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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 東北中央自動車道(南陽高畠IC〜山形上山IC間)の開通 〜三県都をつなぐ高速道路網が完成〜

1.はじめに

東北中央自動車道(以下,「東北中央道」という)の山形県南東部に位置する南陽高畠(なんようたかはた)IC〜山形上山(やまがやかみのやま)IC間の24.4kmが平成31年4月13日に開通しました。これにより,山形市・仙台市・福島市の三県都が東北道・山形道とループ状につながり,「かよいあえる南東北」として,さらに身近に,ますます快適・便利な高速道路ネットワークが誕生しました。
 
 

2. 事業概要

東北中央道は福島県相馬市を起点とし,福島市・米沢市・山形市・新庄市などを経由して,秋田県横手市で秋田道に接続する総延長約268kmの高規格幹線道路です(図-1)。この路線は,福島県・山形県・秋田県の内陸部の主要都市を結ぶとともに,常磐道・東北道・山形道・秋田道と接続することから,南東北における高規格幹線道路網を形成し,地域間交流はもとより緊急時における代替および迂回等のネットワーク機能の強化を担う重要な路線です。
 

【図-1 路線概要図】




 
今回,山形県の南東部に位置する南陽高畠IC〜山形上山IC間の24.4kmが開通し,東北道・山形道とループ状に結ばれることになり,山形市・仙台市・福島市の三県都をつなぐ高速道路網が完成することになりました。三県都が高速道路でループ状に結ばれることは,東北地方では初めてとなり,とりわけ広大な面積の東北地方にとって,気軽に“かよいあえる”こととなります。
 
まさに,“いろんなまちから山形へ 山形からいろんなまちへ”と,活気あふれる地域間交流が高まり,計り知れない効果を生み出すものと期待されます。
 
 

3. 技術的課題の克服

(1)軟弱地盤地帯における施工(白竜湖付近)

南陽高畠ICから北へ約3kmの区間は,南北に約5km,東西に約3.5km,面積で約1,000haの白竜湖を中心とした湿田が広がり,全国でも有数の軟弱地盤地帯(支持地盤100m以深)を通過します(写真-1)。軟弱地盤対策工としては,地盤の安定確保や周辺地盤への影響抑制,長期沈下の低減に有効な,真空圧密工法を採用しました(図-2)。この工法は,地盤に水抜き用のパイプを突き刺し,真空ポンプで土壌中の水と空気を強制的に排除するもので,試験施工を繰り返しながらも,約8年をかけて無事に完成させることができました。
 

【写真-1 軟弱地盤地帯(白竜湖付近)


 

【図-2 真空圧密工法のイメージ図】




 
また,上記施工区間に隣接する箇所では,深いながらも支持層の存在が判明したことから,橋梁形式(白竜大橋:橋長552m,鋼11径間連続2主鈑桁)を採用しました。約90mの基礎杭施工にあたっては,中掘り杭工法による長尺鋼管杭を採用し,試験施工で施工精度を確認しながら工事を進め,長尺鋼管杭を採用した橋梁としては国内最大級となる実績となりました(写真-2)。
 

【写真-2 白竜大橋




 

(2)低土被りトンネル施工(山形蔵王トンネル)

山形蔵王トンネル(延長944m)は,山形上山ICの南側に位置し,全線において,土被り2D以下(D=12.3m)と小さいうえ,トンネル直上には一級河川の酢川やゴルフ場,国道13号があります。特に国道13号は,日交通量が約3万7,000台と重交通路線で,工事にあたっては掘削による影響を最小限に抑え,安全性を確保する必要がありました(写真-3)。
 

【写真-3 山形蔵王トンネル】




 
切羽前方の地質状況を確認するために,DRISSシステムによる探査を行い,掘削切羽を事前予測しながら慎重に掘削を進捗させました(図-3)。
 

【図-3 新技術・新工法のDRISS システム】




 
また, 国道13号との交差部分は小土被り(12.5m)なうえ,地質調査結果により地山が不均質であること,想定外の地表面沈下に伴う工事の遅延,通行止めなど社会的に与える影響の大きさから,より安全な施工を目的とし,事前に地表からの薬液注入による地盤改良を実施のうえトンネル掘削に着手しました。加えて,坑内からの長尺鋼管先受け工,全断面早期閉合工法を採用することで,国道部における地表面沈下量は最大10.5mmに収まる結果となりました。
 
 

4. 整備効果

(1)国道13号の渋滞緩和と代替路確保

東北中央道と並行する国道13号は,平日の混雑度が1.64〜1.82と非常に高く,東北中央道の整備により交通転換が図られることで渋滞の緩和が期待されます。また,災害や事故,降雪等による通行障害時には,国道13号の周辺に信頼性の高い代替路がないことから,安定した交通路の確保が期待されます(図-4)。
 

【図-4 国道13号と周辺道路】




 

(2)高規格幹線道路のダブルネットワーク構築

東北道と山形道とつながることで,山形エリア・福島エリア・仙台エリア間に高規格幹線道路のダブルネットワークが構築され,各高速道路のいずれかが災害などにより通行不能になった場合でも,ダブルネットワーク機能により代替および迂回などの相互補完が可能となります(図-5)。
 

【図-5 ダブルネットワーク化の実現】




 

(3)所要時間の短縮

山形市〜米沢市間の所要時間が整備前の約70分から約20分短縮されるとともに,定時性・快適性の側面からも安心した移動が確保されます(図-6)。
 

【図-6 主要目的地へのアクセス向上】




 

(4)地域医療環境の改善

東北中央道沿線には3箇所の三次救急医療施設があり,それらの施設への迅速な搬送ルートとしての役割を果たします。
 
なかでも,山形大学医学部附属病院,置賜総合病院は,当該路線に近接しており,医療カバー圏の拡大が見込まれ,15分圏域の空白地帯であったかみのやま温泉IC周辺についてもカバーされます。
 
また降雪時においては,一般道と比較し安静に搬送することができます(図-7)。
 

【図-7 地域医療の改善】




 

(5)物流効率化の支援

山形県の特産である出荷量全国1位のラ・フランスやさくらんぼに代表される果実の首都圏などへの安定的な輸送に寄与します(図-8)。
 

【図-8 首都圏の安定輸送の確保】




 

(6)広域的な交流・連携強化

東北中央道周辺には,温泉地をはじめ全国的に著名な観光地が立地しており,観光地間のアクセス利便性が向上し,県外観光客の増加が期待されるとともに,周遊観光の利便性向上による観光客の増加等,広域的な観光促進が期待されます。
 
また,ダブルネットワークの構築により,これまで以上の旅行プランが立てられ,山形県のみならず南東北の広域的な交流・連携強化が図られます(図-9)。
 

【図-9 期待される観光客の増加】




 

(7)物流効率化の支援

既に供用している山形上山IC,南陽高畠ICの周辺地域においては東北中央道へのアクセスの良さから工業団地の分譲率が高い状況にあります。また,かみのやま温泉IC周辺では,新たに工業団地の整備が計画されており,地域産業の支援とともに,さらなる地域の活性化が大いに期待されます(図-10)。
 

【図-10 隣接する工業団地】




 

5. 開通に向けて

今回の開通に向けて,沿線地域の方々をはじめ,多くの方々の期待が寄せられるとともに,工事に際しては多大なご理解とご協力をいただいたところであり,地域の方々への感謝として,プレイベントを実施しました。平成30年11月には,例年上山市主催で開催されているサイクリング大会「かみのやまツール・ド・ラ・フランス」において,建設中の高速道路をコースとして提供,約1,100名の方々に楽しんでいただきました(写真-4)。また,平成31年3月には,今回開通区間の休憩施設である南陽PAにおいて,沿線小学校全校児童による「植樹式」を開催し,子供たちの大切な記念となり,喜びの声をいただきました(写真-5)。
 

【写真-4 かみのやまツール・ド・ラ・フランス】


 

【写真-5 地元小学生による植樹式】




 
そして,待望の4月13日の開通式においては,残雪に覆われた蔵王連峰の山頂が望める快晴のもと,約250名が見守るなか盛大に開催し,開通の喜びを分かち合うことができました(写真-6,7)。
 

【写真-6 開通パレードの様子】


 

【写真-7 晴天のもと行われた待望のテープカット】




 

6. おわりに

今回の開通区間の事業の歩みを振り返ると,平成元年2月の基本計画決定を皮切りに,約30年間の歳月を要しました。まさに平成とともに歩んできた事業であり,これからの「令和」の時代への起爆剤となるものであり,感慨深い事業といえます。
 
高速道路は,地域の皆さまに上手に使っていただき,ひいては地域の発展に貢献できることが大切です。当社としましては,引き続き安全・安心・快適・便利な高速道路空間の提供に力を注ぎ,特に山形県内は雪による交通障害リスクが高いことから,雪氷技術のプロ集団として,冬期も安全な交通確保に細心の注意を払い,地域の皆さまに真に愛される高速道路の提供を行ってまいります。
 
最後に,この東北中央道(南陽高畠IC〜山形上山IC間)の開通に絶大なご協力をいただいた地権者の方々をはじめ,関係機関,施工業者の方々などすべての皆さまに,この誌面をお借りして感謝申し上げます。
 

 
 

東日本高速道路株式会社東北支社 建設事業部

 
 
 
【出典】


積算資料2019年7月号



 

最終更新日:2019-10-03

 

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