- 2024-09-10
- 積算資料
はじめに
首都高速道路は、1962年の京橋~芝浦間(4.5km)の開通に始まり、2019年度末時点で延長327.2kmが供用している。
最初の供用から50年以上が経過し、進行する構造物の高齢化や過酷な使用等により、構造物に多数の損傷が発生し、中には重大な損傷も発見されている状況にある。
このような状況の中、より効果的・効率的に維持管理するため、道路構造物を造り替える大規模更新と、集中的に損傷を補修する大規模修繕の検討が進められ、2014年度より大規模更新・大規模修繕事業を開始しているところである。
本稿では、5カ所の大規模更新事業(図-1)のうち、第一弾、第二弾として工事着手している東品川桟橋・鮫洲埋立部と高速大師橋更新事業、さらには竹橋・江戸橋JCT付近更新区間のうち、日本橋周辺のまちづくりと一体となって整備される日本橋区間地下化事業の概要と進捗状況について報告する。
1. 東品川桟橋・鮫洲埋立部更新事業
(1)事業概要等
当事業の概要、施工ステップ等の詳細については、本誌2018年12月号掲載の寄稿文を参照されたい(https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/52131)。
(2)工事進捗状況
更新に際しては、交通を確保するため、う回路を設置し交通を切り替えながら、本線を半断面ずつ造り替える計画として、2016年2月より工事着手している。
2017年9月に上り線のう回路への切り替えが完了し、2020年6月に下り線の交通を将来上り線となる更新線へ暫定的に切り替えた。
今後は、下り線を撤去し、将来下り線の工事を進めていく予定であり、2020年10月時点で、東品川区間では下り線の撤去作業を進めている。
また鮫洲区間では、地盤改良工を実施している(写真-1、2)。
2. 高速大師橋更新事業
(1)事業概要
多摩川渡河部に位置する高速大師橋(延長約292m、鋼3径間連続鋼床版箱桁)は、1968年の供用から50年以上が経過している。
本橋は多摩川への河積阻害を極力回避するため、橋脚間隔を長支間にする必要があったことから、上部構造の軽量化を図る必要があった。
しかし軽量化した剛性の低い上部構造であることから、橋梁全体がたわみやすい構造であることに加え、多くの自動車交通による使用状況等から、橋梁全体に多数の疲労き裂が発生している。
これらに対しては、日々、点検・補修を行っているものの、新たな疲労き裂が後を絶たない状況にあることから、上部構造を架け替えることとした。
また、現在の技術基準に基づいて上部構造を設計すると、上部構造の死荷重が既設を大きく上回り、下部構造の耐力が不足することから、上部構造と合わせて下部構造も造り替える計画である。
(2)新設橋構造概要
新設する高速大師橋の上部工構造形式は既設橋と同じく、鋼3径間連続鋼床版箱桁とした(図-2)。
また、維持管理性の観点から恒久足場を設置する計画としている。
橋脚は全4橋脚のうち1橋脚は陸上部、残り3橋脚は河川部に位置し、全4橋脚を更新する計画である。
河川部の橋脚(P4、5、6)については、耐震性向上および新設橋脚設置後にT形の既設橋脚撤去が可能となるよう門型ラーメン橋脚とし(図-3)、中間支点は上下部剛結構造としている。
橋脚柱は、耐久性の確実な確保、維持管理費および施工費の縮減を図る観点から、水中の防食性能に配慮し、H.W.L+1.5mより下側をRC柱とし、上側を鋼製柱・横梁とする複合構造を採用している。
なお、RC柱には遮塩性に優れる高耐久性埋設型枠を採用している。
河川部の基礎形式は、仮締切り兼用の鋼管矢板井筒基礎を採用している。
陸上部の橋脚(P7)の基礎構造は、施工時の振動・騒音低減や排土量抑制等の周辺環境の影響を考慮し、回転圧入工法による鋼管杭基礎を採用した。
(3)施工概要
本事業では、仮設のう回路を設けず、橋梁全体の一括架け替えを実施する計画としている(図-4)。
Step1として、既設橋の上・下流側に新設橋脚を施工する。
同時に、橋梁を横取りするための仮受けベント設備を設置する。
Step2では、既設橋の下流側の仮受けベント設備上に新設橋を組み立てる。
Step3およびStep4では、短期間の高速本線通行止めを実施した上で、既設橋を上流側に横取りした後、下流側の新設橋を横取りし、舗装等の橋面工を実施し供用する。
最後に、Step5で、既設橋および仮受けベント設備を解体・撤去する。
陸上部の橋脚(P7)は、橋梁の一括架け替えに先立ち、高速本線を供用した状態で更新するため、一時的に仮橋脚で既設橋の上部工を仮受けし、既設橋脚の撤去および新設橋脚の構築を実施する計画である(図-5)。
(4)工事進捗状況
2020年10月時点で、河川部では鋼管矢板井筒基礎の施工は完了し、井筒基礎内において新設橋脚(P4 ~ 6)のRC柱の施工中(図-4のStep1)である。
河川部の施工状況を写真-3に示す。
陸上部(P7)では、仮橋脚による既設橋の仮受けおよび既設橋脚の撤去が完了し(図-5のStep1,2)、現在は新設橋脚を施工中(図-5のStep3)である。
陸上部の施工状況を写真-4に示す。
今後は、引き続き新設橋脚の施工を進めるとともに、河川部では仮受けベント設備の施工を実施する予定である。
3. 竹橋・江戸橋JCT付近(日本橋区間地下化事業)
高速都心環状線の竹橋JCT~江戸橋JCTは1964年の東京オリンピック前に建設され、供用から50年以上が経過している。
この区間の交通量は、約10万台/日と過酷な使用状況にあるため、コンクリート床版の亀甲状のひび割れや鋼桁の切欠き部の疲労き裂等の重大な損傷が多数発生していることから、構造物の更新が必要になっている。
このような状況を踏まえ、2014年に大規模更新(高架での造り替え)として事業化した(図-6)。
その後、2016年には日本橋川沿いの3地区が国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加されたことにより、日本橋周辺のまちづくりの機運が高まり、2017年7月、国土交通大臣と東京都知事より、民間のまちづくりと連携しながら日本橋周辺の首都高速の地下化に向けて取り組むことが発表された。
これを受け、2017年11月~ 2018年7月に国土交通省、東京都、中央区、首都高速道路株式会社による「首都高日本橋地下化検討会」が行われ、神田橋JCTから江戸橋JCTまでの約1.8kmの区間を対象に、地下ルート案、事業スキーム、概算事業費等について議論された(図-7)。
首都高日本橋地下化検討会で議論された地下ルート案を基に、関係機関との協議・調整を進め、 2019年2月に都市計画素案説明会を実施した。
その後、2019年10月の都市計画決定を経て、2020年3月に事業許可、 同年4月に都市計画事業認可を取得し、神田橋JCT ~江戸橋JCTまでの約1.8kmが日本橋区間地下化事業として事業化した。
今後、開削トンネル・シールドトンネル等の地下化事業の本体工事着手に向けて、前さばき工事となる「地下埋設物移設」と「出入口撤去工事」を実施し、2035年度(予定)の地下ルート開通、2040年度の完成(高架橋撤去)に向けて事業を進めていく予定である(図- 8、9)。
おわりに
今回報告のとおり、首都高速道路の大規模更新事業については着々と事業を進めているところである。
そのほか、池尻・三軒茶屋出入口付近における地下躯体補強工事着手をはじめ、銀座・京橋出入口付近は現在、都市再生と連携した更新検討・調整を実施している。
引き続き、お客様および沿道の方々への丁寧な説明を行い、ご理解、ご協力を得ながら事業を進めてまいりたい。
【出典】
積算資料2020年12月号
最終更新日:2024-09-10
同じカテゴリの新着記事
- 2024-10-07
- 積算資料
- 2024-09-10
- 積算資料
- 2024-09-10
- 積算資料
- 2024-09-10
- 積算資料
- 2024-09-06
- 積算資料
- 2024-08-05
- 積算資料
- 2024-08-05
- 積算資料
- 2024-08-05
- 積算資料