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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 表面に凹凸がある護岸背面の空洞化を調査する技術 〜東北地方整備局の取り組み〜

 

1. はじめに

わが国の社会資本ストックは,高度経済成長期などに集中的に整備され,今後急速に老朽化することが懸念されている。このことから,社会資本を安全に,より長く利用できるよう,劣化や損傷の状況を確実に把握することで,戦略的な維持管理・更新を行うことが今後必要となってくる。
 
護岸の機能を低下させる沈下や吸い出しの変状点検については,現在,近接目視,打音調査,物理探査等により確認している。しかし,護岸の形状や覆土の状況により確認が困難な護岸があり,護岸を一部除去して確認するなどの方法をとっているのが現状である。
 
護岸表面に凹凸がある形状のものでも,護岸背面の空洞や,護岸範囲を非破壊で迅速に確認できる新技術を活用して,早期の状況把握および確実な対策ができるよう期待されている。
 
本稿では,公共工事における新技術活用システムを活用し,「テーマ設定型(技術公募)」に基づき,東北地方整備局が公募を行った「表面に凹凸がある護岸背面の空洞化を調査する技術」について報告するものである。
 

写真- 1 調査対象護岸




 

2. 技術公募の概要

求めた要求性能は,以下のとおりである。
 



 
(1)調査対象護岸
①河川堤防における低水護岸,高水護岸,堤防護岸(水門等構造物周辺の条件護岸,特殊堤を含む)※水中部にある護岸は対象外。
②表面に凹凸がある護岸の内,「コンクリート格子張護岸」を対象とする。※連接ブロック・植生ブロックを用いた護岸,石積み護岸,かご工護岸,覆土護岸は対象外。
 
(2)物理探査等の従来技術
①電磁波を用いた技術。「地中レーダ探査」を想定。パルス長,中心周波数,探査深度,分解能,データファイル形式等の仕様を明示すること。
 
(3)要求する新技術性能の具体例
①護岸の表面形状(凹凸)に影響されない調査性能および解析方法・手段【必須】
 例: 20cmまでの段差であれば標準仕様で調査可能。
  精密な測位データ補正とデジタル波形処理により解決。
②調査効率の向上
 例:現地調査日数の短縮(7日→ 3日)
 例:解析日数の短縮(20日→ 10日)
③探査能力の向上
 例:深度2mまで→深度5mまで向上
 例:分解能10cm→分解能2.5cmまで向上
 例: 経験的画像パターン解析を高精度波形データ処理により,空洞厚さ1cm以下
 
以上の要求性能を踏まえ,平成26年11月25日〜12月12日まで公募を行った。
 
 

3. 応募技術の概要

応募があった1技術の概要は以下のとおりである。
 
(1)護岸背面・空洞可視化システム
 高精度GPRによる表面に凹凸があるコンクリート護岸背面の空洞化領域可視化システム
 ※GPR:Ground Penetrating Radar=地中レーダ
 



 
 

4. 技術の検証

応募があった技術について,ヒアリングおよび新技術活用評価会議の審議により,要求性能を満足することを確認し選定した。
 
現場検証は,東北地方整備局管内の凹凸があるコンクリート格子張り護岸を対象に,経済性,検査・分析に要する時間,精度,確実性,検査・分析に係る汎用性等について評価を実施した。
 

図- 1 調査フロー




 
 

写真- 2 データ取得状況




 
 

写真- 3 カート型地中レーダ




 
 

図- 2 解析範囲




 
 

図- 3 解析結果の比較




 
 

図- 4 削孔調査結果




 
 

写真- 4 コア削孔による確認




 

5. 検証結果

(1)施工性
調査機器は,軽量(25kg)かつ小型(50cm×50cm)で,調査に要するスペースは小さくて良い。また,車輪付きのカートタイプのため,運搬・調査において騒音もなく,操作性に優れている。
 
空洞解析は,必要に応じて分解能の異なる2種類の中心周波数(300MHzと800MHz)データを使用することが可能であり,アウトプットデータは,空洞分布のコンター図も作成することが可能であり,汎用性にも優れている。
 
(2)適応性
適用可能な護岸勾配は,1:1.5まで,格子張り護岸の格子高さは,8cmまでであり,これ以上の現場には適用できない。
基礎工が密な砕石条件では解析可能であるが,空隙率の大きい条件では解析が不可能である。
 
(3)総合評価
適用条件を満足する現場では,従来技術では判定できない空洞厚分布を把握できる技術である。
 
空洞分布解析に要する時間は増加する傾向である。しかし,解析精度の向上により,現場でのコア削孔箇所数が大幅に削減できるため,結果としてコスト縮減が図られると思われる。
 
 

6. おわりに

テーマ設定型技術公募は,現場で困っていることや,ニーズに見合った技術を迅速かつピンポイントで対応できる取り組みである。
 
テーマ設定型技術公募は,現場ニーズに対応した新しい技術の掘り起こし,活用促進の効果を期待できるものと思われる。
 
なお,今回検証・評価した成果については,NETIS維持管理支援サイトにおいて,公開している。
http://www.m-netis.mlit.go.jp/
 



 

筆者

国土交通省東北地方整備局企画部施工企画課 課長補佐
布宮 明道
 
 
 
【出典】


積算資料2016年11月号



 

最終更新日:2017-03-06

 

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