- 2024-09-10
- 積算資料
最初の開通から50年以上が経過し、進行する構造物の高齢化や過酷な使用等により、構造物に多数の損傷が発生し、その中には重大な損傷も発見されている状況にある。
このような状況下において、より効果的・効率的に維持管理するため、道路構造物を造り替える大規模更新と、集中的に損傷を補修する大規模修繕の検討が進められ、2014年度より大規模更新・大規模修繕事業を開始しているところである。
本稿では、5カ所の大規模更新事業(図-1)のうち、高速大師橋更新事業と東品川桟橋・鮫洲埋立部、さらには竹橋・江戸橋JCT付近更新区間のうち、日本橋周辺のまちづくりと一体となって整備される日本橋区間地下化事業の概要と進捗状況について、昨年に引き続き報告する。
【図- 1 大規模更新実施箇所】
1. 高速大師橋更新事業
(1)事業概要等
本事業の事業概要および構造概要等については、本誌2020年12月号掲載の寄稿文をご参照いただきたい(注1)。
(2)施工概要
本事業では、仮設のう回路を設けず、橋梁全体の一括架け替えを実施する計画としている(図-2)。
Step1として、既設橋の上・下流側に新設橋脚を施工する。
同時に、橋梁を横取りするための仮受けベント設備を設置する。
Step2では、既設橋の下流側の仮受けベント設備上に新設橋を組み立てる。
新設橋の組み立てに際しては、P4─P5間を1,300t、P5─P6間を1,900tの大ブロックに分け、6,000t積級台船を用いた台船リフトアップ架設を行う。
P6─P7間については、台船リフトアップ架設終了後にトラベラークレーン架設により新設橋の組み立てを行う(図-3)。
Step3およびStep4では、約2週間の高速本線の通行止めを実施した上で、既設橋を上流側に横取りした後、下流側の新設橋(延長300m、総重量4,800t(橋面工、付属物含む))を横取りし、舗装等の橋面工を実施し供用する。
最後に、Step5で、既設橋および仮受けベント設備を解体・撤去する。
陸上部の橋脚(P7)は、橋梁の一括架け替えに先立ち、高速本線を供用した状態で更新するため、一時的に仮橋脚で既設橋の上部工を仮受けし、既設橋脚の撤去および新設橋脚の構築を実施する計画である(図-4)。
(3)工事進捗状況
2021年9月時点で、河川部では新設橋脚(P4〜P6)のRC柱の施工およびRC柱と横梁をつなぐ鋼製キャップの設置が完了した。
現在は新設橋の大ブロック運搬に向けて、河川内への仮受けベント設備の施工中である(写真-1)。
また、東京湾内に位置する仮組ヤードでは、新設橋の大ブロック組み立てを実施している。
陸上部(P7)では、新設橋脚の構築と既設桁の盛替えが完了し(図-2のStep3)、現在は仮橋脚を撤去中である。
陸上部の施工状況を写真-2に示す。
今後は、引き続き仮受けベント設備の施工および地組ヤードでの大ブロック組立を進め、大ブロック一括架設による河川内での新設橋組立を実施予定である。
2. 東品川桟橋・鮫洲埋立部更新事業
(1)事業概要等
当事業の概要、施工ステップ等の詳細については、本誌2018年12月号掲載の寄稿文をご参照いただきたい(注2)。
(2)施工概要および工事進捗状況
更新に際しては、交通を確保するため、う回路を設置し交通を切り替えながら、本線を半断面ずつ造り替える計画として、2016年2月より工事着手している。
2017年9月に上り線のう回路への切り替えが完了し、2020年6月に下り線の交通を将来上り線となる更新線へ暫定的に切り替えた。
現在、将来下り線となる更新線の工事を進めている。
2021年9月時点において、東品川区間では橋脚架設が完了した箇所から桁架設を順次進めている。
また鮫洲区間では、プレキャストU型ボックス設置のための基礎コンクリート工を実施している(写真-3、4)。
3. 竹橋・江戸橋JCT付近(日本橋区間地下化事業)
(1)事業概要
高速都心環状線の竹橋JCT〜江戸橋JCTは1964年の東京オリンピック前に建設され、1963年の開通から半世紀以上が経過している。
この区間は、1日当たり約10万台の自動車が走行する過酷な使用状況にあるため、コンクリート床版の亀甲状のひび割れや鋼桁の切欠き部の疲労き裂等の重大な損傷が多数発生していることから、構造物の更新が必要になっている。
このような状況を踏まえ、2014年に大規模更新(高架での造り替え)として事業化した。
その後、2016年には日本橋川沿いの3地区が国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加されたことにより、日本橋周辺のまちづくりの機運が高まり、2017年7月以降、国、東京都、中央区、首都高速道路株式会社で「首都高日本橋地下化検討会」が行われ、竹橋・江戸橋JCT付近更新区間約2.9kmのうち、神田橋JCTから江戸橋JCTまでの約1.8kmの区間を対象に、地下ルート案、事業スキーム、概算事業費について議論された。
その後、関係機関との協議・調整を進め2019年10月の都市計画決定を経て、2020年4月に都市計画事業認可を取得し、事業に着手した。
(2)事業進捗状況
地下化事業は、現在、本体施工に向けた準備工事である「地下埋設物移設」と「出入口撤去工事」から着手し、工事を進めているところである。
その後、2035年度の地下ルート開通、2040年度の完成(高架橋撤去)を目標に進める予定である(図-6)。
出入口撤去工事は、地下ルートを整備するに当たり、今後日本橋川内で工事が必要となることから、日本橋川の流れを現状より悪化させないようにするため、呉服橋出入口と江戸橋出入口を先行して撤去するものである。
出入口部を撤去し、日本橋川内の橋脚本数を減らすことで、日本橋川の水位を下げて、治水上の影響を低減し、今後の河川内の工事を可能とする(図-7)。
本工事で撤去するのは、呉服橋と江戸橋の入路、出路とその本線分合流部に当たる橋梁の床版と桁、およびそれらを支える橋脚であり、今回の工事で全7本の橋脚を撤去する。
また、橋脚の撤去に伴い必要となる既設構造物の補強も実施する。
この出入口を撤去するに当たり、2021年4月に呉服橋・江戸橋出入口撤去工事に着手し、同年5月10日(月)午前0時に高速都心環状線の呉服橋出入口、江戸橋出入口を廃止した(写真-5)。
今後は約3年間の出入口撤去工事の完了後、地下トンネル工事等の本体工事に着手する予定である(図-8)。
なお、大規模更新事業の工事現場状況等の紹介動画を定期的に配信しているので、そちらもご参照いただきたい(「首都高リニューアル動画」でWeb検索)(注3)。
また、今回報告した事業以外に、池尻・三軒茶屋出入口付近については地下躯体補強工事に着手しており、銀座・京橋出入口付近は現在、都市の再整備事業と連携して更新検討・調整を実施している。
引き続き、お客様および沿道の方々へのご理解、ご協力を得ながら事業を進めてまいります。
(注) 1. https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/52184
2. https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/52131
3. https://www.youtube.com/playlist?list=PLUtNIHSs5G9cALoSuVKE3yNIccr_wCYJu
【出典】
積算資料2021年12月号
最終更新日:2024-09-10
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