建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 管路ストックマネジメントを牽引する管路スクリーニングカメラ −KPRO(ケープロ)−

 

はじめに

平成30年度末時点における全国の下水道管路総延長は約48万km。近年は,高度経済成長期以前に敷設した下水道管路の老朽化が進行している。標準耐用年数である50年を経過した管路の延長は約1.9万km(総延長の4%)あり,10年後には6.9万km(同14%),20年後には16万km(同33%)と,増加が見込まれる。(図−1
 

図−1 管路施設の年度別管理延長



老朽化が原因の道路陥没も全国で頻発しており,平成30年度は約3,100件発生し,管路施設の老朽化対策は喫緊の課題である。(図−2
 

図−2 管路施設に起因した道路陥没件数の推移



このため国土交通省では,平成27年に下水道法を改正し,管路の点検を義務化(腐食の恐れの大きい管路は5年に1度以上)し,あわせて地方公共団体の限られた予算の中で適切に維持管理を行うためのストックマネジメント手法の導入の促進を目的とした「下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドライン─2015年版─」を発刊している。
 
このストックマネジメントの基本となるのが管内調査であり,現有施設の健全性を速やかに把握し,予防保全的に処置することが極めて重要とされている。しかしながら,下水道管路総延長約48万kmのうち年間に調査可能な延長は約4千km(総延長の0.9%)程度であり,特に財政的に厳しい中小自治体においては,敷設してから現在までマンホールふたを開けたことがない場合もあるなど,膨大なストックに対し,効率的な管理が課題となっている。
 
この課題の解決策の一つに管路スクリーニングがある。広範囲の管路の健全性を大まかに把握し,緊急な対応を要する異常などを従来よりも早く,低コストで発見できる。また,スクリーニングで得た情報から,調査優先順位の検討,清掃の必要な路線の抽出,詳細調査の費用算定が可能となり,維持管理の効率化が図れる。
 
 
 

1. 管路スクリーニングカメラKPRO

KPROは,管路スクリーニング技術に位置付けられる。調査精度を点検レベルに絞りつつ,従来のTVカメラ調査の2倍以上の日進量が得られる,異常管路のスクリーニングに特化した簡易TVカメラシステムであり,効率的な点検調査手法として用いられる新技術である。(図−3
 

図−3 各種調査用カメラの日進量の比較



1-1 概要

KPROは,等速前進するバッテリー搭載自走車に小型高画素カメラを搭載した自走式TVカメラ。前方方向の映像のみを撮影し,上流マンホールから下流マンホールの間を停止せずに走り抜ける。
 
調査状況は写真−1に示す通り,電源供給およびオペレータのための車両(ワンボックス車)を必要とせず,機材を台車に乗せて徒歩で移動しながら調査を行う。このため,1日の平均的な調査距離は800m程度と,従来の自走式TV カメラの2倍以上である。走行路線に走行の支障となる土砂堆積が少ない場合,調査スパンに段差がなく直線的に連続する場合など現地の状況次第では,1,500〜1,800m/日(実績値)も可能である。
 
またKPROは,日進量の向上による調査期間の短縮と調査コストの低減を図るために,以下に示す特徴・工夫によりスクリーニング調査を実施している。
 

写真−1 KPRO調査状況



(1)事前洗浄を省略
スクリーニングでは,短時間に致命的な異常を発見することが求められるため,調査の事前工に当たる管路内の洗浄は省略する。また,KPRO には小型高画素カメラを搭載しているため,管壁に多少の汚れがあっても,大きな異常の判別は十分可能である。(写真−2,3
 

写真−2 KPROの撮影映像(破損状況確認)

写真−3 KPROの撮影映像(付着物の発見)



(2)直視映像のみ撮影
従来のTVカメラは,管の継ぎ目や異常を発見するたびに停止し,計測・判定等を実施していたが,スクリーニングでは管路内の状況を定性的に把握すればよいことから,側視(詳細撮影)機能は未搭載とし,等速走行による直視映像のみを撮影し,これを録画することで日進量の飛躍的な向上が可能となった。
 

(3)現場作業の省略(判定作業の内業化)
これまで現場で実施していた異常の判定作業は,録画映像により事務所内で実施することが可能となる。これにより,現場作業を極力減らし,日進量の飛躍的な向上が実現される。

1-2 仕様

KPROの主な仕様を表−1〜5に示す。適用管径はφ150〜φ2,000,φ700以下は自走式,φ800以上は浮流(船)式がある。
 
KPROには横転や故障等を防止するための補助機能(自走式限定)や,撮影画像を使って管路全体を一括表示させるためのオプションを用意している。
 
 
(1)自動バック機能
KPRO(自走式)が走行中に,土砂や取付管の突出し等の障害物により前進できない場合,自動的にモーターが逆回転し,出発地点のマンホールまでバックする機能がある。
 
(2)傾き補正機能(KPRO-Lのみ)
KPRO-L(自走式)が走行中に一定角度以上に傾いた場合,片方の車輪が一時的に停止し,車体を水平に戻すことで転倒を防止する。
 
(3)展開図の作成(オプション機能)
KPROで撮影した管路内映像は動画およびキャプチャであるが,管路全体を一望するために,展開図化が可能である。
 

表−1 KPRO仕様

表−2 KPRO-S

表-3 KPRO-M

表−4 KPRO-L

表−5 KPRO-Fタイプ




 
 
 

2. 判定基準

従来のTVカメラによる調査は,クラック幅や継ぎ手のズレ幅等の補修に必要な情報を得るための「詳細調査」に該当するため,判定基準は定量的なものであった。一方,スクリーニングは,主に詳細調査が必要な路線を抽出することを目的としているため定性的な判定を行うものである,また,致命的な異常の発見を目的としていることから,詳細調査では異常の程度に応じてA,B,Cの3段階で判定するところを,Cを除くA,Bの2段階で判定することとしている。表−6に,鉄筋コンクリート管の判定基準(例)を示す。なお,判定基準は,発注者の意向により変更することがある。
 

表−6 鉄筋コンクリート管判定基準(例)




 

4. おわりに

管路スクリーニング技術である「KPRO」は,管路のストックマネジメント促進に対する貢献度が評価され,平成30年度に国土交通省「循環のみち下水道賞」(アセットマネジメント部門)を受賞した。
 
さらに令和2年10月には,KPROによる調査延長の累積が1,600kmを突破し,全国への普及展開が着々と進んでいる
 
一方で,現場での点検調査が高速で進むことから事務所で行う判定および報告書作成作業が追い付かないといった事例がでてきたため事務所内作業の効率化が新たな課題となっている。
 
このため現在,AIによる画像認識技術に着目し,異常の自動判定機能を有した報告書作成システムの開発を進めているところである。当社は引き続き管路スクリーニングを主体としたストックマネジメントを推進し,地方公共団体の抱える課題やさまざまな要請に応えられるよう日々開発を進めていく。
 
 
資料引用:国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html
 
 
 

管清工業株式会社 横浜技術センター 本社技術部

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2021年1月号



 

 

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