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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 公共事業労務費調査(令和5年10月調査)の実施について~オンライン調査の本格運用~

1 はじめに

公共工事の発注に際し必要となる予定価格は、「予算決算及び会計令」第80条第2項において、取引の実例価格等を考慮して適正に定めることとされています。
 
これに基づき、農林水産省及び国土交通省(以下、「二省」という)をはじめとした公共事業の発注機関で構成される「公共事業労務費調査連絡協議会」では、公共工事の予定価格の積算に必要な公共工事設計労務単価(以下、「労務単価」という)を決定するため、公共事業労務費調査(以下、「労務費調査」という)を実施し、所管する公共事業等に従事した技能労働者に対する賃金の支払実態を、昭和45年より毎年調査しています。
 
本稿では、労務単価及び労務費調査の概要に加え、今年度から本格運用する「オンライン調査」や、今年度の労務費調査のポイントを紹介します。
 
 

2 公共工事設計労務単価とは

一般に労務関係費といわれる費用には、賃金のほかに様々な経費が含まれています。
労務単価は、所定労働時間内8時間当たりの基本給相当額、基準内手当、所定労働日数1日当たりの臨時の給与(賞与等)、実物給与により構成されます。
 
一方、時間外、休日又は深夜の割増賃金、通常の作業条件又は作業内容を超えた特殊な労働に対する手当等は、発注者が積算時に別途計上しており、労務単価には含まれません。
 
このほか、労働者の雇用に伴い必要となる会社負担の諸経費(法定福利費の事業主負担分、安全訓練に係る費用、労働者の募集・解散に要する費用、作業用具・被服に要する費用、労働者の宿泊・送迎費等)も含みません(図-1、2)。
 
なお、労務単価は、公共工事の予定価格の積算に用いるための単価であり、下請契約における労務単価や雇用契約における労働者への支払賃金を拘束するものではありません。

図-1 公共工事の積算における労務関係費
図-1 公共工事の積算における労務関係費
図-2 公共工事設計労務単価の構成
図-2 公共工事設計労務単価の構成

 
 

3 労務費調査の概要

労務費調査は、公共工事の予定価格の積算に必要な労務単価設定のための基礎資料を得るための調査です。
調査では、二省が所管する直轄事業、補助事業のほか、都道府県、政令指定都市及び二省が所管する独立行政法人等の事業を対象に実施しています。
これらの事業において、10月に施工中の、請負金額1,000万円以上の工事をリストアップします。
 
リストアップされた工事を選定母集団として、調査対象工事を無作為抽出(約10,000工事)し、当該工事に従事する技能労働者(約11万人)の賃金を51の調査対象職種に区分し調査します。
企業の規模や下請次数の制限はなく、51の調査対象職種に該当する全ての技能労働者を対象としています(表-1)。
 
調査対象となった企業(元請企業、下請企業等)においては、調査対象工事に従事した全ての技能労働者について、労務費調査の調査票(エクセル)に賃金等の必要事項を賃金台帳等から転記します。
 
その後、調査票の記載内容(賃金、職種分類、労働時間等)を、調査員が各種書類(健康保険及び厚生年金保険の支払証明、資格免許、賃金台帳等)と照合及び確認を行い、賃金の実態を把握します(詳しくは、「5労務費調査の手順」をご確認ください)。

表-1 職種一覧
表-1 職種一覧

 
 

4 オンライン調査の本格運用

労務費調査のさらなる効率化を目的に、令和4年10月調査では、調査票等の提出・管理・審査をシステム上で行う「オンライン調査」を試行しました。
昨年度の試行結果を踏まえ、今年度は本格運用を開始します。
ただし、今年度は書面調査と双方の対応を可能とし、昨年度と同様、一部で対面調査も残します。
 
 

5 労務費調査の手順(オンライン調査の場合、表―2)

表-2 オンライン調査
表-2 オンライン調査

⑴各発注機関から元請企業に対して、調査協力を依頼します(9月上旬頃)。
①各発注機関から元請企業に対して、調査協力を依頼します。
 
②元請企業は、9月(10月に従事していない38職種)や10月に調査対象工事に従事し、調査対象職種(51職種)に該当する技能労働者が在籍する全ての下請企業に対し、調査の協力を依頼いただきます。
さらに下請がいる場合には、連絡を受けた下請企業から、調査の協力依頼を行っていただきます。
※各発注機関から下請企業に対して、直接調査の協力依頼は行いません。
 
⑵発注機関が現況調査を実施します(9月~10月頃)。
 
⑶一部地域において、労務費調査説明会を開催します(9月~10月頃)。
 
今年度の労務費調査説明会については地域ごとに開催有無、開催方式が異なります。
地域ごとの開催有無、開催方式については、国土交通省のウェブサイトに掲載しています。
また同ウェブサイトには説明会の資料も掲載しています。
※公共事業労務費調査(令和5年10月調査)のご案内
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_ const_tk2_000006.html
 
⑷ 対象企業名簿を作成し、施工体系図とともに提出していただきます(9月中旬~10月上旬頃)。
①各発注機関等から、元請企業に対し対象企業名簿の作成を依頼します。
 
②元請企業から下請企業に対し、対象企業名簿の作成に必要な情報の提供を依頼いただきます。
対象企業名簿の様式は国土交通省のウェブサイトに掲載しています(前記「※公共事業労務費調査(令和5年10月調査)のご案内」参照)。
 
③下請企業には元請企業からの提供依頼を受けて、以下の事項を元請企業に報告いただきます。
また、さらに下請がいる場合には、以下の事項を元請企業に報告するよう依頼いただきます。

  • 企業名、下請の次数
  • 会場調査への変更希望(原則、オンライン調査、書面調査としていますが、変更希望があれば受け付けます)
  • 調査票作成者氏名、電話番号、メールアドレスまたはFAX番号

④元請企業は下請企業からの報告をもとに対象企業名簿を作成し、施工体系図とともに各発注機関等に提出いただきます。
提出先及び提出期限は、発注機関等が作成を依頼する際にお知らせします。
 
⑸調査票に記入していただきます(10月下旬~ 11月上旬頃)。
 
⑹調査票と確認資料を提出いただきます(11月上旬頃)。
①各発注機関等から調査対象企業(元請企業及び下請企業)に対して、電子メールでオンライン調査をご案内します。
 
②各企業の担当者は期日までに、調査票及び確認資料の電子データもしくは写しのPDFを、オンラインシステム上で提出いただきます(提出先は元請企業ではありません)。
 
③提出された調査票が正しく記入、作成されているか、調査員が審査します。
審査の上、疑義や修正事項がある場合は、システム内で質疑に対応するほか、聞き取り調査の実施日に、各企業の担当者(対象企業名簿に記載されている各企業の調査票作成者)に電話で聞き取りを行います。
 
 

6 今年度の労務費調査のポイント

⑴ 男性の育児休業の取得状況に関する調査
令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されている中、男女ともに仕事と育児の両立支援が推進されています。
このことを踏まえて、今年度の調査では、男性の育児休業の取得状況の実態を把握するための記入欄を設けました。
 
⑵インフレ手当に関する調査
昨今の急激な物価上昇を背景に、従業員の生活支援を目的として、いわゆる「インフレ手当」が支給される事例が増えています。
このことを踏まえて、今年度の調査では、インフレ手当の支給実態を把握するための記入欄を設けました。
 
⑶有効回答の向上
昨年度の調査では、約2割の標本が棄却されています。
主な理由は「就業規則に定める所定労働時間が法定の週40時間以内であることの確認ができない」、「調査票への記入事項の根拠となる資料がない」ことです。
棄却されないためにも、就業規則や賃金台帳等を整備いただくよう調査対象者へ周知しています。
 
 

7 おわりに

労務費調査は、公共工事の工事費の積算に使用する労務単価の設定の基礎資料等を得るための調査です。
正確な賃金実態を把握することで、適切な労務単価の設定につながります。
調査の対象となった皆様におかれましては、より正確に賃金実態を把握するため、調査にご協力いただきますよう、お願い申し上げます。
 
また、調査にあたり、虚偽の資料が提出された場合、適正な「労務単価」の設定に支障が生じるため、正確な資料を提出いただきますよう、お願い申し上げます。
 
 
 

国土交通省 不動産・建設経済局 建設市場整備課 建設キャリアアップシステム推進室

 
 

【出典】


積算資料2023年11月号

積算資料2023年11月号

最終更新日:2024-03-25

 

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