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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 仮設資材 > 重仮設材の役割

 

はじめに

本協会は,鋼矢板,H形鋼,鋼製山留,覆工板といった重仮設材を中古品含めて保有し,顧客からの要望に応じてリースおよび販売,また施工に対応している会員12社で構成されます(図-1)。昭和50年の発足以来,さまざまな基準の制定や改訂を執り行い現在に至っています(表-1)。
 
また,重仮設材の施工ならびに賃貸の業務に関し,広く知識を内外に求めながら調査,研究を継続的に行い,建築土木の基礎仮設材および施工・工法の技術改善と安全の向上を追求し,法令順守のもと建設産業の健全な発展に寄与するとともに,環境に配慮した循環型社会への貢献を果たすことを目的としています(図-2)。
 

図-1 主な重仮設材




 

表-1 沿革(抜粋)




 

図-2 本協会の理念




 

1. 事業内容

1-1 事業内容紹介

目的の実現に向けて重仮設に関連する諸問題を解決し効率的な運用を可能とするため,技術・工場・工事に関する調査研究,関係機関への協力・建議・請願,安全に関する統計データ収集や研修会・講習会の開催,参考図書の刊行,統計資料の作成などを行っています。
 
 

1-2 調査・研究

①「保有長,スクラップ長一覧表」策定
全国を10地区に分け,それぞれの地区の会員が保有している重仮設材の品種,サイズ,スクラップ長(保有最低長さ)などを定めています。これらは,発注官公庁,設計コンサルタント,顧客向け資料として利用されており,設計する際の積算資料としても活用されています。
 
②統計資料
重仮設材の総保有量,稼働量,稼働率,賃貸売上高のデータを国土交通省の「建設関連業界の動態調査報告」に提供しており,建設統計行政の一端を担っています。
(詳しくは国土交通省ホームページをご覧ください。http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000011.html
 
 

1-3 技術・品質向上のための情報発信

①技術・工事講習会の実施
技術ならびに工事担当者向け講習会を東京および大阪でそれぞれ年一回開催しています。これは技術・工事担当者向けの講習会で,「トラブル事例」を紹介することで,現場でのトラブル回避に役立てるとともに,外部講師による講習などを行い,若手技術者の育成や技量向上の助成に貢献しています。
 
 
②「知っておきたい山留め・構台計画の知識」発刊
若手技術者の実務の手助けとなるガイドブックとして,2018年1月に改訂版を発行しました。重仮設材関連の「計画」「設計」「施工」各段階での設計施工管理を行うための参考書として活用されることを念頭に置いており,会員への配布により会員のレベルアップが期待されます。最新の基準や仕様に加えて,建設業界で用いられている特有の用語を収録する他,文章表現だけでなく図や写真を用いて分かりやすく編集したため,会員より高い評価を得ています(写真-1)。
 

写真-1 「知っておきたい山留め・構台計画の知識」




 

③協会基準のジョイント形状制定
会員への技術資料提供の一環として,鋼矢板,H形鋼の各サイズごとのボルトならびに溶接継手の標準仕様を規定し提供しています。これらは協会の共通仕様として会員各社で利用され,計算実務の軽減化に寄与するとともに,対外的にも必要な資料として活用されています(図-3)。
 

図-3 H形鋼のボルト継手一般図




 
④「検収基準書」の制定・発行
重仮設材返却時の検収基準を制定し,「検査基準書」として対外的に発行しています。これは重仮設材使用後に返却される際の検収のバラつきを防止する意味で発行しており,広く活用されています。重仮設材の品質向上や安全性の確保にも重要な役割を果たしています(写真-2)。
 

写真-2 検収基準書




 

2. 安全への取組み

2-1 安全管理セミナーの開催

全国で年4回の安全管理セミナーを開催しています。「災害事例」の紹介や外部講師による安全講話などにより,労働災害対策の教訓を伝え,安全の啓蒙を行っています。対象は会員企業の社員だけでなく,協力会社の社員にもおよんでおり,工事・工場・運送の各部門の管理者,作業員に対して安全への考え方を浸透させ,労働災害を防ぐための内容になっています(写真-3)。
 

写真-3 安全管理セミナーの様子




 

2-2 現場安全パトロールの実施

毎年全国各地において工場安全パトロールを年2回,現場安全パトロールを年5回実施し,安全の啓蒙に努めています。ここでは,実際に発生した災害の事例などを参考にして,現場での安全設備の具体的活用方法や法令の考え方などを説明し,実践に即した対応策の徹底を図っています(写真-4)。
 

写真-4 現地安全パトロールの様子




 

2-3 災害統計資料の発行

事故・災害の件数をそれらの程度別,工事・工場・運送の部門別,災害の型別に集計した資料を発行しています(表-2)。
 

表-2 平成29年 災害報告(対前年対比)




 
災害の傾向や前年からの推移を明らかにし,これを安全管理セミナーでの講義に生かすことで,会員および作業員への周知徹底と事故災害の撲滅を目指しています。
 
 

3. 社会貢献としての災害への取組み

重仮設材は,自然災害の発生に際し,いち早く使用される資材のひとつで,川の氾濫,土砂崩れ,地盤沈下,などへの対策や仮設橋の設置など,多岐にわたって使用されます。特に鋼矢板は土留めと止水効果に優れているため,緊急対応に使われることが多い鋼材です。
 
東日本大震災では,震災発生の2日後には河川の決壊と氾濫への懸念により国土交通省から鋼矢板の在庫状況の問い合わせがありました。東北地区会員へ確認したところ,要請量に対し供給可能量が圧倒的に不足していたため,名古屋市より東の東日本全体で供給するべく緊急態勢を取って要請に応じました。その結果,素早く河川災害復旧工事現場に大量の鋼矢板を届けることができ,復興に寄与しました(写真-5~7)。これらの貢献が認められ,国土交通省東北地方整備局から表彰状が授与されました(写真-8)。
 

写真-5 災害復旧工事状況①

写真-6 災害復旧工事状況②



写真-7 災害復旧工事状況③

写真-8 表彰状



 

おわりに

重仮設材は地下で使われることが多いため,人々の目に触れる機会が少ない地味な存在ですが,社会基盤を支える建設業にはなくてはならない存在です。
 
本協会は昭和50年に「重仮設リース業協会」として発足してから現在まで,重仮設材の賃貸ならびに施工に関し,広く知識を内外に求めながら調査・研究を継続的に行っています。
 
その目的は,建築土木の重仮設材とその施工に関し,品質・技術・安全の向上を追求し,法令順守のもと,建設業の健全な発展と社会への貢献を果たすことにあります。この目的に従い,会員12社で各種委員会を組織し,様々な活動を展開していることはこれまでに紹介したとおりです。
 
今後ともホームページや広報活動などを通じ,建設業および重仮設業界の魅力や存在感,知名度などを高め,社会貢献に努めてまいりたいと思います。
 
 
 

一般社団法人 重仮設業協会 会長 馬越 学

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年12月号



 

最終更新日:2023-07-10

 

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