建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 熊本市におけるマンホールトイレの 設置・運営補助等に関する支援協定

 

はじめに

昨今の日本では,地震,台風,豪雨などのさまざまな自然災害が頻発し,上下水道をはじめとする公共インフラについては防災・減災に対する取組みが重要課題の1つになっています。
 
熊本市(以下,「本市」という)では,熊本地震の際,市内全域約32万6千戸が断水,下水道管路や浄化センターも多数被害が発生するなど,震災は市民生活に極めて大きな影響をもたらしました。市民生活に欠くことができない上下水道は,平時は当然のことながら,災害時であってもサービスの提供が必要ですが,大規模災害時には,行政による災害対応や被災者支援,いわゆる「公助」には限界があるため,地域住民の方々の連携・協働による「共助」の役割が重要になります。
 
そこで熊本市上下水道局(以下,「上下水道局」という)では,「公助」と「共助」を強化するため,上下水道局と上下水道に精通する民間事業者等による新たな支援体制として「マンホールトイレ等の設置・運営補助等に関する支援協定」を締結しましたので,これについてご紹介いたします。
 
 
 

1. マンホールトイレの整備

上下水道局では,経営戦略に掲げる「災害時対応力の強化」の取組みとして,避難所となる小・中学校等にマンホールトイレの整備を進めており,市教育委員会等の関係部署との連携のもと,スケジュール調整を行いながら,年10校(1校あたり5基)の整備を行っています(表−1)。
 
本市における整備状況は,令和元年度末(2020年3月末)時点において,38校の整備が完了(図−1,表−2)しており,令和11(2029)年度には熊本市内の小・中学校120校と防災拠点(5つの区役所と上下水道局)6か所に整備が完了する予定です。
 

表−1 マンホールトイレの整備状況


 

表−2 マンホールトイレの整備計画と整備実績


 

図−1 マンホールトイレの整備済小・中学校(令和元年度末時点)




 

2. マンホールトイレの設置研修の活動状況

マンホールトイレの設置研修(以下,「設置研修」という)は,熊本地震後の平成28(2016)年12月26日,市職員向けのマンホールトイレ現場講習会を皮切りに活動を始めました。当初は要請も少なったので上下水道局職員だけで行っていましたが,徐々に研修要請が増えてきました。
 
そこで平成30(2018)年度から,公益財団法人熊本市上下水道サービス公社(以下,「サービス公社」という)と委託契約を結び,年間5校の設置研修を実施しています。上下水道局とサービス公社の2者で設置研修を行うことで,平成30(2018)年度,令和元(2019)年度には年間15回の活動ができました。
 
これまで小・中学校の校区防災訓練,避難所担当職員講習会,小学校等の運動会など計41回(令和元(2019)年度末時点),約5,300名の方々へマンホールトイレの現地説明を行う中で(写真−1,写真−2),設置場所や使用方法の周知を行い,有事の際には,抵抗なく当たり前のようにマンホールトイレを使用していただけるよう努めているところです。
 
マンホールトイレの開設作業は,原則として,避難所の運営主体である避難所運営委員会が行うこととなっています(図−2)。前述のように,平時より開設作業の研修を行っているものの,災害時には必ずしも訓練通り動けるとは限りません。
 
そこで,上下水道局は災害時に開設作業の開設の支援が必要であると考えました。
 
しかしながら,今後も配備数が増加する中で,マンホールトイレが整備された避難所に対して上下水道局職員のみで開設の支援していくことは現実的に難しい状況にあります。そのため,新たな支援体制の構築を目指すこととしました。
 

写真−1 校区防災訓練の実施状況

写真−2 避難所担当職員講習会の実施状況



図−2 避難所運営委員会の位置付け




 

3. マンホールトイレ等の設置・運営補助等に関する支援協定

令和2(2020)年10 月21 日,上下水道局と熊本市管工事協同組合(以下,「管工事組合」という),公益財団法人 日本下水道管路管理業協会(以下,「管路協」という)およびサービス公社の3事業者との間で,熊本市上下水道局災害時支援協定(以下,「災害時支援協定」という)の締結および調印式を執り行いました(写真−3)。
 
3事業者は,いずれも熊本地震の際にも応急給水活動あるいは上下水道の復旧活動にご尽力いただいた実績があるため,災害時の開設作業の支援をお願いしたものです。
 
なお,サービス公社と管路協の2者に対し,マンホールトイレの設置・運営補助に関する支援は,熊本地震時のように全市域に及ぶ場合も考えられるため,最大で5 班10 名ずつ支援していただくこととしています。支援の流れは図−3の通りです。
 

写真−3 熊本市上下水道局と3事業者との記念写真



図−3 災害時支援体制のフロー図



【サービス公社】

①マンホールトイレを設置した小・中学校の避難所の巡回を実施し,設置状況の確認を行い,トイレが機能していない(組み立てが完了していない等)避難所を上下水道局に報告する。
 
②避難所巡回を行い,状況を上下水道局に報告し,管路協と連携を取りながら設置・運営補助を行う。
 
③全避難所において,設置・運営が完了した後は,週2回程度,サービス公社が受け持つ避難所の利用状況確認を行う。
 
④避難所閉鎖の際は,マンホールトイレの片付け補助を行う(テント,便座の撤去および清掃補助)。

【管路協】

①上下水道局からの報告を受けて,マンホールトイレが機能していない避難所に対し設置・運営補助を行う。
 
②設置が完了した後,マンホールトイレ接続下流側の管路状況(幹線まで)を確認して結果を報告する。
 
③全避難所において,設置・運営が完了した後は,週2回程度,管路協が受け持つ避難所の利用状況確認を行う。
 
④避難所閉鎖の際は,マンホールトイレと下水道管路の洗浄および消毒を行う。
 
 
また,災害時支援体制のフェーズ毎の対応を図−4に示します。
 
本市としては,災害時支援協定の内容を多くの方々に知っていただき,全国各地で同様な取組みが広がることを期待しています。
 

図−4 災害時支援体制のフェーズ毎の対応




 
 

おわりに

この災害時支援協定の目的は,避難所の運営主体である避難所運営委員会をフォローすることで,避難所の迅速な開設,かつライフラインの確保を実現することですが,副次的な効果として,3事業者の支援によって生まれた上下水道局職員の人的,かつ時間的な余裕を災害の復旧活動に充てることを期待しています。このように,災害時支援協定による支援は,避難所のみにとどまらず,災害からの早期復旧を支えるものでもあると考えています。
 
しかしながら,この災害時支援協定が十分に機能を果たすためには,3事業者はもちろん,避難所運営委員会をはじめとする関係団体との情報共有が欠かせません。今後も各団体との積極的な研修の実施や意見交換を重ねていくことで,より効果的な支援の在り方を模索していく必要があると考えております。
 
この災害時支援協定の締結は,本市にとって,新たな防災体制のスタートであると捉え,今後も災害に強いまちづくりを目指して取り組んでまいります。
 
 
 

熊本市 上下水道局 維持管理部 管路維持課 課長  藤本 仁

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年12月号



 

 

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