建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 路面温度の上昇を抑制する舗装技術 ─『保水性舗装』と『遮熱性舗装』─
クール舗装研究会 事務局
辻井 豪

 

1.はじめに

環境負荷として,都市部が周辺地域より高温化する現象は,一般にヒートアイランド現象と呼ばれ,人・生態系・エネルギー消費などに影響をおよぼす社会問題となっています。ヒートアイランド現象の一因として,地表面被覆の人工化(緑地の減少と舗装や建物などによる人工的被覆面の拡大)が挙げられます※1),※2)。
 
まず環境と舗装の係わりについて触れると,一般的なアスファルト舗装の路面は,夏季の日中に日射を受けると表面温度が60℃程度にまで達し,大気を加熱します。また,日中に都市内の舗装面に蓄えられた熱は,夜間の気温低下を妨げる原因になるといわれています※3)。このような熱負荷環境を改善する舗装技術として路面温度上昇抑制舗装があります※4)。
 
この日本発の舗装技術である路面温度上昇抑制舗装は,一般的なアスファルト舗装と比較して夏季の日中における路面温度の上昇を抑制することを目的とした舗装のことですが,ここでは水の気化熱を利用する保水性舗装※5)と近赤外線を高効率で反射する遮熱性舗装※6)の二つの代表的な工法について紹介します。
 
 

2.保水性舗装

保水性舗装は,日本で開発された技術で,雨水や散水により舗装体内に保水された水分が蒸発する時の気化熱で路面温度の上昇を抑制する性能をもつ舗装です。
 

(1)保水性舗装の構造

保水性舗装は,開粒度アスファルト混合物層の空隙にセメント系グラウトや細粒材などの保水材を充填させた舗装です(図− 1)。

【図− 1  保水性舗装の断面例】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
路面温度の上昇抑制機能は舗装体内に保水された水分が蒸発し,気化潜熱を奪うことにより可能としたものです。保水材として特殊セメント系グラウトを使用した場合,グラウトの硬化・乾燥後に保水可能な微細空隙を形成することで保水機能を確保しています。
 

(2)路面温度の上昇抑制

夏季の晴天時,最高気温が32℃程度の日中の路面温度測定例では,通常のアスファルト舗装に比べて保水性舗装の方が約14℃路面温度が低くなっており,保水性舗装は一般のアスファルト舗装に比べて路面温度上昇抑制効果が実証されました(図− 2)。
 

【図− 2 夏季の路面温度測定例】

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(3)保水性舗装の熱収支

舗装表面には太陽からの日射および大気や雲からの赤外放射が入射して舗装を暖めます。一方,舗装からは日射を反射するとともに,赤外放射および顕熱を上空に放出しています。このような舗装表面における熱収支モデルの例を図− 3に示します。
 

【図− 3 保水性舗装の熱収支モデル】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(4)大気温度の低減効果

路面温度の上昇を抑制することが周辺環境に与える熱緩和効果(大気温度の低減)についての試算例から,保水性舗装にすることで路面温度が14℃低減した場合,一般のアスファルト舗装と比較して舗装直上の大気温度を約1℃低減できることがわかります(図− 4)。
 

【図− 4 保水性舗装の大気温度の低減】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(5)歩行者に優しい舗装

舗装の熱が歩行者空間の熱環境に与える影響についての試算例(図− 5)から,保水性舗装は,ベビーカーに乗った幼児の高さに相当する50cmの位置で2℃程度の大気温度の上昇抑制効果が期待でき,より歩行者に優しい舗装といえます。
 

【図− 5 保水性舗装の熱環境に与える影響例】 出典:土木技術資料,Vol.47 No.7


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(6)保水性舗装の施工

保水性舗装を構成する主な材料は,母体になる開粒度アスファルト混合物と保水材です。開粒度アスファルト混合物にはポリマー改質アスファルトを使用します。保水材はグラウトミキサにより製造しますが,小規模施工の場合はハンドミキサなどでも製造できます(写真− 1)。
 

【写真− 1 保水材混合用グラウトミキサ】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
充填作業は,開粒度アスファルト舗装上にグラウト状の保水材を撒きだし,振動ローラなどで振動をかけながら行います(写真− 2)。
 

【写真− 2 保水材の充填】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(7)保水性舗装の適用箇所

保水性舗装は,一般的な舗装で対象となる車道・歩道・駐車場・広場・園路など,すべての舗装に適用できます(写真− 3,4)。
 

【写真− 3 旧街並み】

 

【写真− 4 広場・園路】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3.遮熱性舗装

遮熱性舗装とは,日本で開発された技術で,日射熱の吸収を抑えることができる遮熱材料を路面に適用した舗装のことです。
 

(1)遮熱性舗装の概念

遮熱材料は日射エネルギーの約半分を占める近赤外線の多くを反射する性質があるため,遮熱性舗装は路面温度の上昇を防ぐとともに,その上の大気を暖めにくく,ヒートアイランド対策としても有効です。また,日射熱の吸収を抑えることで,夜間には舗装からの放射熱が低減し,熱帯夜の削減にも効果的です(図− 6)。
 

【図− 6  遮熱性舗装の概念図】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(2)遮熱性舗装の特長

● 路面温度の上昇抑制:路面温度の上昇を抑制,ヒートアイランド対策
● 快適性:夏期の道路環境を改善,夜間放射熱の軽減
● 耐久性の向上:路面温度の上昇抑制に伴い,舗装体の塑性変形抵抗性が向上
● 容易な管理:機能発揮のための水分補給などが不要
● カラー化:景観に調和したカラー化が可能
● 骨材の飛散防止:遮熱材料による表面保護効果により骨材の飛散が減少
 

(3)遮熱性材料の概要

遮熱性舗装は,太陽からの熱のうち近赤外線部分のみを反射する特殊な材料(以下,遮熱性材料)を使用して,路面の温度上昇を抑制する舗装技術です。太陽熱で舗装が熱くならないため,空気を暖める輻射熱や伝導熱が小さくなり,歩行者環境の改善に繋がります。また夜間は舗装内部の蓄熱量が少ないため,輻射熱が小さく熱帯夜問題の解消への寄与も期待できます(図− 7)。
 

【図− 7  遮熱性材料の概要】


 
 
 
 
 
 
 
 
 

(4)遮熱性の原理

遮熱性材料は,波長が780nm以下の可視光域での反射率を低く抑えているため,肉眼では濃灰色に見えます。一方,赤外線域では,アスファルト(黒)が10%以下の反射で推移するのに対し,遮熱性材料(濃灰色)は90%近い高反射率を確保しており,赤外線の吸収を防止することで路面温度の上昇と舗装体への蓄熱を抑制しています(図− 8)。
 

【図− 8 遮熱性材料と汎用塗料の反射特性例】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(5)遮熱性舗装の施工

遮熱性舗装は,新設・既設を問わず,ポーラスアスファルト舗装,密粒度舗装,コンクリート舗装などの各種舗装に適用可能です。なお,塗布工法に用いる遮熱性材料には,一般的な2液硬化型樹脂系と,主に歩行者系舗装を対象にしたエマルジョン型樹脂系があります。遮熱コート層は2層に分けて所定量を塗布します(写真− 5)。
 

【写真− 5 遮熱性舗装の施工状況例】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(6)遮熱性舗装の適用箇所

遮熱性舗装は,一般的な舗装で対象となる車道・遊園地・バス停・公園・歩道・駐車場・商店街など,全ての舗装に適用できます(写真− 6,7)。
 

【写真− 6 遮熱性舗装の施工例】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【写真− 7 赤外線カメラによるサーモグラフィー画像】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

4.おわりに

一般的なアスファルト舗装を路面温度上昇抑制舗装にすることで,夏季の日中における舗装の路面温度をかなり低下させることは確認できていますが,この温度低下がどの程度,環境負荷の軽減に寄与するかについては,まだ一定の評価に至っていないのが現状です。
 
路面温度上昇抑制舗装研究会では,沿道住民や歩行者への熱負荷軽減に向けて保水性舗装や遮熱性舗装の普及と技術の向上に努めており,各々の特長を踏まえた“適材適所”への普及が肝要と考えています。路面温度上昇抑制舗装のさらなる普及と発展には,沿道住民や歩行者に体感できる効果を分かり易く説明することが重要です。また,性能や耐久性のさらなる向上が不可欠であり,人に優しい舗装技術として,環境改善を取り巻く地域づくりに組み入れてもらえるように,今後も会員各社の協力のもと,工法の普及や周辺技術の研究を進めたいと考えています。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
<参考文献>
※1) 舗装委員会 環境・再生利用小委員会「環境改善を目指した舗装技術(2004年版)」日本道路協会,2005年3月
※2) 舗装委員会 環境・再生利用小委員会「環境に配慮した舗装技術に関するガイドブック」日本道路協会,2009年6月
※3) 藤野ほか:保水性舗装による都市の熱環境緩和効果の検討,舗装,Vol36 No.5,2003年11月
※4) 路面温度上昇抑制舗装研究会「路面温度上昇抑制機能を有する保水性舗装と遮熱性舗装」道路,Vol.848,2011年11月
※5) 辻井豪「夏期に路面温度の上昇を抑制する保水性舗装」土木施工,Vol.52,No.5,2011年5月
※6) 村岡克明「遮熱性舗装によるヒートアイランド現象の緩和と舗装耐久性の向上」土木施工,Vol.52,No.5,2011年5月
 
 
 
【出典】


積算資料2016年06月号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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