への運搬の時に優先車両として通行証の発行を要請していることも伝えて欲しい」といった要望も寄せられました。
 
震災発生から時間が経つにつれて,がれきの撤去や,道路・河川の復旧が進み,復興需要が勢いづきました。
 
一方,需要の増加とともに,製品特性から時間的な制約があり遠方に供給できない生コンクリートは,プラントや運搬車両の喪失で十分な供給体制がとれず,需給がひっ迫しました。
 
このため,出荷コストをプラスした取引価格が形成され,特に沿岸部の生コンクリートの価格が急騰しました。
 
早期の復旧・復興が求められる中,海岸堤防,沿岸道路や復興公営住宅などの大型工事が進むにつれて資材の供給能力に懸念の声があがりました。これらに対応するため,国土交通省東北地方整備局をはじめ国の機関が管内の自治体等に参加を呼びかけた資材対策連絡会では,需給の見通しなどが協議されました。このような対応が続けられた中で,具体的な対策として生コンクリートの供給能力を上げるべく,平成26年春に宮城県気仙沼市と石巻市で宮城県が関与する形で公共プラントがそれぞれ2基新設されました。続いて夏から秋にかけては岩手県宮古市,釜石市で国が公共プラントを1基ずつ新設し稼動を開始するなど,各地域で既存の民間プラントとともに出荷対応するといった対策などにより需給は安定し,各地区の一般的な取引価格はこのところ安定した値動きになっています(図-2,図-3)。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
東北地方の復興事業は最盛期を過ぎ,生コンクリートは現在では全般的に落ち着いた取引価格で推移していますが,今後さらなる復興に向けて,宮古市,気仙沼市,石巻市,南相馬市など,各地区の工事で生コンクリートの需給がタイトになる見通しや,輸送車両運転手の不足感がより強まるとの懸念もあるため,当会では引き続き被災地における動向に注視して参ります。
 
最後になりましたが,被災された方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに,調査にご協力いただいた関係各位に感謝申し上げます。
 
 
 
【出典】


積算資料2016年04月号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最終更新日:2016-09-27

 

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