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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 自衛隊施設の強靱化について ~ 5年間で4兆円規模の施設整備~

1.はじめに

令和4年12月16日に国家安全保障戦略、国家防衛戦略および防衛力整備計画が閣議決定されました。
これらは、ロシアのウクライナ侵略、中国の一方的な現状変更の試み等、我が国を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増す中、防衛力の抜本的強化をはかり、真に国民を守り抜ける体制を作り上げるためのものです。
 
その中で、防衛力の持続性、強靱性の観点から、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊がその能力を十全に発揮するための基盤が自衛隊施設であり、これら施設への武力攻撃に対する抗たん性の向上や津波・浸水などの大規模自然災害対策等を早急に図っていく必要があります。
今般の防衛力整備計画には、そのために必要な措置と経費が盛り込まれたところです。
 
これらの措置と経費は、これまでの自衛隊施設の整備と比較し、極めて大規模であり、防衛省としてはその実現に全力を挙げて取り組んでいく所存です。
 


※武力攻撃等を受けた場合に,その組織的機能を維持する能力
 
 

2. 自衛隊施設の強靱化の概要

防衛力整備計画に施設の強靱化の具体的措置が盛り込まれたところですが、まずは、その基本的な考え方についてご紹介させていただきます。
 
陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊がその能力を十分に発揮するための基盤が自衛隊施設となりますが、これらは
①大規模自然災害
②武力攻撃・テロ行為等
③老朽化(時間的な脅威)
に対し、強靱である必要があります(図-1)。

【図- 1 自衛隊施設の強靱化の必要性】
【図- 1 自衛隊施設の強靱化の必要性】

 
しかしながら、これら自衛隊施設は、全国に約2万3,000棟の建物があるほか、飛行場、港湾施設、各種ユーティリティが存在し、数も多く、多岐にわたっています(写真-1~2)。

飛行格納庫(松島基地)
飛行格納庫(松島基地)
航空機掩体(えんたい)(小松基地)
航空機掩体(えんたい)(小松基地)

【写真- 1 防衛省特有の施設①】

海上作戦センター(横須賀基地)
海上作戦センター(横須賀基地)
本年3 月に開設した石垣駐屯地
本年3 月に開設した石垣駐屯地

【写真- 2 防衛省特有の施設②】
 
これらの施設の現状として、安全保障環境が一段と厳しさを増す中において、それぞれの脅威に対し、必ずしも十分な整備ができているわけではありません。
また、施設の老朽化が進行し自衛隊の活動に支障を来たすとともに、未だに新耐震基準を満たしていない施設が多数存在しており、我が国の防衛力の持続性・強靱性の確保の観点からこれらを抜本的に解消・強化していく必要があります(図-2)。
 
そこで、今回の防衛力整備計画においては、各種脅威に対し、適切なアプローチにより予算配分を行いつつ、総合的に自衛隊施設の強靱化を図る考えです。

【図- 2 自衛隊施設の建設年代別棟数】
【図- 2 自衛隊施設の建設年代別棟数】

 
 

3.事業規模

令和4年12月に閣議決定された防衛力整備計画においては、保有すべき防衛力の水準として、令和5 ~ 9年度までの5年間で43兆円程度とされ、そのうち、施設の強靱化に係る経費は4兆円程度とされております。
 
この施設の強靱化に係る経費約4兆円の内訳としては、各駐屯地・基地等における既存施設の老朽化対策や施設の機能・重要度に応じた構造強化、離隔距離確保のための再配置・集約化など「既存施設の更新」に約1.7兆円、大規模自然災害発生時に機能を維持するための津波対策や浸水・法面崩落対策などの「災害対策」に約0.4兆円、主要な装備品や司令部等を防護するための「司令部の地下化等」に約0.2兆円、各種弾薬の取得に連動して必要となる「火薬庫の整備」に約0.2兆円、「部隊新編・新規装備品導入に係る施設整備」に約1.4兆円を見込んでおります(図- 3)。
 
なお、これらの経費に関して、令和5年度予算においては約5,000億円、令和6年度概算要求においては約8,000億円を計上しているところです。

【図- 3 防衛力整備計画における自衛隊施設の強靱化予算等】
【図- 3 防衛力整備計画における自衛隊施設の強靱化予算等】

 
 

4. 既存施設の更新

特に、これらの項目のうち、「既存施設の更新」については、全国にある駐屯地・基地等(約300地区)において、数多く存在する老朽化施設の対策と施設の機能・重要度に応じた防護性能の付与を集中的かつ効率的に実施していく必要があり、そのため、防衛本省において、令和5年度からの3年間で各駐屯地・基地等の整備計画である「マスタープラン」を作成していくこととしています(図-4)。
調査、設計および工事については、それぞれの駐屯地・基地等を管轄する地方防衛局等において、令和6年度からマスタープラン作成と並行して開始する予定としています。
 

【図- 4 駐屯地・基地等のマスタープラン(イメージ)】
【図- 4 駐屯地・基地等のマスタープラン(イメージ)】

したがって、マスタープランは、3年間で順次作成しながら、準備が整ったものから順に当該事業を開始させていくことになります。
 
当該事業は、概ね10年後までに全ての駐屯地・基地等のリニューアルに向けて事業化する計画ですが、予算要求のスケジュールやユーザーとの調整を含め、非常にタイトなスケジュールであり、これらの作業をより効率的に行う必要があるため、その方策について、民間事業者(建設業者や建設コンサルタント)の知見を活用しつつ、着実に事業を進めたいと考えています。
 
このため、今後の施設整備に関して、一日も早く事業効果を発揮させるとの観点から、事業実施可能な規模感や効率的な実施方法等を把握するため、建設業に携わる民間事業者とこれまで6回の意見交換会(令和5年10月末時点)を行っているところです(写真-3)。

【写真- 3 建設業に携わる民間事業者との意見交換会の様子(令和4 年12 月23 日)】
【写真- 3 建設業に携わる民間事業者との意見交換会の様子(令和4 年12 月23 日)】

 
具体的には、令和5年10月末現在、施工予定者が設計に技術協力する「ECI方式」や公募型プロポーザルで設計を発注し設計完了後に価格交渉して工事契約を結ぶ「設計付工事」の活用、JV構成員数の制限の緩和などによる地元企業の参画に向けた取組などを検討しているところであり、検討内容の詳細は防衛省ホームページに当該意見交換会の資料を掲載しています。
 
引き続き、意見交換会でのご意見も踏まえ、施設整備分野における防衛力の抜本的な強化に向けて防衛力整備計画の円滑な実施に努めていく考えです。
 
 

5.最後に

自衛隊施設の強靱化は、既存施設を更新する最適化事業をはじめ、災害、武力攻撃・テロ行為等の脅威に対し強靱化を図るため、多種多様な施設整備を行う極めて大規模な事業となります。
また、自衛隊には平素から防衛警備、教育訓練、警戒監視の任務がありますので、施設整備にあたっては、駐屯地・基地の運用機能を一日たりとも止めないよう、代替機能を確保しながら時間軸を考慮し、段階的に整備する必要があります(図-5)。

【図- 5 全国各地の駐屯地・基地等のマスタープラン】
【図- 5 全国各地の駐屯地・基地等のマスタープラン】

このように、難易度の高い事業となることから、円滑な施工体制を確保するために発注ロットを工夫するほか、さまざまな発注方式の活用や新たな契約方式の導入検討などを行っているところです。
防衛省としては、国民の命と暮らしを守り抜くためには、民間事業者の皆様がこれまで蓄積してきた経験等を活用し、官民連携して事業を進めることが不可欠です。
当該事業への積極的な参画を強く期待するところであります。

防衛庁

 
 
 

防衛省大臣官房施設監
 扇谷 治

 
 

【出典】


積算資料2023年12月号

最終更新日:2024-03-25

 

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