建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 自治体橋梁におけるモニタリング システムの導入に向けて

 

はじめに

わが国の橋長2m以上の橋梁数は約70万,そのうち政令都市,地方自治体の管理する橋梁数は70%の約50万橋である。また,70万橋のうち建設後50年を経過する橋梁は,2023年には17万橋(43%),2033年には約27 万橋(67%)に増加すると言われている。
 
インフラの長寿命化のため維持管理の重要性が認識され,平成26年7月以降,5年ごとの近接目視点検が義務づけられ,点検の状況が道路メンテナンス年報で公表されるようになった。インフラの時間的に進む劣化損傷,目視点検では発見できない損傷をモニタリングするため,センサの役割は誰しも認識するところである。センサの正確性,信頼性,実装法,導入効果など解決すべき課題は山積している。
 
一般社団法人次世代センサ協議会では,平成24年に社会インフラ・モニタリング研究会を設立し,インフラ分野でのセンサの実用化に向けて,維持管理におけるセンサニーズを調査し,センサシステムとして普及させるための研究活動を実施してきた。本稿では,自治体橋梁におけるモニタリングシステム普及に向けての課題と対応について,当協議会の活動の一端を概説する。
 
 

1. 道路メンテナンス年報が示す点検結果

本年8月に発表された道路メンテナンス年報によれば,橋梁については平成26年度から28年度の3年間の累積点検実施率は54%になる。平成28年度は70万橋梁のうち19万橋(27%)が点検を終え,それぞれ5つの判定区分に分類された。
 
建設経過年数と点検結果の判定区分の分析結果を図− 1に示している。
 

図−1 建設経過年数と判定区分(道路メンテナンス年報 国交省道路局 平成29年8月)




 
13万橋のうち18,000橋(9%)が判定区分?(早期措置段階;構造物の機能に支障が生じる可能性が有り,早期に措置を講ずるべき状態),または区分Ⅴ(緊急措置段階;構造物の機能に支障が生じており,緊急に措置を講ずるべき状態)と診断された。区分Ⅳと診断された橋梁は建設経過年数が長くなるほど増加し,建設後40年を経過すると10%を超える。
 
表− 1はさらに建設51年以上を経過した橋梁のうち,区分Ⅳ以上と判定された橋梁数を管理者ごとに示している。
 

表−1 51年以上経過橋梁の区分Ⅳ,Ⅴの割合(H28年度橋梁点検結果,道路メンテナンス年報より,抜粋)




 
建設50年を経過すると措置が必要となる橋梁が急増,市町村管理の橋梁では20%近くになる。
 
判定区分Ⅳ,Ⅴと判断された橋梁は,措置が必要と判定されても予算化,管理技術者数不足などの理由で,直ちに措置を実施するわけにはいかない。(一社)次世代センサ協議会では橋梁の劣化損傷状態を監視できるモニタリングシステムや点検作業を支援するセンサ技術を調査し,ビジネスとしても実用可能なセンサやセンサシステムの普及を支援している。
 
 

2. 劣化損傷のメカニズムとモニタリング

橋梁の崩壊,落橋に至る最悪な劣化損傷のプロセスを図− 2に示す。
 

図−2 劣化損傷の原因と崩壊へのプロセス




 
鋼橋とコンクリート橋によって異なるが,リスク回避のためには,鋼材の亀裂と成長,鉄筋のやせ細りの発見と定量的握のためモニタリングは不可欠となる。
 
①損傷の発見と進行を直接的に測る(非破壊検査)
②構造物の応答から損傷の発生と進行を間接的に知る(振動センサ応用)
③損傷の原因となる外力(自動車荷重,風,地震,温度)を知る
④コンクリート橋における塩害(凍結防止剤も含む),アルカリ骨材反応など
 
累積作用による損傷や亀裂発生の予知など,劣化損傷のプロセス毎にモニタリング方法を知る必要がある。
 
 

3. 通行規制橋の調査とモニタリングシステムの体系化

(一社)次世代センサ協議会は平成27年度までに,全国の橋長15m以上の全国約15万橋梁のうち,平成25年4月時点の通行止め通行規制橋梁約1,400に対して,通行規制理由,損傷状況,補修状況,架替え予定,補修予算等のアンケートを実施し,関係する地方自治体550団体から約40%強の回答を得た。
 
図− 3は橋梁上部構造の損傷欠陥要因,図− 4は鋼材の腐食要因,図− 5はコンクリート橋の亀裂剥離要因を示す。そのほか下部構造の損傷欠陥要因,損傷以外の通行規制理由,補修・架替工事の優先順位,予算調達計画等を調査・分析した。
 



 
分析結果から,部位と計測目的に対応したセンシング法とモニタリング方法を表− 2に示すように8項目に分類した。
 

表−2 部位別センサ・モニタリング方法




 
以下に,代表的な事例を紹介する。
 

3-1 サンプリングモアレ法によるたわみ計測

図− 6はサンプリングモアレ法によるたわみ計測の原理図を示す。
 

図−6 サンプリングモアレ法によるたわみ計測原理((株)共和電業提供)




 
橋梁に貼った二次元格子像の位相解析手法により2次元の動的変位を計測する方法である。鋼橋,コンクリート橋の主桁,コンクリート床版のたわみを計測,耐荷力評価を行う。
 

3-2 ひずみゲージによる主桁・床版のひずみ計測

鋼橋,コンクリート橋梁の主桁,コンクリート床版のひずみを計測し,耐荷性評価を行う。
 

3-3 主桁・床版の振動

鋼橋・コンクリート橋の主桁,コンクリート床版の振動を計測し,耐荷性評価を行うには,サーボ型加速度計の他,MEMS加速度計,水晶発振加速度計,固有振動数計がある。
 

3-4 橋脚亀裂モニタリング

図− 7はコンクリート橋脚に発生した亀裂の長期モニタリングした事例である。
 

図−7 コンクリート橋脚亀裂モニタリング例((株)国土開発センター提供 コンクリート工学年次論文集(V33No1.2011)より)




 
アルカリ骨材反応のあるコンクリート橋脚の上部下部,上り線下り線6箇所に,亀裂変位計を取り付け,3カ年にわたるデータを記録したものである。亀裂の大きさは朝晩,季節により変動しているが,上り線No.4(灰色)のデータに亀裂の急変が見られる。
 
亀裂計測システムとして,亀裂変位計のほか,クラックゲージやCCD ラインセンサも使われる。
 

3-5 鋼部材の亀裂振幅

鋼桁等の鋼部材の亀裂を評価し,安全性を確認するためには,クラックゲージ,応力発光塗料,光ファイバセンサ等がある。
 

3-6 支承変位

支承変位量を計測し,安全性を確認する方法。
 
センサシステムとして,変位計,ワイヤー式変位計,レーザー距離計がある。
 

3-7 橋台,橋脚の傾斜角度

橋台・橋脚の傾斜角度を計測して,安全性の確認を行う方法。センサシステムとして,固定式傾斜計(図− 8)のほか,水晶振動子式傾斜計,橋脚傾斜モニタリングシステムがある。
 

図−8 固定式傾斜計((株)共和電業提供)




 

3-8 橋台,橋脚の振動

橋台・橋脚の振動を計測して,基礎の洗掘量の確認を行う。センサシステムとして,サーボ型加速度計,MEMS加速度計,固有振動数計のほか,Uドップラーがある。
 
 

4. リスク低減のためのモニタリングシステム導入の考え方

地方自治体がモニタリングシステムを導入しようとしても,予算化が第一のハードルであることは言うまでも無い。しかし,点検結果措置を必要とする段階,さらには実際に損傷・欠陥が発生した状況に至れば,通行の安全を確保する観点からモニタリングシステムの導入は十分考えられると言えよう。
 
モニタリングシステム導入のタイミングは,リスク低減の観点から図−9に示す4通りが考えられる。
 

図−9 橋梁モニタリングシステム導入のタイミング




 
第1段階:供用開始あるいは耐震補強,老朽化に対する大規模な補修・補強直後からの導入
    (定期点検,異常時点検の初期値モニタリング)
 
第2 段階:点検による損傷などの不具合発見後の経過観察(交通規制や補修時期の判断)のためのモニタリングシステム導入
 
第3 段階:交通規制後の安全確認としてのモニタリングシステム導入
 
第4 段階:架替判断後の仮橋・振替道路等による供用終了まで期間のモニタリング導入
 
 
 

5. 実橋試験の促進

モニタリングシステムの導入に当たって,その有効性の実証が必要となる。しかも,積み重ねなければならない。自治体によっては,そのような活動に理解を示し積極的に現場を提供する自治体も出てきており,有り難く受け止めている。
 
図− 10に実橋試験で配慮すべき検討事項を体系的に示す。
 

図−10 実橋試験実現が鍵である




 
実橋試験を促進するには,対象橋梁と設置環境,計測内容,実施期間・時間,実施費用などの実験計画全体を理解いただくことから始まる。自治体はもとより,コンサル企業との連携も重要になっている。
 
 

6. IoT・AI技術の取り組みも

モニタリングシステムが技術的に可能となっても,センサを橋梁に取り付ける上で,足場や電源など付帯コストが課題となり,受入れに向けたハードルは依然として高い。しかし,近年はIoT技術によって無線通信が容易となり,センサを動作するための自立電源化,エナジーセービングも容易になってきた。たとえば,センサデータの中には1日1回送信すればよいものが沢山ある,通信を間欠的に行えば電源容量は少なくなる。無線もLPWA(Low Power Wide Area)を使えば数km の伝送が可能となる。
 
AI(人工知能)による打音検査や,床版の劣化診断なども実用段階に入ってきた。
 
今後はユーザ,メーカの情報交流を活発化し,新技術の積極的な利活用が重要と考える。当協会も「SENSPIRE=Sensor X Inspire」という, 複数のセンサ信号を高度情報化するシステムの設計コンセプトを提案しており,皆様のご支援,ご指導をお願いする次第である。
 
参考URL:http://www.jisedaisensor.org
 
【参考資料】
1. 国土交通省:「平成28年度道路メンテナンス年報」,平成29年8月
2. モニタリングシステム技術研究組合:「平成29年度RAIMS活動報告会」,平成29年7月8日
3. 次世代センサ協議会:「自治体橋梁のリスク実態調査報告書」,平成28年6月
 
 

一般社団法人次世代センサ協議会 理事              
(社会インフラ・モニタリングシステム研究会 事務局長)
高田 敬輔

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年1月号



 

 

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