- 2022-08-12
- 特集 雪寒対策資機材 | 積算資料公表価格版
はじめに
道路除雪工事は,道路形状を把握し,除雪機械の操作に精通していないと適切に除雪できないといった,非常に専門性が高く経験が求められる作業であり,主に地域に根差した建設業者が担い手となっている(写真-1)。
建設業の就業者数は1990年代後半をピークに減少しており,近年では約500万人で推移している(図-1)。
令和2年の就業者の年齢構成は,55歳以上の割合が36.0% で3割を大きく超える一方,29歳以下の割合は11.8%と約1割となっている(図-2)。
全産業の平均では55 歳以上が31.1%,29歳以下が16.6%であることを踏まえると,建設業は相対的にも就業者の高齢化が進んでおり,将来の担い手の確保が大きな課題となっている。
そこで,国土交通省では,地域の建設業が「地域の守り手」としてその大きな使命を果たし,将来にわたっても持続的に活躍できるよう,市場の実態を反映した適正な予定価格や工期の設定,施工時期の平準化など,建設業の働き方改革や処遇改善等に取り組んできた。
道路除雪工においても,上述の観点から,適正な予定価格を設定すべく積算方法の改善等に取り組んでいる。
本稿では,道路除雪工の積算方法の改善を通した担い手確保の検討について紹介する。
1. 少雪時における道路除雪雪工事の積算方法の試行案
道路除雪工事は,降雪量に応じて毎年度の工事量が大きく変動する工事であり,工事を受注する除雪事業者にとっては安定した収入を確保しにくい傾向にある。
そのような中,令和元年度は全国的に記録的な少雪となり(図-3),一部の地域を除いて除雪の出来高が上がらず,除雪事業者において除雪機械の維持や労務管理といった最低限必要となる固定的な経費をまかなうことが困難になるという課題が発生した。
これを受け,除雪事業者が道路除雪工事を受注するうえで,降雪量の多寡によらず必ず発生する経費(固定的経費)を積算に計上する方法を検討することとした(図-4)。
⑴道路除雪工事の経費の実態調査
直轄の道路除雪工事において,除雪事業者が除雪体制を確保するために必要となる経費を算出するため,令和2年度と令和3年度に実態調査を行った。
当該調査では,令和元年度と令和2年度に除雪作業を実施した直轄の道路除雪工事(除雪単独工事及び除雪作業を含む維持工事)から217工事を抽出し,当該工事の発注者,受注者(除雪事業者)双方に調査を行った結果,154工事から回答をいただくことができた。
当該調査では,発注者からは対象工事の区間延長や過去30年の降雪量等を回答いただくとともに,受注者からは,受注した道路除雪工事における除雪日数,工事金額,除雪作業時間,労務費や機械経費,間接工事費の実績,除雪作業を実施しない場合でも発生する経費(固定的経費)等をご回答いただいた。
⑵実態調査結果を踏まえた積算方法の検討
調査結果を踏まえ,少雪時においても,道路の除雪体制維持のために必要となる固定的な経費の積算方法について,以下2つの案を検討した。
【案1】 管理延長(除雪延長),少雪量,除雪作業時間から固定的経費を算出する方法
1)直接工事費の算定
現行の道路除雪工事の積算方法では,除雪機械の運転時間または運転日数に応じて,出来高(機械損料等)と待機費を算定して直接工事費を算出している。
一方,上述の積算方法では,少雪の際に本来必要な直接工事費が積み上がらないため,以下の算定式により,固定的経費を算出する案を検討した。
固定的経費=y・L・m
L:工事単位の除雪区間延長(km)
m:固定的経費の時間当たり単価(円/h)
y:除雪作業時間(h/km)
y=ax+b
x:少雪量(cm)
a,b:変数
上述の算定式のうち,変数となるa,bは⑴の実態調査の結果から,地域毎(特別豪雪・豪雪地域,その他地域)に過去の降雪量と単位延長当たりの除雪作業時間の実績から整理される近似線を用いて算出した(図-5)。
x(少雪量)は,各地点毎の降雪量の観測データから,以下のとおり算出した。
x= μ-α・σ
μ:過去30年の積雪観測データの平均値(cm)
σ: 過去30年の積雪観測データの標準偏差
(cm)
α:係数(当面は1.0と設定)
なお,一定の降雪量がある場合は,これまでの積算方法で十分な出来高を計上できるため,上述の算定式で算出する固定的経費より既存の積算法で算定した経費が大きい場合は,既存の方法で積算することとした。
2)間接工事費
間接工事費は,通常の積算方法と同様に,直接工事費に対応した間接工事費を共通仮設費,現場管理費,一般管理費等の率計算から計上することとした。
これにより,必要な準備費,営繕費,労務管理費,従業員給料手当などの経費を計上することができる。
間接工事費=共通仮設費+現場管理費+一般管理費等
共通仮設費=直接工事費×共通仮設費率
現場管理費=(直接工事費+共通仮設費)×現場管理費率
一般管理費等=(直接工事費+共通仮設費+現場管理費) ×一般管理費等率
【案2】 除雪機械の機種や台数に応じて機械損料の固定的経費を計上する方法
1)直接工事費の算定
案1と同様に,少雪の際に,必要な直接工事費を計上するため,以下の算定式により,固定的経費を算出する案を検討した。
固定的経費=Σ(K・D)
K: 除雪機械の機種や台数ごとに,償却費納保管等経費)を積み上げ(円/日)
D: 除雪体制確保期間【除雪機械の確保期間】(日)
上述の算定式を活用することで,道路除雪工事のために確保した除雪機械の機種や台数に応じて必要となる固定的経費を算出することができる。
なお,案1と同様に,上述の算定式で算出する固定的経費より既存の積算方法で算定した経費が大きい場合は,既存の方法で積算することとした。
2)間接工事費
間接工事費は,案1と同様に,直接工事費に対応した間接工事費を共通仮設費,現場管理費,一般管理費等の率計算から計上することとした。
これにより,除雪機械の機種や台数に応じて,その管理に要する準備費,営繕費,労務管理費,従業員給料手当などを計上することができる。
(3)試算結果
⑵ で提案した2つの案について, 管理延長60 km(平地部・都市部が主)の豪雪地帯で試算した結果を図-6に示す。
その結果,案1では,近10 年最少の降雪量の際でも,試算した固定的経費が既存の積算方法で算定した経費を下回る結果となったが,案2では,近10年平均の年間降雪量の際の積算の約75%の経費を固定的経費として算定する結果となった。
一方,案2についても,各道路除雪工事で確保する除雪機械の機種や台数,除雪機械の確保期間や地域特性等により変動するため,別地域の工事では経費が計上できない可能性がある。
また,案2の方法では,直接工事費に機械経費(固定費)しか計上できないという課題もある(間接工事費には,労務管理費・従業員給与等は計上されている)。
そこで,案2を全国の道路除雪工事で試行し,妥当性を検証する必要があると考えられる。
2.今後の取組予定
1.で整理した積算方法の妥当性を確認するため,令和3年度の全国の直轄の道路除雪工事で新たな積算方法(1. における案2)を試行するとともに,令和4年度以降も引き続き積算方法の改善を検討することとした。
本取組により,除雪事業者が将来にわたって安心して除雪作業に取り組める環境を形成し,ひいては道路除雪工事の担い手確保につながることを期待している。
【出典】
- 分析・予測システム【AIによる音響データを用いた雨天時浸入水検知技術 下水道雨天時浸入水検知システム】|株式会社建設技術研究所
- 貯留型浸透施設【コンクリート地下貯留槽 アクアポンドL】|株式会社ヤマウ
- 施工管理【簡易型RI水分計 WARP-mini(ワープミニ)】|ソイルアンドロックエンジニアリング株式会社
- 技能評価システム【DRONETECH®(ドローンテック)】|日本AIロボット安全管理機構(JARSMO)
- 検査・診断機器【AI橋梁診断支援システム Dr.Bridge®】|株式会社日本海コンサルタント
- 構造物調査【AIや三次元点群モデルを活用した港湾施設の定期点検支援技術】|三信建材工業株式会社
- 埋め戻し用材【流動化処理土 KFソイル(Kikuno Flow Soil) 低炭素型高流動コンクリート製品】|株式会社キクノ
- 試験・測定機器【積雪深断面測定装置 SNOWLINE】|タマヤ計測システム株式会社
- その他災害対策資材【KYK 住宅用凍結防止剤 凍(コオ)ランブルー】|古河薬品工業株式会社
- 融雪器具【無散水消雪システム 地下水還元方式】|日本地下水開発株式会社
- 特殊舗装工【多機能型排水性舗装(縦溝粗面型ハイブリッド舗装)フル・ファンクション・ペーブ(FFP)】|株式会社ガイアート
- 凍結防止剤散布機【ZEST ZS-1000K / ZS-500K ZS-300K / ZR-110】|株式会社タイショー
- 除雪車【ロータリ除雪車 HTR308A】|株式会社NICHIJO
- さく井用集水管【KVSストレーナ/W.KVN ストレーナ】|株式会社興和
- 融雪器具【融雪システム オンリーワン/オンリーワン タイプCG /オンリーワン タイプF】|雪国科学株式会社
- 屋根融雪システム【パテジソン屋根消雪シート】|株式会社オーシャンアース
最終更新日:2023-06-28
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