はじめに
一般的に,三次元点群測量を行うにあたり,陸上部ではUAV赤色レーザまたは地上レーザ,水中部ではマルチビーム測深により測量が行われています(図-1)。
このため,水面部を含む水際部の測量成果については,それぞれの三次元データを納めているのが現状です。
昨年度以降,UAVグリーンレーザ測量が徐々に行われるようになり,水際部と陸上部の三次元測量も可能になりましたが,深さのある水中部は,グリーンレーザでは計測できませんでした。
この度,UAVグリーンレーザ測量とマルチビーム測深を併用することにより,シームレスで高品質な三次元測量データを作成することが可能となりました。

図-1 三次元測量の種類
1. 取組み概要
当社では,2015年から地上型レーザスキャナを開始し,その後,UAVレーザ測量,ナローマルチビーム測深,船上レーザスキャナ,UAV搭載型のグリーンレーザ測量システム等,多くの3次元計測機機器の導入を図り,各測量手法の特徴を踏まえ,求められる精度や作業効率等を考慮したうえで適正な測量手法を選定し,3次元測量データの作成を行っています。
港湾内の土砂処分場の地盤高計測,河川浚渫の出来高管理およびダムの貯水量計算などにおいては,陸上部から水際部,さらに水中部の全域が一体となった高精度の測量成果が求められています。
例えば,土砂処分場内では,写真測量で発注されたりしますが,水部およびその付近では精度が著しく劣りました。
そのため従来の方法では水際部の計測が困難で,潜水域の未測範囲は人力による現地測量の補測が必要でした。(図-2)。
今回,マルチビーム測深とUAVグリーンレーザ測量を併用することで水際部の計測がより正確に出来るようになり,しかも工期を短縮することが可能になりました。

図-2 現状の課題
2. UAVグリーンレーザ測量
水際部を含む地上部の測量は,UAVグリーンレーザスキャナで測量しました。
写真測量は,水部や草地,単調な色調の泥部ではSfMによる解析は大きな精度低下が見られますが,グリーンレーザは陸部の測量はもちろんのこと,水深0~3m程度までの地面を正確に測深することが可能で,写真測量に比べて水際部のデータを詳細に取得できるのが特徴です。
参考までに,港湾内土砂処分場の地盤計測(40ha)での飛行仕様を示すと以下のとおりです。
●対地高度40~50m
●飛行速度3m/sec
●40haの計測時間:約3.5時間
3. マルチビーム測深
当社所有のマルチビーム計測機器(NORBIT社製のiWBMsh)は,受信部がカーブ形状でありスワス幅が210°まで取得できる(図-3)ことから,水面ぎりぎりまでデータの取得が可能です。
また,軽量でコンパクト(9.2kg)なため,小型船に艤装が可能です。
このため,測量艇は,水深0.7mまで入船可能な人力可搬できる全長3mの超小型艇にしました(図-4)。
UAVグリーンレーザ測量で未測となった部分を含む水中部をマルチビーム測深機により,測量します。参考までに,港湾内土砂処分場の地盤計測(12ha)での測深仕様は以下のとおりです。
●測量艇:2PS
●対ソナー底面までの喫水:0.35m
●入船可能水深:0.7m
●艤装および艤装テスト/2時間,測深/3時間

図-3 マルチビーム測量の可能範囲

図-4 測量艇の様子
4. 計測データの確認
UAVグリーンレーザ測量とマルチビーム測深の重なりを確認します。
UAVグリーンレーザ測量は,陸域全域と水深1.5mまで計測されましたが,水深1.5m以深が未測となっていました。
マルチビーム測深は,0m~0.5m以深のデータが取得されており,水深0.5~1.5m部分の2つの三次元データを重ねることにより,未測なくシームレスで高精度の三次元データが作成されていることが確認できます(図-5,6)。
さらに,作成したデータから横断図の作成や補修箇所など一部を切り出し拡大して詳細な状況の確認などが行えます(図-7)。

図-5 データの重なり(イメージ)

図-6 データの重なり状況

図-7 三次元データの活用例
5. 作業効率
従来測量との工数比較をしたものが,表-1です。この表は,港湾の土砂処分場(40ha)の工数比較です。
従来の測量方法と比べ,外業と内業を含めた全体工数は49%縮減(62人・日→32人・日)できました。
特に,外業が85%縮減(41人・日→6人・日)と大幅に改善されます。内業については,多くの工数が必要と思われている人も多いと思いますが,従来工法と比べ1.4倍(5人・日)しか増えません。
UAVグリーンレーザ測量とマルチビーム測深を併用した測量は,作業日数が約1/2になり,効率良くかつ高精度の成果が得られます。

表-1 土砂処分場(40ha)に係る工数比較(自社積算)
6. 本技術の活用
UAVグリーンレーザ測量とマルチビーム測深を併用することにより,残土処理場や埋立地の残容量,ダムの貯水量を正確かつ効率的に把握することが可能となります。
さらに,港湾構造物におけるCIM業務において,詳細な施工計画や,基礎捨石や床掘土量等の正確な数量計算を実施出来るため,施工時の検討事項や工事数量の変更等が軽減できます(図-8)。

図-8 標高30mから水深8mの三次元データ
おわりに
当社では業務実施時に,発注者や関係各所の技術者を現地に迎え,UAVグリーンレーザ測量の実演,計測データおよび合成後の三次元データを用いた現場研修会を多数開催しています。
これらの取組みが認められ「i-Construction推進コンソーシアム会員の取組み部門」で「令和2年度i-Construction大賞優秀賞」を頂きました。これからも一歩先のICTを目指していきたいと考えます。
【出典】
積算資料公表価格版2021年6月号

最終更新日:2023-07-07
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